ホビット クワーマン
「素早く無いホビットなどただのチビっこだべ」
身長150センチ。くるっくるの天然パーマの栗毛。だんご鼻にぼてっとした唇。
小太りで見た目は40代の男性ホビットが河川敷の土手に座って川面を眺めていた。
彼の名はクワーマン・ヒマワリ 25才。
「今年の駆けっこ大会もぶっちぎりのどんべぇだったべ」
村の子供たちから、からかわれゴミを投げつけられるクワーマン。
「やーい、20年連続駆けっこどんべぇナンバーワン!」
「やめろこらぁ!」
と子供たちを追いかけるも追いつけず。
「やーい!のろまのクワーマーン!悔しかったらここまでおいでぇ~」
父親は村一番の俊足。泳ぎも達者で自慢の肺活量を活かし漁師をしていた。
そんな父親も病に倒れ数年前に他界。
「おっとうが残してくれたお金も残り少ないだべ」
川に潜り魚をモリで突いているホビットを見ながら
「肺活量は自信があるんだべ。でも、オラぁ泳げねぇだべ」
父親から受け継いだ遺伝子は肺活量、しかも尋常ではない肺活量であった。
「この前もくしゃみして屋根ふっとばして村長にすげぇ怒られただべ」
またお前か!何度目じゃ!山へ行ってくしゃみしてこいや!
村長と思われる男性ホビットに怒られているクワーマン。
好きな女性がいないわけではなかった。
「あんたなんかと付き合うくらいなら死んだ方がマシ」
といいながら彼女はクワーマンの親友だった男性と結婚した。
「マジうざいんだけど、消えろ!」
ただ歩いていただけなのに
ガングロホビットの女性からは炎魔法で殺されそうになった。
同級生や後輩たちがどんどんと結婚していく。
気がつけば20歳を超えた男性で結婚していないのはクワーマンだけとなっていた。
家の壁が壊れた、クワーマンじゃね?
風邪をひいた、クワーマンじゃね?
ばあちゃんが転んで怪我をした、クワーマンじゃね?
悪いことが起こると何でもクワーマンのせいにされた。
村ではクワーマンみたいになるなとか言われる始末。
(あなたの肺活量は神からの贈り物よ。いつか必ず役に立つ時が来るわ)
そう言って励ましてくれた母親も去年他界した。河川敷の道を幸せそうに歩く
ホビットのカップルを見ながら肩を落としうなだれるクワーマン。
「おっかぁ、この世の中にオラの居場所はあるんだべか・・・」
ポコポコポコポコ、何かを叩く音が遠くから聞こえてくる。
10秒後に右側の山頂から一番高い山めがけて一直線の光が放たれる。
ズガゴーン!辺り一帯がすごい光に包まれる。
地響きが鳴りすごい量の煙が吹き上がる。
河川敷を歩いていたカップルも驚き尻もちをついている。
「何、何だ、何事だべ」
煙が落ち着ちつくと、そこにはあったはずの山が無い。
生まれる前からある山。神の住む山。聖なる山と呼ばれていた
「セントチヒロットカミカンデ山が無くなっているだべ・・・」