幻のチャーハンとは
マダラスカルのメインストリートを歩いている俺っち。
「っつ・・・痛ぇ」
クワーマンのくしゃみが起こした爆風により部屋の花瓶が
俺っちの額にぶつかって出来たコブを手でなでる。
「何が、あっごめんなさいだべ、だ」
調度品は壊れるは窓は割れるは。よくこのコブだけで助かったものだ。
でも本当に痛かったのは弁償代として金貨10枚をホテルから請求されたことだった。
すんませんっす!土下座してホテルの店主に謝る俺っち。
クワーマンはドラゴン級の肺活量を持つ男。
その肺活量から吐き出されるくしゃみはもはやドラゴンのクシャミに匹敵する。
そういえば転生前の小学3年生のとき、野球をして
隣の家の車にバッドで傷をつけたことがあったけな。
親父とおふくろ同伴で謝りに行った。あの時、弁償代いくら支払ったんだろう。
あのときの親父も今の俺っちと同じ気持ちだったのかな。
くしゃみで殺されかけるのも嫌だがクワーマンがくしゃみで壊したものを
弁償させられるのはもっと嫌だ。俺っちはクワーマンの父親じゃねえ。
帰ったらクワーマンには早々に村にお帰り願おう。
バンドから追い出すわけではない。村に帰ってもらうだけだ。
さて、大きな問題が残っている。ドラム未加入という大きな問題が。
別のドラマーを探せばいいのかもしれないが、
あの料理を作るときのリズム感、ドラマーはJB以外あり得ない。
しかしJBは中華飯店が忙しい、どうしたものかと思いながら
今日もいつものようにJB中華飯店で
JBの激うまチャーハンを食べながら考えよう。
「JB、いつもの」「アイヨー」
もはやいつものでチャーハンが出るまで通いつめているJB中華飯店。
マジで名店だよ。店内はいつもの常連客でいっぱいだ。トラ獣人とも仲良くなった。
「うぃーっす!タイガックス、調子はどうだい?」
挨拶しながらタイガックスと一緒のテーブルに座る俺っち。
「絶好調だぜ!」
「レニー、その額のコブはどうした?」
「はは、ちょっとね」
「タイガックスの方は?今日の仕事はどうだった?」
「バッファローGOGOを2匹狩ってやったぜ!
ここのチャーハン食べることだけを考えて頑張ったぜ」
JBの店のメニューに幻のチャーハン時価っていうのがある。
気になってるんだよね~。
「タイガックス、幻のチャーハン、食べたことある?」
「ねえよ」
「何で時価なんだろう」
「JBの話だとメルティピッグの肉を使うかららしいぜ」
「メルティピッグ?」
「何だメルティピッグを知らねーのか」
タイガックスはチャーハンを食べながらメルティピッグについて丁寧に教えてくれた。
コワモテなんだけど意外と優しいやつなんだよな~タイガックスって。
牛くらいの大きさの猪のモンスターで攻撃は突進と噛み付き。
猪なのでボアと呼ぶべきであるが
ピッグと呼ばれるのは肉質が豚にそっくりだからである。
死ぬと1分ほどで脂が溶け出し、この脂が肉を溶かしてしまうのだ。
メルティ(溶けやすい)と呼ばれるのはこのためだ。
氷結魔法で凍らせて持ち帰ればいいじゃんと思うかもしれないが
脂が邪魔して氷結できない。このため肉の保存が極めて難しいのだ。
仕留めてすぐにサラマンダー級の火力で肉が溶ける前に脂を蒸発させることで
肉を得ることができるのであるが、ここである問題が発生する。
サラマンダータイガーだ。トラの俊敏さにサラマンダーの炎を吐くこのモンスターは
メルティピッグが大好物なのである。
メルティピッグのいるところには必ずサラマンダータイガーがいる。
このグルメなトラはメルティピッグを仕留めた後、炎を吐き焼くのである。
そして上質な肉をほとんどその場でたいらげるため残らない。
幻の肉と言われている所以である。
メルティピッグの肉の入手方法は3つある。
1つ目は冒険者が手に入れたものを高値で買い取る方法。
メルティピッグの肉の相場はキロ純金貨30枚(三百万円)で取引されていたが
今年の元旦に価格の異変が起こる。隣国フランフラン(通称FF国)の
高名なグルメ貴族がキロ純金貨千枚(1億円)で買い取ったのである。
これによりメルティピッグの肉の相場が崩れ、
現在はキロ純金貨500枚(5千万円)以上で取引されるようになっている。
2つ目は、さあ、狩の時間だ!とパーティーを組み自前で調達する方法。
メルティピッグの肉は高値で取引される。
一攫千金を目指してパーティを組み肉をゲットしに行くわけだが
サラマンダータイガーと遭遇し丸焦げにされ命を落とす冒険者が後をたたない。
最低でもB級以上推奨、冒険者ギルドも安易に討伐に行かぬよう注意喚起している。
ちなみにタイガックスのパーティはC級でレベルと装備が低いため
サラマンダータイガーに太刀打ちできないらしい。
3つ目は、冒険者ギルドが非常に問題視している行為。
メルティピッグの肉を入手する一番楽な方法は何か・・・強盗である。
メルティピッグの肉を入手したパーティを待ち伏せし肉を奪うのである。
返り討ちに会うリスクはあるがサラマンダータイガーとやり合うよりは安全である。
ギルドの掲示板には強盗を行った者達の指名手配書が掲載されている。
タイガックスはアイテム袋の中から指名手配書を取り出し見せてくれた。
「その中でも特に凶悪な4人組がこいつらだ」
ヒューマンの三三蔵蔵。
猿獣人の悟空空。
豚獣人の八戒戒。
鳥獣人のキジキジ。
「ははは、西遊記かよ」
「何だ知ってるのか。パーティ名 西遊記。ちなみにA級だぜ」
マジで?パーティ名が西遊記って・・・ん?キジキジ?何でそこは鳥?
何で桃太郎が混じってんの?その位置は沙悟浄じゃないの?
「すでに5組ほどのパーティが襲われていて死者も多数出ている」
手配書にはデッド・オア・ライブ(生死は問わない)と書いてある。




