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サラ鍋爆誕

工房の壁に飾られた中華鍋くらいの大きさの丸い盾を見ながら

ドラロンがハードボイルド調で語る。

サラマンダーシールド、とでも言っておこうか。

ドラゴンの炎に耐える強度、そして女子供でも持てるくらいの軽さ。

こいつの特徴は裏側にある。裏返して使えばサラマンダー級の炎を出す。

以前、こいつを使っていたやつが表裏を間違って使い、

自身にサラマンダー級の炎を浴び絶命したことで呪いの盾認定されちまったが、

俺様から言わせれば間違って使ったやつがバカでこいつのせいではないってことさ。

つまり、どんな性能の良い武器や防具も使い手次第で無駄になる。

作り手としての戒めってやつで壊さず、ああやって壁に飾ってあるのよ。

「さてとDG2の調整をしないとな」

たらりらりらーん、りらりららーん。

ドアの開けるようにサラマンダーシールドがパカっと右から左に開き

壁に丸い空間が出現した。

「やあドラロン」

丸い穴から顔を出す88。

「そんな小さい穴から出てくるの大変だろ?」

「そうだね」

パタンとサラマンダーシールドを閉める88。ドアから入り直す88。

「毎回趣向を凝らす必要ないからよ。玄関から普通に入ってこいって」

「何だか癖になってしまってね」

「ちわーっす!」

88の後から俺っちも入ってくる。

「ここは・・・中華ですか?」

俺っちの後からJBが入ってくる。

「おっ、今日はエルフを連れてきたのかよ。

なんか中華がどうとかブツブツ言ってるけど大丈夫か?」

「ははは・・・紹介します。彼の名はJB。バンドのドラマー候補っす」

ゆったりとおしとやかにガンガンがやってきた。

「残念なお知らせです、マスター。

今日から1週間、お店が臨時休業となっておりました」

「マジか!あの店のチャーハンを2日に一度は食べないと

俺様、落ち着かないんだよな~」

あっ、すみません、そのお店の休業の原因を作ったのは俺っち達です。

「えっと…その店の店主が彼っす。JB中華飯店のJBが彼っす」

「マジで!このエルフがあのチャーハン作ってたのかよ!」

足元にいた呪いのぬいぐるみを捕まえた88はドラロンに見せながら

「ドラロン、ミッキーが呼んでるよ」

プラカードを持った呪いのぬいぐるみ。

プラカードには至急魔王城に来られたしと書かれてある。

「そんなの無視無視。ドラムの進捗を見に来たんだろ?調整中のDG2を見ていけよ」

DG2の前にドラロン。ドラロンの右横後ろにガンガン。

ドラロンの後ろには俺っち。俺っちの左隣にはJBがいる。

「私は2階のテラスでガンガンが入れてくれる美味しい紅茶をご馳走になっているよ」

と言い残すと88はさっさと2階へ上がってしまった。

「ドラロン、これは・・・ゴリさん」

「ヒューマンベースにしてみたんだよ」

某国民的バスケ漫画のあのゴリさんそっくりじゃねぇっすか!

背中とお腹に大きく数字の2が書かれてある。バージョン2の意味らしい。

バージョン4じゃなくてよかった。4と書いてあったら色々と大変だったね。

「またポコチン銃を仕込んでないっすよね?

DG1は動物のゴリラだったからギリギリセーフでしたけど

これはヒューマンですから完全アウトっすよ」

「大丈夫だって。それにまだ未完成だからよ。調整中ってやつよ」

「セーフ、アウト、それ中華なの?」

「中華ではないっす」

まだ中華ロー状態のJB。

「未完成だけど変形するところは見せてやれるぜ」

そう言うとドラロンはバスケットボールみたいなものをDG2の手に持たせた。

「このボール状の部品が叩いて音がでるやつでな」

ああ、やばいって、DG2が君が好きだと叫ばないか心配だ。

「で、この背中のスイッチを押すとドラムに変形するんだよ」

ゴリさん、いやDG2の目に光が点灯する。

ウガーっ!と叫ぶとDG2はバスケットの3ポイントシュートを投げるように

ボールを部屋の隅にある口の丸いゴミ箱に投げ込んだ。

スポッっと入るボールを見たDG2は両手を上げ万歳のポーズを取りながら

ウガーっ!と叫ぶとゴミ箱からボールを取り出し、お腹から背中、背中からお腹へ

クルクルとボールを数回した後、先ほどの場所へ戻りもう一度3ポイントシュート。

ボールがゴミ箱から外れると両手を腰に当て首を傾げ頭をうな垂れ

ヤレヤレ感を出しながらウガァ・・・。

DG2がバスケットマンの動きをしているのはなぜ?ゴリさんだから?

ゴミ箱に入らなかったボールを取りに行くDG2。

「変形しないっすね」

「おかしいな、変形しねーな?」

「変形しない、それ中華なの?」

「中華ではないっす」

ボールを拾い上げながら何かに気が付くDG2。

ウガーっ!壁目掛けて猛ダッシュ。

その先には調度いい高さにサラマンダーシールドが。

丸いものへボールを入れたくなるバスケットマンとしての習性ってやつか!

ホップ、ステップ、ジャーンプ!サラマンダーシールドにダンクシュート!

