40-2.共謀
村の真ん中にある大木の上に座っていたロスは下から嫌な音が聞こえたので下を見る。
「マーカス、そこで小便をするな。」ロスは不機嫌そうに言う。
「いいだろ?この木は俺の小便を吸って大きくなったんだ。」
「矢の雨を降らすぞ。」
「おお、怖い。」そう言ってマーカスは出したものを仕舞う。
「それでロス?お前はこの結果に満足か?」マーカスはロスを見上げながら言う。
「私はただ職務に忠実なだけだ。」
「へへっ、とぼけちゃってねえ。口元を隠しても目は口ほどにものを言う。満足そうな笑顔は隠しきれていない。」マーカスはロスを指差す。
「だったら何だって言うの?」ロスは表情を変えずに言う。
「忠告しておいてやろう。お前の仕組んだ舞台、ここまでは極上だ。よくここまで望む形に持ってきた。だが、お前の計画は失敗する。」
「なんだと?」ロスはマーカスを睨む。
「謀略ってのはな、そういうのが当たり前に起こる環境で陥れ陥れられを経験してきたやつが長い間計画を練って仲間を集めてトライアンドエラーを繰り返してやっと成功するもんだ。お前のようにロクな教養も経験もない、命令通りに人間を射殺すしか能のない奴隷階級出身のお前が復讐心から策を弄したところで、動かせるのは俺とお前の仲間三人だけだ。今お前は上手くいったとほくそ笑んでいるだろうが、お前の思った通りにはならん。」
「ずいぶん酷い言われようだな。」
「事実を言ったまでだ。自分の実力を過信しすぎるやつはどこにでもいる。自分が頭の切れる軍師だと勘違いして無様に死ぬやつを大勢見てきた。親切心から忠告してやってるんだぜ。」
マーカスはニヤリと笑う。
「それはどうも。」ロスは不機嫌そうに言う。
「不機嫌になったからって俺を射つなよ!」そう言ってマーカスは小走りで村長の家に入って行った。
「失敗する…か。」ロスは静かに呟いた。




