JB中華飯店焼失
スペランカ洞窟崩壊の次の日の夕方。俺っち達はJB中華飯店に集まっている。
なぜ、夕方頃になったのかというと
「今日のレースは熱い!」
と言って午前中から集まることをかたくなに拒否した
シスター様待ちだったからである。
どうしても貸して欲しい、貸さないと絶対に行かないと
超ゴネだったためしぶしぶ金貨3枚だけ貸してやったが。
ニコニコ顔のシスター様。どうやらプラス収支だったらしいな。
何気ない態度、様子でバレるのだよ。
あとでスーザンに貸したお金を回収することにしよう。
「ベイクドチーズケーキがあるなら行ってもよいぞえ」
彩姫のためにホテルから大量に買い込んだベイクドチーズケーキ40個。
すでに半分がなくなっている。食べ終わったら帰ると言いかねない、急がねば。
「りんごとハチミツとろ~り入ってたほうが美味しいと思うだべ」
クワーマンはというとJBが好意で作ってくれたチャーハンを食べている。
入れない方が絶対美味しいに決まってるだろ、このバカ舌が!
「さて、今日集まってもらったのは他でもないっす。
バンドのメンバーの顔合わせっす。右回りで自己紹介をお願いするっす」
「ヴォーカルのスーザン、20(はたち)でーっす。職業はシスターでーっす」
JBは少し首をかかげながら
「あなたはどこかで会ったことがあるような・・・」
「初対面ですぅ~」
「少し印象が違う・・・私の勘違いでしょうか」
「神のお導き的にも勘違いですぅ~」
「いや、でもあの時のシスターに似て・・・」
「勘違いですぅ~」
「琴の彩姫じゃ。魔族じゃ」
シンプルでよろしい!毒殺癖があることをあとでJBに教えておこう。
「トランペットのクワーマン・ヒマワリだべ。
「好きな麺類はりんごとハチミツとろ~り入ったうどんだべ」
JBは少し首をかかげながら
「あれ?その台詞どこかで聞いたことがあるような」
「あの時はあとからうどんをラーメンにしておけばよかっ・・・」
クワーマンのあごにスーザンのコークスクリューブローが綺麗に決まる。
白目を剥いてその場にガクンと落ちるクワーマンの脇に腕を差し込み支える彩姫。
クワーマンの両膝の裏を持つスーザン。
レスキュー隊員の動きでクワーマンを移動させ待ち客用のソファーの上に寝かせる。
「クワーマンのあごに殺人蜂がいたの。危なかったわ」
「ハチミツばかり食べてるから蜂が寄ってくるのじゃ。気をつけよ」
クワーマンを見下ろしている二人は仕事が終わった暗殺者みたいだ。
ザンスーあややのリコリス級のコンビネーション。
問題が発生した瞬間に思考回路がリンクしているのではないか?
「ドラムのJBです。ドラムといってもドラムが何か知りません。
今の私は、中華のことしかわかりません」
うん、知ってる。
でも転移魔法も使える元凄腕S級冒険者だったことは皆知らないと思う。
「ギターのレニー・グラディウスっす」
アッキー、今、俺、異世界でバンド活動再開するぜ。
「とりあえず、リーダーは俺っちがさせてもらうけどいいかな?」
ス「いいわよ」彩「よきにはからえ」ク「・・・」J「構いませんよ」
「早速、音合わせしたいところだがドラムが完成してないんだよね~。
まあ、今夜は顔合わせ程度にして、皆で飲み会でもしながら親睦を深めようぜ、
スーザンのおごりで!」
「何であたしがおごんなきゃいけないのよ!リーダーのレニーがおごんなさいよ!」
「断る!スーザン、お前、今日勝っただろ」
「勝った?何のことかしら?」
視線をそらすスーザン。
「お前がサイボーグ競馬のレースに行きーてーっつってゴネたから
顔合わせが夕方からになったんだろうが!」
「はあ?それとこれとで何でわたしがおごる話になんのよ」
「わかったわかった。わかったからさっさと俺っちの金を出せ」
「俺っちの金?何わけわかんないこと言ってるのよ!
