モモ対三蔵
辺りはすっかり日が落ちていた。
「あーあ、レッドちゃん見つからなかったな~」
「もうこの辺にはいないんじゃないキー?」
「一旦、依頼主の元へ戻ってレッドちゃんの情報を再確認するか」
「臭いが判別できるものがあると我輩の鼻で広範囲に探せるワン」
「そうだな、そうすっかぁっていうか、いい加減降りろよサゴチッチ」
「えーっ、水辺までもう少しなんだからこのままおんぶしてくれカッパ」
「やなこった、超緊急事態はすでに去った!降りろ、このごく潰し!」
「モモのすけ~、例え愛情がこもっていたとしても相手が傷つくこともあるカッパよ」
森の中を歩いていると霧が発生し始める。そして、霧の中から村が出現する。
「こんな場所に村が・・・」
「みんな、おふくろさんは元気か?」
なぜ?おふくろさんのことを。
これは戦闘準備をしろというモモのすけ達の隠語である。
「元気キー」「元気だワン」「元気カッパ」
モンモンは頭頂部を右手でゴシゴシかきながら数本の毛をむしりとった。
そして口元へもっていき、ふう~っと息を吹きかけ毛を解き放つ。
ワンセブンは鼻をクンクンしながら
「いい臭いがする。レストランがあるようだワン。案内するワン」
「おいらはこの先にある川で水浴びしてくるカッパ」
そう言うとサゴチッチは自らモモのすけの背中から飛び降りた。
「よ~し、じゃあレストランで腹ごしらえするか!サゴチッチもあとで合流な~」
明るい店内。美味しそうに料理を食べている数人の客。
厨房と思わしきところで包丁で食材を叩き切っている料理人。
モモのすけ、モンモン、ワンセブンは4人掛けのテーブル席に座る。
10才くらいの女の子がやってきて
「ご注文は?」
「海鮮料理はあるかい?あとでもう一人来るんだが、そいつが海鮮料理が好きでね」
「ごめんなさい、ここは山奥だから海鮮料理はありません」
「じゃあ、お勧めを4人前頼むわ」
「かしこまりました」
店の奥に入っていく子供を見ながら
「あの子は可愛いな~。将来きっと色白の美人になるぜ」
「あの子は大丈夫。臭いから(生きてる)ワン」
モンモンの耳がピクっと動く。
「伸びろ、如意棒」
天高くすごい勢いで伸びていく如意棒。
数秒後にゴツンと何かが如意棒に当たる手応え。
「クワっ!」
3秒後にドスンっという音がしてモモのすけ達のテーブルの横に
キジキジが落ちていた。足には何か粉の入った袋を持っている。
「何でわかったキジ!」
急いで逃げていくキジキジ。
しばらくすると壊されたり焼け落ちた家が散乱する村の景色が出現する。
店内の客は、ああああという声を発しながらゆっくりと立ち上がり
モモのすけ達の方へ歩き出す。ゾンビだ。
ゾンビの中にハッカイカイが首を跳ねた男性がいるが歩いている途中で
頭がボトっと落ちてしまう。
店の奥にいた料理人だった男は手斧を構えた豚人のハッカイカイであった。
ウエイトレスの女の子が駆け寄ってくる。
「助けてください!」
「俺の後ろに隠れてな」
モモのすけ達の周りにはぞくぞくとゾンビが集まってくる。
現時点で20~30体のゾンビが歩いている。
「俺様の幻術に引っ掛からないとはな・・・何時から気づいていやがった」
「長年の勘ってやつかな?」
「ぬかせ」
三三蔵蔵が一歩前に出ると何かを踏んだ感触が足裏に。
足を上げてみると、白い蛙がペシャンコになっているが何かおかしい。
「紙の蛙?」
辺りを見渡すと白い蛙が数匹ぴょこぴょこと跳ねている。
「いつの間に・・・」
「洞窟に入る前に帰り道に結構な数の蛙ちゃんを放っておいたのさ。
用心にこしたことはねーからな」
「なるほど。違和感に気付くやつも時々いるが大概はゾンビの中に混じった
(生きている子供)に気をとられて隙をつけるんだが」
「手の込んだことで」
モモのすけの背後にかばった女の子の影からす~っとゴクウクウが出現する。
手にはナイフ。モモのすけ目掛けてチェストおおおお!
