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暴走のDG1

ピッポォ(時計の音)、山破壊1日前。

壁に飾られたフルートくらいの長さと形状の筒を見ながら

ドラロンがハードボイルド調で語る。ドラゴンスナイパー、とでも言っておこうか。

圧縮された空気を放出することで1キロ先の獲物にも当てれる代物なんだが

ドラゴン級の肺活量が必要でな。作ったはいいが吹けるやつがいなかったっていう

悪い例だな。作り手としての戒めってやつで壊さず、ああやって壁に飾ってある。

「さてとメルトから依頼されたドラムとかいうやつの仕上げに入るか」

工房の片隅を何か小さいものがカサカサと横切る。

「股の間にこの棒状の武器を取り付けて・・・よしっ!明日には完成だな」

ピッポォ(時計の音)、山破壊1時間前。

「自走式ドラム DG1 完成だ」

工房の一室で満足気にDG1を眺めるドラロン。

「おーいガンガン。メルトに完成したと連絡とってくれ」

工房の隙間で親指サイズのサルのぬいぐるみがDG1をじっと見ている。

ピッポォ(時計の音)、山破壊30分前。時刻は13時。

マダラスカルのメインストリート。行き交う人々とサイボーグ馬の引く馬車。

今日もサイボーグ馬をショーウィンドウ越しに見ている俺っち。

あんまり顔をくっつけて見るものだから

ショーウィンドウに顔をくっつけて見るのはお止めくださいと貼紙がされていた。

時折、スーザンから受けたハリツケの苦い思い出が蘇る。心の傷を癒すもの。

それはサイボーグ馬鑑賞である。

ちなみに、スーザンは俺っちから巻き上げた金を元手に

競馬場にサーボーグ馬鑑賞に行っている。

たらりらりらーん、りらりららーん。

この音は88が転移してきた音。周りを見渡すが88はいない。

サイボーグ馬の引く馬車が1台近づいてくる。

俺っちの目の前で馬車は止まりドアが開いた。

「ドラロンから連絡があった。乗りたまえよ」

馬車の中に88がいた。馬車に乗り込み、88の対面に座る俺っち。走り出す馬車。

「スーザンや彩姫はいいんっすか?」

「確認だけだからレニーだけでいいよ」

たらりらりらーん、りらりららーん。

「おっと、この音はメルトのやつ到着したな!」

「また変なところから登場するのだろうが俺様は慌てないぜぇ~」

アイアンメイデンあたりを見つめるドラロン。ピンポーンと玄関のベルが鳴る。

「やあ、ガンガン、ドラロンはいるかい?」

「いらっしゃいませ、88様」

「ちーわっす!」

「いらっしゃいませ、レニー」

「マスター、88様とレニーがいらっしゃいました」

「やあ、ドラロン、出来たんだってね」

「ちわーっす」

「あれ?どうしたんだいドラロン、浮かない顔して」

「いや、その玄関から来たから意外でよぉ」

「アイアンメイデンから出てきた方が良かったのかい?次回からはそうするよ」

「別に普通に玄関からでいいって。やりゃ~出来るじゃねーか、やりゃ~よぉ」

「レニー、私は少々用事があるので失礼するよ。帰るときはボタンで知らせてくれよ」

「なんだメルト、見ていかねーのかよ」

「ミッキーから呼ばれていてね。魔王城に行ってくる」

アイアンメイデンから出ていこうとする88。

「そういうお約束はいいから!さっき玄関からでいいって言ったばかりだろうが!」

「ではレニー、また後で」

そういい残し88はガンガンに見送られ玄関から出ていった。

ピッポォ(時計の音)、山破壊20分前。

「これっすか?」

「そう、これだ」

目の前にゴリラのオートマター、いや、ゴリラのサイボーグと言った方がいいか。

滑らかな金属、メタル色でピッカピカだ。

「かっこいいだろ~、こいつは変形するのよ」

首の後ろ、背中と首がジョイントしている部分に直径3センチほどのボタンがある。

「ほら、ここにあるボタンを押すとな半分に割れて・・・あれ?ならねーな」

もう一度ボタンを押すドラロン。

「1時間前までは問題なく動いていたんだが」

何かを踏んだドラロン。拾い上げてみると何かのネジ。

「何でこんなところにネジが落ちて・・・」

ドラロンの頭に何かがあたり床に落ちた。

「痛っ!」

拾い上げながら

「あれ?またネジ」

「キキーッ!」

