吹き矢 ドラゴンスナイパー
たらりらりらーん、りらりららーん。
トータルリコールでシュワちゃんがおばちゃんから現れるシーン、知ってます?
あんな感じでDG1が真ん中から割れ始め、中から88が現れた。
「おや、ここはどこだい?」
突然現れた88にホビット達はざわつく。
魔族特有の威圧感に気づいたホビットが叫ぶ。
「魔族だ!」
またも蜘蛛の子を散らすように素早く逃げるホビット達。
クワーマン以外、広場にホビットは残っていない。
村長はまたも遠く離れて望遠魔法で様子を伺っている。
88の目の8の字を確認すると
「あれは88ではないか!なぜ、あんな超大物魔族がわしらの村に。
最古の魔族の一人と言われる。魔族が恐れる魔族。
魔王すらもその存在を恐れたと言われている」
村長、物知り~っていうか説明要員~。
「なるほど、呪いのぬいぐるみが、ゴリラの・・・、空気圧で」
俺っちは簡単ないきさつを88に話している。
「面白いホビットだね。彼もドラロンのところへ連れて行こう」
足元に展開される大きな魔方陣。
「ただいま戻りました、マスター」
「おう、意外と時間がかかったな~・・・て、何でメルトが一緒にいる?」
●
「いや~レニー、生きててよかったな」
「防具だけの約束だったはずっすよ!」
あれはもはや武器とは最早言えない代物だ。
「あっ、あの股に仕込んだ銃のこと?」
「違うっす!」
「いや~悪り~悪り~、ついな、あーいう大砲みたいなやつ付けたくなんだよ」
ドラロンの左頬を一陣の衝撃波が吹き抜ける。衝撃波は無造作に置かれている盾に
ぶつかり跳ね返り壁を破壊し工房横にある崖にぶち当たると
ガガガガという音を立てながら
直径10メートル深さにして20メートルほどを掘削した。
「あっ・・・ごめんなさい、だべ」
ドラゴンスナイパーを手に持ったクワーマンがドラロンにぺこり~。
「なんだ、何者なんだ、こいつぁ」
背後にできたクレータを見た後、
信じられないといった表情でクワーマンを見るドラロン。
「このホビット、面白いだろ~」
「おら、クワーマンです。好きな飲み物はりんごと蜂蜜とろ~り入った麦茶です」
「驚いた・・・そして俺は今猛烈に感動している」
「このホビットはすごい肺活量の持ち主でね」
「そうっす、DG1を破壊したのは彼っす」
ポコチン銃を咥えて壊したことは黙っておくことにしよう。
「ドラゴンスナイパーの使い手が現れるとはな。あの威力…見たかよ。
やっぱり俺は魔族の名工だよな。
よし、クワーマン、そいつぁ~今日からお前のものだ。
お礼?よしてくれぃ。武器が人を選ぶ瞬間に立ち会えただけで十分だ。
今夜は美味い酒が飲めそうだ。ガンガン、今晩は酒を用意しておいてくれ!
それから、あの店のチャーハンもな」
「はい、マスター」
88がドラロンの耳元で
「ドラゴンスナイパーをラッパという楽器に改造してくれない」
「真の使い手が現れたこの喜びの瞬間に楽器に改造しろってか」
「そう、楽器。ラッパってやつに改造してよ」
「さっき見たろ。ドラゴンスナイパーの芸術的な破壊力を」
「私は何も感じなかったよ」
「メルト、お前が別格過ぎるんだよ!俺が作ったドラゴンスナイパーを楽器?」
「改造する材料が足りないのなら・・・」
88が左手の手袋を外す。手の甲に数字の8がチラッと見えた。
「この辺の鎧や盾を数個、8式でぶっ壊すから材料にすればいいよ」
「やめろ!8式はやめろ!工房が吹っ飛ぶからやめろって!」
この日、ドラゴンスナイパーは200年の時を経て真の使い手とめぐり会えたが
その日のうちにラッパに生まれ変わり、武器としての生涯を閉じた。
「閉じさせねぇよ。俺は魔族の名工。武器の機能はこっそりと残してるぜぇ!」
後日、クワーマンがドラゴンスナイパーで作った横穴は倉庫として活用された。
「その剣と鎧はこっちに置いといて」
「はい、マスター」