今日勝ったお金は私のもんなん・・・はっ」
墓穴を掘りやがった~。
「スーザン、お前、今朝貸した金貨3枚、今ここで返せよな」
「あれはレニーからのシスターに対する私への敬意の寄付よ」
よだれを垂らしたまま動かないクワーマン。ピクっと右手の人差し指が動く。
「言っとくけどな。金貨3枚じゃ本当は足りねーからな!
ホテルの宿泊代とか食事代とかは俺の優しさでとってねーだけだから」
カタカタカタ。テーブルの上においてある調味料入れが少し揺れる。
室内の空気が少し動くがヒートアップしている俺っちは気がつかない。
「私のお金は私のもの、レニーのお金は私のものよ!」
出たぁー!ジャ○アニズム出たぁー!
スーザンの顔が少々ジャイ○ンに見えたが堂々の踏み倒し宣言。
まさかこの異世界で、この発言をするやつがいるとは、しかもシスターで。
10秒間ほどの沈黙が流れる。俺っちは今、ザ・ワールドの攻撃を受けていたのか?
「そんな理屈が通ると思っているのか!世の中ではそれを犯罪というんだぞ!」
「お金使っちゃったもーん。だから無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!」
こんなところにDIOの血統を受け継ぐものがいたとは、このスーザン神父め!
って、神父は血統は受け継いでないか。
「二人共仲がいいんですね」
レ「仲はよくねえ!」ス「仲はよくないわよ!」
「こんなときは中華料理です。幻のチャーハンをおごりますから。
食べた後、もう一度話し合いましょう」
そう言いながらJBはニコニコしながら厨房へ歩いていく。
寝ているクワーマンの右手と左手の指がピクピクっ、ピクピクっと動く。
カタカタカタ。テーブルの上の調味料入れ、箸置きがクワーマンがいる
客の待合室の方へ少しずつ動いている。
ピクピクっピクピクっピクピクっと体を痙攣されるクワーマン。
「はっ・・・はっ・・・」
空気の流れが大きくなり、テーブルの上から調味料入れと端置きが床に落ちていく。
ガシャン、ガシャンとどんどんテーブルの上から落ちていく。やっと気がつく俺っち。
床に落ちた調味料入れがクワーマンの方へ転がっているのが見える。
「はっ・・・はっ・・・」
「やばい!誰かクワーマンのくしゃみを止めろ!」
サラ鍋点火。そして
「ハックション」
待合室の壁が吹っ飛ぶ。その衝撃でクワーマンは店内に吹っ飛ばされる。
クワーマンは起き上がりながら中腰で
「ハックション」
厨房の反対側の壁が吹っ飛ぶ。衝撃でクワーマンは厨房へ吹っ飛ばされる。
JBの足元に転がりこんだクワーマンは仰向けで
「ハックション」
ここまで時間にして3秒から5秒だったと思う。
※あ~あ~ああああ~あ,北の国からのBGM
父さん、サラマンダー級の炎を出す鍋にドラゴン級のくしゃみが重なったら
それはもうドラゴン級の炎になるわけで
ドッゴーン!50メートルくらいの真っ直ぐな火柱が天空目掛け発射される。
3発の連続のくしゃみが引き起こした爆発でJB中華飯店は焼失する。
2階部分はドラゴン級の炎で完全焼失。1階にかろうじて残った2つの壁が
かつてここがJB中華飯店だったことを物語っていた。
目を擦りながら起きるクワーマン。
「オラどうしたんだべ。なんでこんなところにいるんだべ。記憶がないんだべ」
どえらいことをしてくれたな、この無自覚テロリスト。
サラ鍋を持ったまま固まってしまった廃人状態のJB。
父さん、僕達はJBのお店を営業停止にした上に、お店を破壊したわけで。
たらりらりらーん、りらりららーん。
焼け残ったトイレと書かれたドアを開ける88.
「あれ?ここはJB中華飯店のはずだけど、私としたことが転移を間違ったかな?」
88は俺っち達の姿を確認すると
「皆、揃っているね。じゃあ、早速行くことにしようか」
足元に魔方陣が展開される。88は俺っち達全員とその辺に飛んでいた蛾も
まとめて転移魔法で転移させた。