「この鳴き声、贄は猿か・・・」

DG1の頭の上には10センチくらいのサルの呪いのぬいぐるみが立っている。

ドラロンはズボンのポケットに手を突っ込みスパナをつかむとDG1とは

反対の方向へスパナを投げた。ブーメランのように円を描きスパナは

呪いのぬいぐるみに命中した。床に落ちた呪いのぬいぐるみを拾いながら

「猿を贄にしたやつは頭がいいから直接狙うと避けやがんだよ」

と、また頭に何かあたり床に落ちる。今度は1センチほどのコード付の部品。

「この部品は確か・・・」

「キキーッ!」

「もう1匹いやがったか」

ドラロンは部品を拾いながらズボンの中に手を入れ

居合い切りのようにスパナを投げる。

半円を描きスパナは呪いのぬいぐるみに・・・避けた!

「何、避けただと!」

親指サイズ、小さくてよく確認できなかったがサルの呪いのぬいぐるみは

ニヤリと笑みを浮かべたようにも見えた。そしてDG1の中に隠れてしまった。

3秒後、DG1の目に光が点灯する。

「やろう、DG1のブルチェと融合しやがったな」

何だ、何が起きているんだ。

「動き回られるとやっかいだ。ガンガーン」

とガンガンを呼んだその瞬間、DG1は俺っちを抱え工房の壁を壊し外へ出た。

そして猛スピードで草原を駆け抜け、ジャーンプ!深い谷を易々と超え山脈の方へ。

「お呼びでしょうか、マスター」

「ガンガン、DG1が暴走した。取り押さえてくれ。

DG1はレニーを連れ去ってる。レニーは殺すなよ。」

「はい、マスター」

DG1が壊した壁からガンガンが猛スピードで後を追う。

「どわーーーーーーっ!」

バンジージャンプなんか比じゃねぇ。俺っちを左脇に抱えたDG1は右手で

木々をなぎ倒し跳躍しながら崖を登る。

開けた山頂にたどり着き雄たけびをあげポコポコポコと右手で胸を叩く。

ガチャン!DG1の中からレバーかスイッチか何か音がした。

「ファーイブ、フォー」

「何だ、何が始まるんだ!」

「スリー、ツゥー、ワン」

DG1の口がカパっと開き、中から舌が・・・いや違う!

大砲だ!キューイイイインと光が集まる音。

「ゼロ、発射!」

高出力のエネルギーが解き放たれる。

この辺一帯で一番高い山の山頂が吹き飛び一番低い山になる。

「何でドラムにあんなものが仕込んであるんだ」

防具を仕込むのは容認したが武器を仕込んで・・・いやこれはもはや兵器だ!

ホビットの村では突然の山の爆発でパニックになっていた。

「神の怒りじゃ」

「皆、避難するのじゃ」

DG1は雄たけびをあげながらホビットの村がある方向へ一直線に走り出した。

もはや俺っちで何とかなるレベルではない。88に連絡して助けを求めよう。

ボタンはどこだ、どこに入れた。震える手でボタンを取り出した瞬間

「キキッキキッ」

目の前に呪いのぬいぐるみが現れボタンを奪いDG1の中に隠れてしまった。

「まずい!ボタンを奪われた」

青い釣り糸のようなものが手首に絡まっている。たぐりよせ引っ張ってみると

「ギギギッギギギッ」

呪いのぬいぐるみが引っ張り出されてきた。

ブルチェと融合・・・そうか!この糸でDG1と融合して操作していたのか。

「調子に乗るんじゃねぇぞ~うぉりゃぁぁぁぁぁぁ」

俺っちは両手に糸をぐるぐると巻きつけ力任せに引きちぎった。

DG1の動きが遅くなり、その場に停止した。

「ギャギャギギャ」

怒り狂いながら呪いのぬいぐるみはDG1の中に入って行き、

尻尾の先から青い糸をつけてすぐに出てきた。

「キキッキキッ」

笑ったのか?俺っちに無駄な努力だったな、と言うために姿を見せたのか。

『猿にもいるんだよ、百万匹に一匹みたいな天才猿が』

あの時はへぇ~そうなんだ~くらいに聞き流していたが・・・。

しかもこいつは逃走する際、俺っちを抱かかえて・・・逃げた!抱かかえ猿?

まずい!俺っちは逃げるときの道具ということか?

「キキッキキッ」

呪いのぬいぐるみは再びDG1の中に入ってしまった。

再起動し動き出すDG1。絶対絶命。

キャイイイイイン。ジェット機が空気を切き裂くような音。

ズガガガーン!とDG1の行く手を阻む何かが降り立つ。ガンガン参上!

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