世界安全保証教会
沢山の書籍が並ぶ本棚。重役室を思わせるようなインテリア。
重厚で高そうな木製の机と企業の重役が座るような黒の革張りの椅子。
そしてなぜか壁には、おみやげは安全がいいのお父さんと書かれた垂れ幕。
ローマ法王が着ているような白い服を着た年齢は60代後半くらいの
小太りの男性が黒の革張り椅子に座って作業をしている。
書類にサインをしサインの上に安全確認済と書かれた判子を押している。
コンコンとドアをノックする音。
「入りたまえ」
「失礼します」
入ってきた男性は40代、痩せ型、眼鏡、ザ・ジャパニーズサラリーマンっぽい感じ。
彼も小太りの男性と同じ白い服を着ているが工事現場で着用する
黄色いヘルメットを被っている。
小太りの男性の前に立ち、ヘルメットを脱ぎ右脇に抱えた後、左手で敬礼をしながら
「ご安全に」
小太りの男性も作業を中断し左手で敬礼をしながら
「ご安全に」
「コルベット、娘さんは元気かね?」
「はい、カリメロンド様。おかげ様で先日、5才の誕生日を迎えました」
「それは良かった。ところで例のサラダワンの騒音の件だが」
「はい、現在も調査中ですが、どうやら魔族が絡んでいるのではないかと思われます」
「まさか魔王復活のミサではあるまいな」
「20~30名程度の集会でしたので魔王復活のミサでは無い、と思われますが
地獄の番犬ケルベロスのような声と何かを引き裂く
金属音のような大きなギュイイインなる音がしていたとのことです」
「今までに無い事例だな。いったい何が行われていたのだ・・・」
カリメロンドは机の上に置いた右手の人差し指て
トントントンと机を叩きながら言った。
「小さな事件事故がいずれ中くらいの事件事故に発展し大きな事件事故になるのだ。
我々、世界安全保証教会は小さな事件事故をコツコツと排除することで
世界の安全を影ながら守って来た。引き続き調査してくれたまえ」
「かしこまりました」
「本件に魔王親衛教会は関わっておらぬだろうな?」
「今のところ親衛教会の関与は確認できておりませんが
最近、魔槍士ドグマの姿を見かけませぬ」
「魔槍士ドグマ、あの親衛教会の変人めが。やつの持っているドラロン作の
スターライトランスに我々はまだ安全保証のシールを貼っておらん」
「サラダワンの件はセーフティレンジャーの唯一の生き残りである
ピンクに調査を命じております」
「万が一のときに備えセーフティレンジャーを
再結成することも視野に入れておかねばならんぞ」
「ブルー、イエロー、グリーンの候補者については現在選定中です。
レッドの候補者につきましてはすでに外注にて行方を確認中です」
「相変わらず仕事が早いな」
コルベットは左手の中指で眼鏡を押さえ
「恐れいります。」
半年前。
スペラッタ王国のとある洞窟の中。
壁に生えているコケを食べている牛くらいの大きさの猪。
雑食性なのだろうか、もう一匹はトカゲを捕食し食べている。
薄い茶色にシマウマのような黒い模様の大型の猪。メルティピッグである。
コケを食べていたメルティピッグが何かに気がついた瞬間、
トカゲを捕食していたメルティピッグに炎のブレスが襲い掛かる。
ブヒブヒーっ!コケを食べていたメルティピッグは猛ダッシュで逃げていく。
炎を浴びた方は鳴き声をあげる間もなくバチバチと音を立てながら丸焼けになった。
音を立てずに近寄ってくる大型の猫科の猛獣の足が見える。
オレンジに近い赤い毛並みにトラ柄、頭部からお尻にかけて
真っ白なモヒカン状の毛がついている。サラマンダータイガーである。
メルティピッグの丸焼けにかぶりつき、のどをゴロゴロと鳴らしている。
「美味しいか~い、ベイベェ~」
ガルルルル~・・・食べるのをやめた
サラマンダータイガーは声のする方に顔を向ける。
ゆっくりと体を動かしながら、顔は威嚇の表情。食事を邪魔されご機嫌斜めのようだ。
口から漏れ出る炎。ガオーン!咆哮と同時に大口を開け炎を吐いた。
炎が一直線に声の主へと放たれる。
何かが炎を切り裂きサラマンダータイガーの口からお尻までを串刺し、
突き抜け壁にささる。ビイイイイン!壁に刺さった棒のようなものが振動している。
その場に倒れ絶命するサラマンダータイガー。壁に刺さった棒を引っこ抜きながら
「スターライトランスのお味はどうだったかい、ベイベェ~」
二人の部下らしき男が彼の背後でひざまつく。
「ドグマ様、洞窟内の作業、完了いたしました」
額の上から飛び出るリーゼントは20センチ、いや30センチはあるか。
ちりちりの長いもみ上げ。エルビス・プレスリーを彷彿とさせる白い衣装。
腕の下はヒラヒラのひも状の飾りが付いている。
武器はスターライトランスと呼ばれる槍。魔槍士と呼ばれる所以である。
そう、この男こそが魔王親衛教会の変人こと魔槍士ドグマである。
「よし、帰るとするか、ベイベェ~」
振り向くとドグマは右側の部下の首をスターライトランスではねた。
「ドグマ様、何を・・・」
もう一人は槍の棒の部分で首の後ろを叩かれ、脳震とうを起こし気絶した。
「残ねーん、お前達もこの実験の一部なのさ、ベイベェ~」
気絶した部下を蹴り上げ仰向けにし、
試験管の中で動く10センチほどの紫色のナメクジを口の中に流し込む。
首をはねた部下の上にも紫色のナメクジを落とす。
20センチくらいのプラスチック定規のような櫛で
リーゼントを下から上へかき上げながら
「半年後この洞窟でどんな変化が起こっているか、楽しみだぜぇ~ベイベェ~」