直前でナイフは如意棒でたたき落とされる。
「キキキっ!」
ゴクウクウはバク転しながらハッカイカイの元へ。
「あっぶねー、サンキュ、モンモン」
「ば、馬鹿な・・・如意棒だとキー!」
●
猿林寺と書かれた少林寺っぽいお寺。
厳しい修行に耐える猿たち。朝日が眩しいとある場所。
「老子、お呼びでしょうキー」
「クウよ、よくぞ厳しい修行に耐えキー。ゴクウの名を冠すること許そうキー。
今日からクウ改めゴクウクウと名乗るがよキー」
「はっ!ありがたき幸せキー」
「ゴクウクウ、お主は私の弟子の中でもずば抜けた才を持っておるキーが
世の中は広いキー。あやつを除けばお主がナンバーワンだったキー」
「あやつ・・・とはキー」
●
「ワンセブン、この子かキー」
「違うワン、そうだ、その男の子は大丈夫だワン。それからあと左側にいる・・・
そう、その男の子もワン」
モンモンが放った猿達が男の子二人を連れて戻ってきた。
「ナイスコンビネーション!」
モモのすけがサムアップする。子供達を見ながらモモのすけは優しい顔で言う。
「安心しな!俺たちが助けてやんからよ」
何かを思い出している表情のゴクウクウ。
「あの分身体を作る術はキー・・・」
和尚のところにキジキジが慌ててやってくる。
「和尚、ガキどもが逃げた・・・あっ!あんなところにガキがいやがるキジ」
和尚と呼ばれるヒューマンを見るモモのすけ。
次はゴクウクウと呼ばれる猿獣人。次はハッカイカイと呼ばれる豚獣人。
そして最後にキジキジと呼ばれる鳥獣人。キジキジだけ見る時間が長い。
「何だキジ!俺に何か用かキジ!」
「いや、別に・・・」
モモのすけは違和感を感じていた。サゴチッチとキジキジを入れ替えると
何かしっくりくるような。
「ん?お前達、確かギルドの手配書にあった西遊記か、
ということはお前が三三七拍子!」
「三三蔵蔵だ!」
老子との回想シーンのゴクウクウ。
「この国よりさらに東の島国からやってきた猿人キー。名を・・・」
ゴクウクウが言う。
「猿飛モンモン」
「あっ?何でお前、俺の本名知ってるキー?」
「猿飛?モンモンお前そんな名前だったの?」
「初めて会ったときに教えたキー。でも、モモのすけがモンモンしか覚えないキー
俺の本名を知っているお前は・・・もしかして・・・俺のファンキー?」
「違キー!猿林寺出身キー。俺の名はゴクウクウ」
「ゴクウの名を許されたと言うことは、お前も持ってるキー」
如意棒を体の前でクルクル回しピタッととめて決めポーズのゴクウクウ。
「ああ、俺も持ってるキー。免許皆伝の証、如意棒キー」
「ああ、なんかキーキーうるさいな~キーっと」
「猿林寺の誇りを掛け、ゴウウモンモン、ここで勝負キー!」
「ゴウウモンモン?モンモン、お前何個名前あんの?」
「それも何回か説明したけど、モモのすけがモンモンしか覚えないキー」
「俺は色白で可愛い女の子の名前しか覚えない。
最近覚えた名前は風神子ちゃんと雷神子ちゃん、です!」
ですのところは首を横に向けリゼロちっくに協調するモモのすけ~です!。
「モモのすけ・・・お前ってやつはキー」
「最低だワン・・・」
「同門対決はあっちでやってこいキー。あー俺も口調がうつっちまったキー」
モンモンは右半身のT字になり如意棒を右手に持ち地面に突き刺し、
左手をゴクウクウに向けクイックイッとやりながら
「こっちへ来いキー。もんでやるキー」
こめかみをピクピクさせるゴクウクウ。
「なめるなキー!」
離れていく猿獣人二人。
「ワンセブン、子供達を守ってやれ」
「任せろワン」
ドドドドドド!モモのすけの背後からハッカイカイが左肩を前に出し猛突進してきた。
「死ねブヒ」
モモのすけはくるりと反転しハッカイカイを迎え打つ・・・かに見えたが
しゃがみ込ながらハッカイカイの足元に滑り込んだ。
「消えたブヒ・・・」
急に視界から消え足元で土下座に近い格好をしているモモのすけに
つんのめるハッカイカイ。
勢いあまってハッカイカイは転がりながら20メートルほど吹っ飛ばされる。
「おー、あんなに飛ぶとは怪力だね~」
「痛たたたブヒ。何をしたブヒ」
「合気道っていうんだけど、知らない?」
ばかな・・・ハッカイカイの突進は
バッファローGOGOの突進と同じ力があるんだぞ。
ざっくり・ハーンが旧正月の獅子舞をしながら説明しよう。
バッファローGOGOの突進は
ビルの2階から車を落としたのと同じ衝撃である、ざっくり、ハっ!
