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電流魔法カイロ開眼

青い空。眼下には白い雲。

「さ・・・寒いんですけど」

「何か言いましたかレニー」

ここは上空何メートルのところだろうか。

多分、飛行機が飛ぶ高さに近い。

※飛行機が飛ぶ高さは高度一万メートル、気温はマイナス50度くらい。

ヤバイ・・・寒さで凍え死ぬ。何とかしなければ。JBは大丈夫だろうか。

体全体を包んでいるピンク色のオーラみたいなものが見える。

寒さに耐える魔法だろうか?俺っちにもかけて欲しい。

「JB!おーい!JーBー!」

「うるさいですわよレニー」

「寒いんですって!」

「私は寒くないから大丈夫ですわ」

寒さで意識が薄れそうになる。

ここは転生前の日本。暖かくモフモフのベッドで寝ている俺っち。

「あなた~朝よ。起きてちょうだい」

起こしにくる若い女性。

「きゃっ!」

ガバっとベッドの中に引き込んでほっぺにチューをする俺っち。

「おはよう、真央」

「もうあなたったら~。仕返しだぞ」

俺っちの背後にサークルクロスが出現する。

はりつけにされる俺っち。おいおい真央、これは何だい?

「真央?はぁ~誰だそれ」

下を向いていた真央ちゃんが顔をあげるとスーザンに変ってるぅ!

「開放されたくば金貨10枚、いや100枚だ~このチンカスがぁ!」

はっ! 俺っちは今、何を見ていた。

またフカフカのベッドの中。寝返りを打つと裸になって寝ている88がいる。

「こんな気持ちは初めてだよ、レニー。魔族と人間との恋、悪くない。

レニー、私は一生君のものだ。さあ、キスをしてくれよ」

キスをしようとする俺っちの背後にまたサークルクロスが。

すっぽんぽんのままはりつけにされ、縦置きになる俺っちの前にまたスーザンが。

「金貨1000枚だ、このチンカスがぁ!」

「払う訳ねーだろ!」

「やれ、クワーマン」

俺っちのチン〇を咥えようとするクワーマン。

「オラ、リンゴとハチミツとろ~り入ったチン〇が大好物だべ」

やめろーっ!やめてくれーっ!はあああん!

はっ! 俺っちは今、何を見ていた。

またまたフカフカのベッドの中。

「パパ、起きて。今日遊びに行く約束でしょ?」

「もう少しだけ寝かせくれよ、綾~」

小学生っぽい服装、トレーナーにジーパンの彩姫が起こしにくる。

「ママ~、パパが起きないよ~」

「あらあら、あなた朝食の準備が出来てますから早く起きてちょうだい」

黄色いワンピースにエプロン姿のスーザン。普通に可愛いじゃねーか。

「今日はみんなでミッキーランドに行く約束だよ」

「そうだったかな?」

あくびをしながらパジャマ姿のままリビングへ。

「はい、パパ、お茶をどうぞ」

「ありがとう、綾」

湯気が出ている緑茶を飲みながら…あれ?何だか体から寒気がする。

「うまくいったのうザンスー」

「ええ、これでレニーの全財産は我々のものよ、あやや」

何か毒を盛られたのか?寒気がどんどん増してくる。

寒い、寒い、寒い、寒い、寒い、寒い。

はっ! 俺っちは今、何を見ていた。

幻覚?それとも夢?とにかくマジこのままじゃ凍え死ぬ。何とかしないと。

レニーたち到着1時間前。

小高い山の中腹あたりに縦横5メートルくらいの穴が開いてある。

スペランカ洞窟の入り口である。

「本当にこの洞窟にいるのかキー」

「わかんねーよ。ただ、依頼主の話じゃ

スペランカ洞窟に一人で修行に行ってきます、という置手紙があったらしくてよ」

「依頼主って誰だワン」

「あれ?言ってなかったっけ?」

「聞いてないキー」

「またいつもの調子で面白そうだから受けたカッパか?」

「当ったり~。依頼主は世界安全保証教会さ」

「世界安全保証教会、あーあのご安全にとかいう挨拶をするおせっかい集団かキー」

「レッドちゃんにコンタクトして教会へ戻るよう言って欲しいってよ」

「レッドちゃんキー?」

「まさかとは思うがレッドちゃんって女の子ワン?」

「モモのすけが引き受けたってことは絶対色白で可愛い子カッパ」

「あれ?言ってなかったっけ?たった一人でこんなところに来ようっていう

レッドちゃんを俺は放っておかない!」

「モモのすけ・・・お前ってやつはキー」

「最低だワン・・・」

モモのすけ達がスペランカ洞窟の中に入っていく姿を遠くから観察している男がいた。

「ようやくカモが洞窟に入って行きやがった」

西遊記のリーダー三三蔵蔵である。

「ヒューマンに犬獣人に・・・なんだあのマスコットみたいな小さい緑の生き物は?

