43.二枚のドア
「ふぅ、寒い寒い。」そう言って帝国軍の兵士は屋内に入ろうとする。ドアを開けるともう一枚のドアにぶつかる。
もう一枚のドアを開け家の中に入る。中には部隊の仲間たちが休憩している。
「なんで北部の家には扉が2枚あるんだ?」兵士はドアにぶつかった肩をさすりながらボヤく。
「北部人は馬鹿だから家を建てた時にドアをつけたのを忘れてもう一枚つけるんだよ。」
お調子者のジョークに二、三人が笑う。
「どうだった?」隊長が兵士に尋ねる。
「使えそうなやつは憲兵に引き渡しましたよ。」
「そうか。わかった。」隊長は頷く。
「俺らはここで何するんです?」
「待機だ。」
「待機?こんな寒いところで?」お調子者が嫌そうな顔をする。
「そうだな。さっさと帰りてえよな。」隊長が同意する。
帝国軍は北部連合が守備するアリョーシャ峡谷を予定よりも早く少ない損害で突破することができた。帝国軍は峡谷の先にある北部の村や都市を次々に攻略している最中であった。
峡谷が予想よりも早く突破された北部軍は十分な防衛体制を整えることができず、各都市の防衛はそこに住む勇気ある者たちが武器になりそうなものを持ち寄って市街で抵抗する程度にとどまった。当然それらの抵抗は数と装備で勝る帝国軍に一蹴された。
この部隊も、村をやすやすと制圧し抵抗しそうな者は皆憲兵に引き渡した。
「本隊が北部の主力軍を打ち負かすまで俺らは後方における不安の元を消しておくしかない。」隊長は呟く。
「さっさと決戦に持ち込めないんですかね。」別の兵士が言う。
「奴らは決戦を先延ばしにするために町の警備を放棄してずるずる下がり続けているからな。」
「意気地無しめ!」お調子者が大きな声を出す。
「いまごろ兵士を集めてるんだろう。集まったところで決戦だ。」別の兵士が言う。
「だが、こっちもあまり余裕がない。一戦で決まるぞ。こっちも向こうもチャンスは一回。舐めてると痛い目に遭う。」隊長はそう言って前回の北部侵攻参加者にのみ与えられるバッジを撫でた。