あのやろう受け止めやがった・・・いや、受け流したというところか。
パワータイプのハッカイカイとは相性が悪そうだな。
「ハッカイカイ!あの弱そうな犬を殺れ」
モモのすけは両手の平を上にしてやれやれのポーズを取り顔を左右に振りながら
「弱そうねぇ・・・あの豚、死ぬぞ」
「わかったブヒ」
ワンセブン目掛けて突進していくハッカイカイ。怯える子供たち。
子供達に向かって微笑むワンセブン。
「少し離れているワン」
ワンセブンは自身についてある2つの首輪を外し両手首にはめ直した。
首輪は縮み両手首にフィットする。
「金剛力!」
ワンセブンの体が筋肉隆々になっていく。
「死ねブヒ!」
左肩を前にしてワンセブンに突進するハッカイカイ。
「どすこーい!」
突進を受け止めるワンゼブン。1メートルほど後ろに後退したあと
相撲のようにうっちゃりを決め投げ飛ばす。
「受け止めやがったのか!あれを」
「ブヒブヒブヒーっ!殺すブヒ殺すブヒブヒブヒブヒ!」」
頭に血がのぼったハッカイカイは手斧を振りかぶってワンセブンに襲い掛かる。
ワンセブンは頭の上で腕をクロスし、手斧を受け止める。
ガキーン!ブレスレットと手斧がぶつかる音。
衝撃でワンセブンの体が1センチをど地面にめり込む。
バキっと手斧の柄が折れ刃は衝撃でクルクルと高速回転しながら上空へ跳ね上がる。
「金剛力アンチョップ!」
手刀でハッカイカイの首を挟みこむようにチョップすると
ハッカイカイの首から上が吹っ飛んだ。
上空へ跳ね上がった手斧の刃が近くの木に刺さると同時に
血しぶきを上げるハッカイカイの胴体。ハッカイカイの頭部を持ちながら
「誰が弱そうな犬だってワン?」
「ハッカイカイ!」
ばかな・・・やつら想定外の強さだ。ここは一旦退却するか。
「キジキジ!俺を掴んで逃げろ!」
返事が無い。
「おいキジキジ、聞いてんのか、キジキ・・・」
三三蔵蔵が振り向きキジキジを見た瞬間、頭から真っ二つに裂けていくキジキジ。
裂け目から三三蔵蔵の驚きの表情が見える。
何があった。どうしてキジキジが真っ二つに・・・。
マズイ、マズイぞ。戦闘開始から10分も経ってねぇってのに二人もやられた。
ゴクウクウとゾンビをおとりにして俺だけでも逃げるか・・・。
「うわーん!和尚ぉ、モンモンがいじめるキー」
顔のあちこちにあざとコブを作ったゴクウクウが泣きじゃくりながら戻ってきた。
「あいつ弱いキー」
やれやれって感じで左手で肩を揉みながら帰ってくるモンモン。
「馬鹿な!ゴクウクウが子供扱いだと。こいつはたった一人で冒険者パーティー
紅蓮の華は危険な香りトキメキキッスでおもてなし団を壊滅させた男だぞ」
「何だよその舌を噛みそうな長い名前のパーティは。
よくわかんねーけど俺達の方が強かっただけだろ。
顔色が悪いぜ。どうするよ三三七拍子」
「なめるな!こっちにはゾンビ軍団がいるんだぜ」
「お前、忘れてねーか、俺達にはもう一人いるのを」
バシュ!という音が鳴り、川から5つのウォーターカッターが放たれる。
一瞬にしてウォーターカッターは5体のゾンビを縦に切り裂く。
ザバア~。川の中から筋肉隆々状態で悪魔のように怖くなっている
サゴチッチが現れる。
「お前達の最大の失敗は 川がある ここで俺達を襲ったことだ」
そうか、キジキジはこいつにやられたのか。
「お前は誰だ!いつからここにいやがった!」
「あれ?最初からいただろ?可愛い小動物みたいな緑色のやつが」
いた!確かにいた!あいつがあれになったってのか!
