42-1.奢り
「うわ!くっさ!」チャックはいきなりうしろから顔の前に現れた手からツンとした臭いがしたので驚く。
「って、ロス?」後ろを振り向くとロスが立っていた。
「なに?その臭いの?」チャックは怪訝な顔をする。
「獣避けの香水だけど。びっくりした?」ロスはイタズラっぽい微笑みを浮かべる。
「びっくりしたよ本当。こりゃあ獣も逃げるな。」チャックは苦笑いする。
「そう?南部の男はこの臭いに惹かれるって言われてるけどね。」ロスはわざとらしく首を傾げる。
「それ本当?」チャックが尋ねる。
「どうなんだろうね。」ロスはわからないというジェスチャーをする。
「知らないのかよ。で、何の用だ?匂いを嗅がせたいだけじゃないだろ?」
「修理された弓を取りに行きたいの。ついてきてくれない?」
「弓?ああ、あの伸びるやつか。」
「そう。特注品だから自分で修理もできないし時間もかかるの。だから二週間くらいかかったってこと。」
「自分で整備できない武器を持つなよ…」チャックにど正論で殴られたロスは一瞬ぴくりとする。
「とにかく、取りに行きたいから着いてきて。私が近接戦に弱いのはよく知ってるでしょ?道中でなにかあったらどうするの?」
「今日じゃなきゃダメか?」
「夕食奢るよ?」
「よし、行こう!」
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「はいこれ、ちゃんと直しといたよ。」修理屋の老人が複雑な機構の弓をロスに渡す。
ロスは機嫌良く弦を弾くと、弓を長弓型に展開する。綺麗な所作で弓を引き絞る。
ビィィィン。弦が良い音を立てる。
「ありがとうございます。代金は総督府に請求してください。」ロスは早口でそう言うと何やら紙切れを渡してチャックのそばにくる。
「行きましょう。」ロスは手招きする。
「何食わせてくれるんだ?」チャックはにやにやしながらロスの顔を覗き込む。
「好きなものでいいよ。」
「とはいっても南部の料理はよくわからん。」
「じゃあ私が鶏肉を焼こうか?」
「やだ。」
「酷すぎ。」
「すまん…」
「いいのよ。私の料理は栄養を取れればいいと思って作ってるものだから味は二の次なの。…シルヴィアなら美味しい料理の作り方知ってるかな。」
「めちゃくちゃ気にしてるんじゃねえか…あと、シルヴィアが料理してるところをみたことはないな。ヒデオの方が詳しい。でもあいつ変な料理しか作らないからな。うまいけど。」
「結局何が食べたいの?」
「おすすめは?」チャックは尋ねる。
「おすすめか…」ロスは考え込む。