ガコーン!弾かれたボールはどこかへ飛んでいく。

衝撃で壁から落ちたサラマンダーシールドは床に叩きつけられ

高速回転でクルクルと周りながらJBの方へ向かっていく。

ウガーっ!ボールを走って追っていくDG2。

「あー失敗だな。ガンガーン」

「はい、マスター」

回転速度が落ちてきたサラマンダーシールドはカランコロンと横向きになりながら

JBの1メートル手前で裏返しで止まった。そして上方向に火柱がドーン!

ガンガンによるDG2への綺麗なジャーマンスープレックスがドーン!

と同時に炸裂する。

「あぶなっ!何っすかこの盾」

「サラマンダーシールドって言ってな。

裏返して使うとサラマンダーの炎を出す一品よ。

盾を裏返してファイヤ!って言わないと炎が出ないはずなんだが」

出てたんじゃん、ファイヤーって言わなくてもすげぇ火柱、今出てたじゃん!

装備者が戦闘中に盾に強い衝撃を受けたとき、今みたいに

サラマンダー級の炎が自身にドーン!って出るとしたら超マズイじゃん。

ある意味、呪いの盾じゃん。

「サラマンダーの炎・・・ファイヤー・・・それは・・・」

JBの瞳に生気が戻る。

「それは・・・それは中華だ!」

JBはサラマンダーシールドを拾い上げ

「この形状、厚み、軽さ」

「わかるかい。シーフや魔法使いなどの非力な職業でも持ち運べる軽さよ」

「こ、こ、これは何という中華鍋ですかぁああああああ!」

「中華鍋じゃねぇよ、盾だ」

「これを私に譲っていただけませんか!」

「そいつぁ使い方を間違うと大やけどする危ないじゃじゃ馬だぜ」

「構いません!このJB、中華の道に入ったその日から

死ぬ覚悟はいつでもできています!」

中華ローから中華ハイへスイッチオン!

「中華の道ってのはよくわかんねぇけどよ、お前さんみたいな

真っ直ぐな目をしてサラマンダーシールドを欲したやつは今までいなかったぜ」

「私は追い求めていました。強い火力を出す中華鍋を、強い火力にに耐える中華鍋を」

「だから鍋じゃねぇって、盾だって」

「この中華鍋ならもっと美味しい、もっと上のチャーハンを作ってみせる!」

「だから中華鍋じゃね・・・何?今、何って言った!」

「もっと美味しい、もっと上のチャーハンを作ってみせる!」

「もっと美味しい、もっと上のチャーハンがあるってのか!」

少し考え込むドラロン。

「このドラロン、鍋を作るのはこれが最初で最後だろうよ。

お前さんの作るチャーハンにはその価値がある!」

魔族の名工にここまで言わせるのだからJBは間違いなく中華料理の天才、

鉄人なのだと思う。ドラマーにするの諦めチャイナ。でもな~、違う候補を探すのも

面倒くさい。ここは何としてもJBにドラマーとして加わってもらいたいのだが。

「ありがとうございます、ドラロンさん。んっ?ドラロン?

どこかで聞いたことがある・・・まさか、あの魔族の名工 ドラロン!」

中華ハイになったことで少し冷静さを取り戻したかな。

「なんだってぇええええええええええええええええええええええ!」

絶叫して倒れそうになるJB。

俺っちはこんなに驚いたJBを後にも先にも見たことがない。

   ●

「あー、こりゃ首のフレームが折れてんな。作り直しだな」

「申し訳ありません、マスター」

首から上がブランブランになったDG2の両脇を抱えているガンガン。

こうしてゴリさん、いやDG2は

バスケット関連の問題を色々と起こす前にその短い生涯を閉じた。

   ●

ドラロンの2階のテラス。何時来てもカフェのようなリラックス空間。

そんな2階のテラスで現在、ドラロンとJBが中華鍋の打ち合わせ中だ。

「この中の持ち手は必要ないですから外してください」

「最大出力で街一個くらい破壊できる火力が必要だろ?」

ドラロンよ、なぜすぐに街を破壊するような武器を通り越した兵器を仕込みたがる。

「鍋の両サイドに取っ手を付けてください」

「両手に持ってこんな風に攻撃するためか?」

ドラロンはラウンドガールのようにサラマンダーシールドを掲げている。

「いえ、こんな風に手に持って」

JBは中華鍋を振るような動作をして説明している。88の方はというと、

いつものように足組みをして椅子に座りガンガンが入れた紅茶を優雅に飲んでいる。

ガンガンのようなメイド服を着せたらマジ綺麗だろうな。

真央ちゃんとどっちが綺麗だろう。

「よし、わかった。30分ほど待ってろ」

   ●

「サラマンダー鍋だ」

こうして呪いの盾サラマンダーシールドは

その日のうちに中華鍋として生まれ変わった。

「ありがとうございます!」

満面の笑みのJB。俺っちはこんなに喜ぶJBを後にも先にも見たことがない。

俺っちたちの犯罪スレスレ、いやもう犯罪行為の小芝居で

JB中華飯店は1週間の営業停止を余儀なくされた。

生気を失い廃人状態になったJBはサラマンダー鍋、略してサラ鍋

を手に入れることで生気を取り戻した。災い転じて福となすってやつだ。

「あとはメルティピッグの肉が手に入ればいうこと無しです」

「メルティピッグの肉って言えば・・・幻のチャーハン!」

「何だその幻のチャーハンってやつは!」

食いついてくるドラロン。

「メルティピッグの肉で作るチャーハンは最高に美味しいのです。

そして、このサラ鍋を使い強い火力で仕上げるのが幻のチャーハンです。

「幻のチャーハンだとぉ!」

更に食いついてくるドラロン。

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