「水辺の俺様は無敵だ」
説明しよう!
水辺のサゴチッチはなぜ無敵なのか?
サゴチッチは水辺の自然エネルギーを取り込むことで最強の戦士へ変身するのである。
単に水を持ち運んでも、そこには自然エネルギーが無いため変身できないのである。
三三蔵蔵は近くを歩いていた女の子ゾンビを人質にする。
こいつはゾンビにしてからまだ数時間しか経ってねえ。
見た目はまだ生きてるようにしか見えねえ。
「こいつはまだ生きてる。この子を助けたくねーのか!」
「その子はもう死んでるだろ。ひでぇことしやがる。
その子もきっと色白の可愛い子に育っただろうに」
「クソっ!何でばれた」
女の子ゾンビを投げ捨てる三三蔵蔵。
「あの子は臭いからして数時間前にゾンビにされたばかりだワン」
「そういうこと。さっさと降参しろよ。弱いものイジメは嫌いなんだ」
泣いているゴクウクウは使い物にならん・・・。
「この手だけは使いたくはなかったが仕方ない」
●
ボコボコの顔にされロープでぐるぐる巻きに縛られている三三蔵蔵とゴクウクウ。
キジキジとハッカイカイの首は袋に入れられ冷凍魔法を掛けられ凍らされている。
「な~にがこの手だけは使いたくなかったが仕方ない、だ。
ただ逃げ出しただけじゃねーか」
「頼む、見逃してくれ!俺達のお宝を全部お前達にやるから!」
モモのすけは小指で鼻をホジホジし、出てきた鼻クソを丸めながら
「お前、何人殺してきた」
しゃがみこみ丸めた鼻くそを三三蔵蔵の額にくっつけた。
「俺はよ~子供を殺すやつが一番嫌いなんだよ~」
立ち上がり5メートルくらい離れた場所まで歩くモモのすけ。
振り向き指先を三三蔵蔵たちに向けすごい形相で
「てめぇたちの血は何色だ!」
しずまりかえる森。
「いや~一度言ってみたかったんだよ~、この台詞。
ちなみにサゴチッチの血の色は?」
「紫だ」
「紫って・・・俺はピンクだよ。モモゆえに、なーんてな!」
「こいつらどうやって連れて帰るワン」
「俺のウォーターカッターで首を跳ねて頭だけ持ち帰ればいい」
「サゴチッチ~お前その姿になると考えも怖くなるよな~」
男の子が先ほど三三蔵蔵が人質にした女の子の死体の前に立ち泣いている。
後ろからそっと近づくモモのすけ。
「お前の妹か?」
うなづく男の子。
「どうしたい?あいつらを殺したいか?」
うなづく男の子。三三蔵蔵の前に男の子を連れていくモモのすけ。
「好きにしな」
「おじちゃんが殺してくれるんじゃないの?」
「ボウズ、人を殺したことは?」
「あるわけないじゃん・・・僕、子供だよ」
「そいつを殺したいほど憎んでいるんじゃないのか?」
「そりゃ~そうだけど・・・」
男の子の足元に鞘のついた脇差を投げ置くモモのすけ。
「貸してやる、好きにしな」
脇差を拾い上げ、じっと見つめる男の子。
「ボウヤ、おじちゃん達が悪かった。命だけは助けてくれ、なっ、なっ、頼む」
男の子の脳裏にあの光景が蘇る。ハッカイカイに首を飛ばされた父親。
ハッカイカイになぶられている母親。
檻の中で死にそうになっている妹を助けてやれなかった悔しさ。
ブルブルと震える手。鞘から脇差を抜き取り振り上げる。
「うわああああああああっ!」
三三蔵蔵に向け思いっきり脇差を振り降ろす男の子。
三三蔵蔵に当たる少し手前で脇差はモモのすけが出した刀の鞘で止められた。
「そこまでだ」
「助かった・・・」
安堵の表情を浮かべる三三蔵蔵。
ガチガチに固まっている男の子からモモのすけは優しく脇差を取り外すと
「お前の思い、このモモのすけが受け取った。お前が手を汚すこともねえ」
