風神子、雷神子、召還
「メルティピッグの肉はどうやったら手に入るんだ?」
ドラロンが真剣な表情でJBに聞いている。
「通常は冒険者が偶然入手したものを高値で購入するのですが
最近は値段が高騰していてなかなか手に入らないのです」
タイガックスから聞いた通りだ。あるグルメくそ貴族が法外な値段で
買い取ったことで価格が高騰しているのだ。となるとやっぱり
「パーティを組んでメルティピッグを狩りに行くしかないですね」
だよね~。まあ、この狩りに俺っちが参加することは絶対にないだろう。
なぜなら、最低でも冒険者ランクB級以上推奨の難易度なのだから。
俺っちはEランクすら付かないランク外の超お荷物超弱吟遊詩人だし。
「一番近い狩場はスペラッタ王国の南にあるスペランカ洞窟ですかね」
スペランカ洞窟、こけるだけですぐに死ぬアトラクションいっぱいな感じの洞窟だな。
「ちなみにJBの冒険者レベルは何級っすか?」
「私はS級だよ」
すげぇ!S級ってタイガックスよりも強い。怒らせないように気をつけよう。
ただ、改めて思うよ、何であんた中華料理人やってんのさ。
「メルト、転移魔法でちゃちゃっとメルティピッグの肉を取ってこいよ」
「私が手加減が下手な事を知っているだろう、ドラロン」
「ん・・・まあな、お前が行くと洞窟を破壊しかねない・・・か」
「洞窟を破壊?」
「私の攻撃は壁に止まっている小さな虫を巨大なハンマーで
思いっきり叩くようなものなのだよ。虫も死ぬが壁も破壊してしまう」
「加減が難しいということっすか」
「その通りだよレニー」
「ガンガンを連れて行けばいいんじゃないっすか?」
「ガンガンはダメだ。俺様の身の回りの世話や手伝いやらで忙しいんだよ」
「ふむ、ではあの子達に頼むとしよう」
88は胸ポケットから2枚のカードを取り出し空中に投げた。
88の頭上4メートルでカードが縦置きに固定される。
「サモン、風神子、雷神子」
その場でカードはクルクルと回りだし高速回転。
直径2メートルほどの魔方陣が展開された。
カードが魔方陣へと吸い込まれていくと同時に魔方陣の下から足先が現れる。
尻、腰、胸と順番に出現していき、二人の女性が召還された。
身長165センチくらい。見た目は10代半ば。
短パンからスラリとした足。靴は履いていない、素足である。
二人とも顔は似ている、双子かな。芸能人でいうと顔は橋本か○なに似ている。
風神子は色白で爪は紫色、黒髪のロングのストレートヘアー。
88LOVEと書かれた帯を天女の羽衣みたいに背負っている。
そうだな・・・簡単にいうと大人し目の優等生タイプ。
「お呼びでしょうか、88様」
雷神子は色黒で爪はピンク色、金髪のドレッドヘアー。
88LOVEと書かれた帯をタオル掛けしている。
そうだな・・・簡単にいうとギャル系の不良タイプ。
「お呼びすっかー、88様」
88の前に膝まづく二人の魔族。
「やあ、風神子、雷神子、久しぶりだね」
二人共ヒューマンにしか見えない。いや~この子達マジ可愛いわ~。
俺っち的にはギャル系の雷神子がタイプだが風神子も全然イケる、
いやもう両方イケる!
「スペラッタ王国に行って欲しいのだよ」
「はっ、我等3姉妹にお任せくださいませ」
3姉妹?双子じゃないの?
「スペラッタ王国とはまた懐かしいですわね」
「ぶっちゃけ何百年ぶりかな、風神子」
「よく覚えていないけど300年前じゃないかしら、雷神子」
さすが魔族、単位が百年単位だ。
「スペラッタ王国で何すればいいっすか?また暴れてくればいいっすか?」
「ダメよ雷神子。あなたはすぐに暴れたがる。血の気が多くて困った子ね」
「よく言うぜ。切れたら見境が無くなるのは風神子のくせによ~」
「彼らに同行してあるものを持って帰ってきて欲しいのだよ。
レニー、彼女達に説明してくれたまえ」
えっ?今彼らって言いました?俺っちは行かないっすよ。行くのはJBだけっすよ。
「初めまして、レニー・グラディウスっす」
自己紹介で前に出ようとした瞬間
「ヒューマンごときがなぜここにいる!」
風神子が俺っちを睨みつける。大人しそうに見えるが切れたら見境が無くなるとか
言われてたし。風神子の方が怖いのかも。
「ヒューマン、それ以上前に出たらぶっ殺す」
雷神子が左手親指を立て、横にして首を切る動作、ニヤリと笑みを浮かべながら言う。
うむ、見た目通り雷神子も怖い、
っていうかもう両方怖い。
88とドラロンが紳士的だっただけで通常はこれが魔族の反応なのだろう。
「レニーは私の大事な暇つぶしに必要な友人だよ。殺してはいけないよ」
暇つぶし?とはあのバンド活動のことだろうか?
風「かしこまりました、88様」雷「りょーかーい、88様」
「ここにいるエルフのJBと一緒にスペラッタ王国の南にあるスペランカ洞窟に行って
メルティピッグの肉を取ってきて欲しいっす」
「よろしく頼むよ、風神子、雷神子」
風「かしこまりました、88様」雷「りょーかーい、88様」
ひゅん!と音が聞こえ風神子と雷神子が視界から消えた。
と同時に88とドラロンがどんどん小さくなって離れていく。
気が付くと風神子が俺っちを抱かかえて空高く猛スピードで飛んでいる。
雷神子はJBを抱かかえて同じように飛んでいる。
えっ?何?俺っちも狩りに行くんっすか?景色がすごい速さで飛んでいく。
「風神子、雷神子とはまたヤバイやつらを呼んだな、レニー達大丈夫か?」
「さあ」
「さあってお前・・・死ななきゃいいけどな~レニー達」