見たことねーな~。おっ、お前と同じ猿獣人がいるぜ、ゴクウクウ」

「猿獣人?まあ、俺より強い猿人はいないから安心してくれキー」

如意棒を行商人の天秤棒のように担ぎ両手を乗っけて岩の上に座っている。

「パーティに女はいたブヒ?」

「女はいねー。ハッカイカイ、おめーは本当に女好きだな~」

三三蔵蔵は上空を見上げ

「他にカモは見当たらねーか、キジキジ」

バッサバッサと羽を動かし、旋回しながら降りてくる。

「今のところはいねーキジ」

空から降りてきたキジキジが檻の中を覗く。

「和尚、ガキが一匹死にそうだけどどうするキジ?」

檻の中に女の子二人、男の子二人が閉じ込められていた。

女の子が一人に死にかけている。

「ほっとけ。死んだらゾンビにするだけだ」

三三蔵蔵の後ろには、中央にゴクウクウ、右にハッカイカイ、左にキジキジ。

「あいつらが洞窟から出てきたらいつも手はずで仕掛けるぞ」

「了解ウキーっ」「了解ブヒーっ」「了解クワーっ」

「お前達が苦労して取ってきたメルティピッグの肉は

俺達、西遊記がしっかり頂戴してやるぜ」

三三蔵蔵は少しだけ不思議な違和感を感じていた。

「しかしなんじゃろう・・・あの緑色の生き物とうちのキジキジを入れ替えると

スッキリするようなこの違和感は」

今日、俺っちは電流魔法の新たな使い方を会得した。

体全体に電流魔法を流し衣服をカイロみたいに暖かくする方法だ。

風神子に抱えられ飛行機が飛ぶ高さまで急上昇。上空の気温は多分マイナスだと思う。

約1時間ほどのフライトはマジで凍え死にそうになった。必死だった。

修行中のヒーローが死の淵まで追い込まれたときに開眼し覚醒する必殺技。

それが俺っちの場合は電流魔法カイロだった。しょぼいけど命拾いしたぁ~。

洞窟の前に降り立つ俺っち達。

「寒かった・・・JBは大丈夫だったの?」

「私は魔法で障壁を作っていたから大丈夫だったよ。

言ってくれれば魔法かけてあげたのに」

フライト中、大声で助けを求めたがJBは全く気がついてくれなかったのよね。

おかげで新しい電流魔法の使い方覚えたけどね。鼻水をすすりながら

「ここがスペランカ洞窟っすか?」

「そう、スペランカ洞窟」

「お化けとか出てきません?」

「大丈夫だよ。この辺にゴースト系のモンスターはいないはずだよ」

「俺っちは洞窟の前で待っていた方が・・・」

「それはやめておいた方がいい。洞窟の外にもサラマンダータイガーはいるからね」

雷神子がサムアップした右手親指を顔に向けながら

「俺達と一緒にいる方が安全だぜ」

風神子、雷神子と一緒にいた方が危険だが安全だろう。

危険だが安全?S級クラスのJBもいるにはいるが

中華ハイ状態になったJBがはたして俺っちを守ってくれるかは微妙だ。

「レニー達は私達姉妹が守ってあげるわ」

先ほどのフライトですでに凍え死にそうになりましたけど。

「さっさと用事を済ませて帰ろうぜ!」

先頭きって入っていく雷神子。彼女に続いて洞窟の中に入っていく俺っち達。

今日の午前中まではバンドのメンバーを集めるだけの簡単なお仕事だったはずだ。

冒険者ギルドではパーティーすら組んでもらえなかった吟遊詩人の俺っちは

一人は元S級。二人は魔族で多分、超S級。

超格差パーティーを組み、今から見知らぬ洞窟に入って冒険ファンタジーを

しようとしている・・・ロックンロール。

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