そういうと脇差を三三蔵蔵目掛けて一閃する。
三三蔵蔵の目の前の景色が横にズレる。ボタっという音とともに地面に顔が落ちる。
三三蔵蔵が最後に見た光景は首ちょんぱされた自分の体だった。
「誰が助かった~だ、甘いんだよ考えが」
男の子はモモのすけを見上げ右手で涙をふき取りながら
「ありがとうございます!」
「おっ、いい面構えになったじゃねえか。名前は?」
「マイケルです」
「よし、マイケル。妹の墓を一緒に作ってやろうぜ」
ちょっと離れた場所でモモのすけと男の子、三三蔵蔵のやりとりを
モンモンは見ていた。
「あれがモモのすけという男キー」
モンモンの足元で縛られて身動きが取れないゴクウクウが懇願する。
「俺は和尚に騙されてただけだキー。悪いのは和尚だキー」
「お前、それ絶対に助からないやつがいう台詞キー」
「同門のよしみキー。頼むキー」
「仕方ないキー。俺は優しい猿キー。あの猿に聞いてみるキー」
「あの猿キー?」
モンモンはゴクウクウの前に立ち
臨兵闘者 皆陣列在前と印を結ぶ。
「降臨せよ、猿判官」
気がつくとゴクウクウは裁判所の中の証言台に立たされていた。
「ここはどこキー」
チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャン!
「静粛にキー!」
裁判官の格好をした玩具の猿が裁判官の机の上にちょこんと座っている。
「死刑キー」
ニカっと笑顔を作りクルッと一回点し
チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャン!
と玩具のタンバリンを鳴らす猿判官。
「意義アリキー!」
メガネをかけたスーツ姿の弁護士っぽい猿が逆○裁判のようなポーズで登場した。
「被告は和尚という男性に騙されて仕方なくやったと言ってるキー。
死刑は不当キー。減刑を要求するキー」
「死刑キー」
ニカっと笑顔を作りクルッと一回点し
チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャン!
と玩具のタンバリンを鳴らす猿判官。
「意義アリキー!」
弁護士猿は食い下がる。
「被告の足元をごらんくださいキー」
ゴクウクウの足元には一匹のバッタがいる。
「猿判官、お気づきにならなかったでしょうかキー」
手を後ろに組みながら証言台の前あたりに来る弁護士猿。
「被告はあのバッタを踏まずに野原に返してあげる優しい心の猿キー」
弁護士猿はゴクウクウの背後に回り耳元でささやく。
「さあ、バッタを両手で拾い上げ猿判官にアピールしなさいキー」
言われた通りに両手でバッタを拾い上げ猿判官に見せるゴクウクウ。
「じゃあ、バッタ、キー」
ニカっと笑顔を作りクルッと一回点し
チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャン!
と玩具のタンバリンを鳴らす猿判官。
「減刑ありがとうございます、猿判官キー」
弁護士猿はゴクウクウと握手をしながらこういうのであった。
「減刑おめでとうキー。私もがんばったかいがありましたキー。
バッタとしてのこれからの猿人生に幸あれキー」
「何だキー・・・バッタとしてのって・・・」
ゴクウクウの体がどんどん小さくなりバッタへと変身する。
「結審キー」
ニカっと笑顔を作りクルッと一回点し
チャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャンチャン!
