表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/37

自爆のDG1

スタンタタタンとステップを踏み出すガンガン。

先ほどは縦に飛び跳ねながら体を左右に入れ替えていたが

今回は1~2メートルの範囲で左右に動いている。ファイティングポーズは取らずに

だらりと脱力した腕を時折あご付近に持ち上げジャブをしては脱力する。

DG1を中心にして右方向に円を描きながらじょじょに円が小さくなっていく。

距離にして5メートルくらいだろうか。普通なら届かない距離。

ガンガンがスパンと距離を詰め左ジャブを繰り出しDG1の顔にヒットする。

グラリとよろめくDG1。バックステップで元に戻る。

今度は左方向に円を描きながら~右ジャブ、元に戻る。

アウトボクシング。そしてまた左に円を描く。

DG1はガンガンが動く方向に合わせ俺っちを盾代わりに突き出すが間に合わない。

「村に着いただべか?おろしてくれだべ」

鞭のようにしなった腕が俺っちをすり抜けDG1の顔にヒットする。

じゅっ、痛たたっ、今耳をかすめましたよガンガンさん!

みるみるうちにDG1の顔がボコボコになっていく。

ガンガンは考えていた。まずはアウトボクシングでDG1の動きを止める。

そして高エネルギー砲を有する頭部を破壊した後、レニーをゆっくりと救出する。

スタンタタタン、交差するステップ、左へ回りシュパ!右へ回りシュパ!

蝶のように舞い、蜂のように刺す。モハメド・アリ!

遠い場所からこの戦いを望遠魔法で見ているホビットがいた。

村長である。わなわなと震えながら

「あ・・・あれはドラロンの最高傑作と言われるオートマター レディ・ガンガン!

戦鉄姫せんてつひの呼び名を持つ美しき戦闘マシン。

数年前に世界安全保証教会のセーフティレンジャーを瞬殺したと言ふ」

おーい村長、何でそんなに詳しいのさ?

ゴキンっ!鈍い音とともにDG1の頭部が吹っ飛び動きが止まる。

呪いのぬいぐるみがDG1の首から頭だけを出し様子を伺っている。

「ギギギッ!」

やってくれたな!そんな顔をしたようなしてないような。呪いのぬいぐるみは

またDG1の中に入ってしまった。ガコン!何かスイッチが入ったような音がした。

「自爆装置を発動しました」

自爆だと!山を消滅させる兵器を搭載しているDG1の自爆。

多分、この村は消滅する。そして俺っちも。

「ウォーン(警告音)、ウォーン、ただちに避難してください」

「カウントダウン入ります。60、59」

俺っちを救出すべくガンガンがDG1の腕をもぎ取ろうとしているが硬くて動かない。

「んっ?何の音だべ?」

このおっとりとしてノロマなホビットの男はDG1の逃走経路にいただけ、だった。

そして抱かかえ猿の習性で逃走用の道具として捕まったのだ。

転生前の俺っちもそうだった。

真央ちゃんのでっかいポスターを見ていただけ、だった。

そこに飲酒運転の車が突っ込んできて、そして俺っちは死んだ。

車の走行線上にいただけ。色んな偶然が重なったとき人は・・・死ぬ!

「これは何だべか?」

クワーマンがDG1のへその下にある小さいボタンを押す。

カチャ、DG1の陰部あたりからポコチンみたいな銃が出てきた。

バキューン!白い玉?液体?が飛び出し300メートル先の家を吹っ飛ばした。

ドラロンのやろう、こんなところにこんな卑猥な武器を仕込んでやがったのか。

「何だべ・・・今のは・・・」

青ざめるクワーマン。38、37、カウントダウンは無情に進んでいく。

ポコチン銃は一度下がり、カチャっという音が鳴ると再度勃起、いや飛び出てきた。

「ママぁ~、ママぁ~」

何ぃ!逃げ遅れたお子様だとぉ!しかも、ポコチン銃の発射線上に入ってきやがった。

偶然が重なるとき・・・人は死ぬ。

「逃げろ、そこのガキぃ!」

クワーマンの脳裏におっかぁの言葉が浮かぶ。

(クワーマン。あなたの肺活量は神からの贈り物よ。いつか必ず役に立つ時が来るわ)

「やらせはせん、やらせはせんだべ!」

「10、9、8、7」

無情にもカウントダウンは進んでいく。

このままだと、俺っちの命はあと7秒です!

クワーマンは大きく息を吸い込み、そしてDG1のポコチン銃を咥え

思いっきり息を吹き込んだ。

ボフウウウ~、DG1の体の隙間から勢いよく空気が吹き出る。

呪いのぬいぐるみが超強力な黒ひげ危機一発ってな感じで勢いよく首から噴射された。

10メートルくらいの高さ、ビルの3階くらいの高さまで飛ばされている。

「ガンガン、あいつをやっちゃってぇー!」

「はい、レニー」

ガンガンの目から光線が発射され呪いのぬいぐるみは塵と化した。

「3、2、1・・・自爆装置が解除されました」

カウントダウンが止まる。

「ふぅ、生きてる・・・」

どこからともなく避難していたホビット達が広場へ戻ってきた。

壊された家の持ち主は

「俺の家壊したの・・・クワーマンじゃね?」

家の持ち主はクワーマンの親友だった男だ。どこからか声がした。

「そうだ、クワーマンじゃね?」

悪いことが起こった、それはクワーマンのせい、ではない。

呪いのぬいぐるみのせいだが

被害を大きくしたのは武器を越えた兵器を仕込んだドラロンのせいである。

「クワーマンはこの村を救ったんだぞ!」

「よそ者は黙ってろ」

群集心理、弱者が弱者を叩く姿はこんなにも醜いのか。

「クワーマンは悪くないよ!」

おっ、さっきの逃げ遅れた子供、やはり子供は純真だ。

「クワーマンはゴリラのチン○を咥えたんだよ!」

確かに咥えた、咥えたがそこで話を区切るんじゃないクソガキ、続きがあるでしょ!

「うむ、確かにクワーマンはゴリラのチン○を咥えていた」

村長よ、お前もか!その部分だけを強調、切り取るんじゃない!

「オラ、ただ、その子を助けたかっただけだべ」

逆さまのままのクワーマン。頭に血がたまり始めて意識がもうろうとしてるぞ。

誰か早くクワーマンを元に戻してやれよ。

「ありがとう、クワーマン。お前がゴリラのチン○を咥えなければ」

村長、もうちょっと言葉を付け足そう。咥えて息を吹き込まなければって付け足そう。

「村長、俺の家がクワーマンのせいで」

「何でも悪いことはクワーマンのせいにしたい気持ちはわかる。

だが、お主の家はあのゴリラのチン○で壊されたのだ。クワーマンのせいではない!」

「畜生!ゴリラのチン○め!」

このチン○のくだり、いつまで続けるの?

国家の軍事力をも凌駕するドラロンの武器、っていうかもう兵器を体験し

世界安全保証教会なる団体の主張も案外正しいのでは、と思い始めている俺っち。

「これなんだ?」

88の連絡用のボタンを拾い上げた子供のホビットが赤いボタンを押す。

たらりらりらーん、りらりららーん。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