と玩具のタンバリンを鳴らす猿判官。
元の世界へ戻ったとき、ゴクウクウの服の上に1匹のバッタと
ゴクウクウが縛られていたロープが残っていた。バッタを見たモンモンは
「おっ、死刑にはならなかったキー。
お前が心の底から本当に反省したとき元に戻れるキー」
ピョン、ピョンと2回跳ねたその時、草陰から出てきたトカゲがバッタを捕食した。
「あー、反省する暇もなかったキー」
パーティー名 西遊記 消滅。
●
「さてと・・・子供達をどうするかだが、とりあえずアニーのところへ連れて行くか。
モンモン、お前、全員乗せれるくらいの空飛ぶ雲みたいな便利アイテム持ってね?」
「持ってないキー。モモのすけが例の術を使えばいいキー」
「え~めんどくさい~、だっていっぱい気毘団子使うし~」
女子高生みたいな口調のモモのすけ。
「しゃーなし」
モモのすけは腰の袋から紙を取り出すと折鶴を折り始めた。
折鶴を地面に置き、腰の袋から団子を12個取り出し鶴の周りに配置した。
折鶴を中心に時計の時刻の位置に団子が置かれてある。
「気毘団子を供物とし顕現せよ!」
折鶴は2階建ての一軒屋ほど大きくなる。
「サゴチッチ~、あいつらの荷物投げ込んどいて~」
「カッパ使いが荒いやつだ」
「いいじゃんよ~、水をたっぷり吸ってる状態のサゴチッチは力つえ~んだから」
サゴチッチは西遊記の荷物を掴みゴミ収集車に投げ込むように
折鶴のドーム目掛けて勢いよく投げこんだ。
すうっ~と荷物はドームの中へ消えていく。
二人の男の子はワンゼブンが両肩に乗せている。
女の子の前に背中を向けてしゃがむモモのすけ。
「ちょっと高さがあるからおんぶしてやるよ」
「お前の背中は色白でピチピチの可愛い女の子のためのものじゃなかったのかキー」
「ばかやろう!この子は将来きっと俺好みの色白でピチピチの可愛い女の子
に成長するんだよ。将来への先行投資だ、投資」
折鶴の中へ入っていくモモのすけたち。
「全員乗ったな。よっしゃ~帰るとするか」
すぅ~っと地面から浮き上がる折鶴。女の子が
「おじちゃん、お腹すいた~」
「何か食べるものあったかな~、こいつら何か食べるもの持ってないかな?」
ゴソゴソと三三蔵蔵たちの袋の中を漁るモモのすけ。
「おっ、肉があんじゃん!」
「モモのすけ、その肉いくらで売れるか知ってるかキー」
「知らん!」
「末端価格でキロ純金貨500枚(約5千万円)キー」
肉を見ながら数秒考えているモモのすけ。
「焼肉にするか、すき焼きにするか、それが問題だ」
「そいつは3キロはある、ってことは純金貨1500枚(1億5千万円)キー」
「別に俺たちゃ金に困ってるわけじゃねーし、いいじゃん」
金で動かない凄腕の4人組の冒険者パーティがいると噂に聞いたことがある。
「売ったお金を全額アニーに渡せばこの子達や施設の子供達の糧になるから
文句を言われないワン」
「その通りキー」
「おっ、川が見える。サゴッチッチ、お前ここから川に飛び込んで魚とってこいよ」
水分がなくなって可愛くなったサゴチッチが怒って言う。
「何メートルあると思ってるカッパ」
「ったく、使えねーやつぅ~」
パーティ名はピーチグローリフォー(桃色栄光4)、通称ピチ4。
「しゃーなし、どこか広いところ探して一旦着陸すっか」
ある程度の高さまで上昇した折鶴はゆっくりと前方へ飛行していく。
●
スペランカ洞窟崩落3日後。
ポトっ、とスターライトランスを落としながら
壊れたスペランカ洞窟の前にいるドグマ。
「洞窟が無くなってるぜ・・・、ベイベェー」




