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36-3.報復

 私の母さんは王都の奴隷だった。そこで主人と子供を作った。それが私。でも、私がまだ母さんのお腹の中にいる時に、帝国は外国にいい格好をするため奴隷開放令を出した。それで、奴隷たちは王都で市民権を得るわけではなくただ職を奪われ放り出された。職の無い元奴隷たちが生きるために南部に渡るのは自明の理だった。


母さんは妊娠したまま南部までの長い道のりを歩いた。南部に渡った母さんは農家で働いた。奴隷という身分ではなかったけど立場は何も変わらなかった。

そして私が産まれた。私は肉を取るために六歳の頃から弓を扱い始めた。それで母さんに楽をさせてあげたかった。栄養って大事でしょ?


それで私が10歳になった頃、村が反乱軍に襲われた。反乱軍のリーダーが私たちの村に物資を差し出すよう求めた。でも村長はそれを拒んだ。これ以上取られると皆飢え死にしてしまうってね。

その日は反乱軍はすぐ引き下がった。みんなホッとしてたのを覚えてる。

だけど次の日の夜。奴らが報復にやってきた。村は焼かれた。私も焼けた材木が肩に落ちて大火傷を負った。母さんは自分も燃えているのにも関わらず私の火を消した。そして私の手を引いて逃げようとしたけど、結局足の遅い私を庇って殺された。

そして私も捕まった。


私は火傷していたけど、この通り美形だったから、反乱軍の性処理具にするために生きたまま連れて行かれた。

でも、反乱軍にもいい人はいる。不憫に思ったある弓兵が私を引き取って治療もしてくれた。

だから私は彼の元で殺されないために必死に弓の鍛錬をした。とにかく死にたく無い一心でね。

でも、私を引き取った男も非協力的と非難され粛清された。それどころか、彼の命を私に奪わせた。断れば私も殺される。私は死にたくなかった。だからこの手で恩人を殺したの。

それからも私は死にたくなかったから反乱軍として大勢の帝国軍兵士や”非協力的な人たち”を言われた通りに殺した。何度も何度も。何人も何人も。毎日飽きもせずね。

16歳になった頃、私は反乱軍でも一番の射手だった。

そんな私に新たな指令が来た。

南部総督オームの暗殺。総督の警備は厳重で簡単には近づけなかった。でも、その時にタイミングよく総督のボディーガードを募集していた。だから私は経歴を偽って応募した。

当然私は優秀だったから合格した。

総督は南部の生活が苦しい諸悪の根源だ。総督を殺せば全てが良くなる。

私はそう信じて総督府で機会を伺っていた。幸い総督は私を気に入ったのか常にそばに置いてくれた。でも、なかなか計画を実行できずにいた。なぜなら総督の隣には常に秘書がいたからだ。悪なのは総督であって秘書ではない。私たち反乱軍が求めているのは悪の帝国による支配からの開放と自由で平等な社会の実現だった。無関係の人を巻き込むのは反乱軍の方針に反する。

だから私は手を出さなかった。

非協力的な人を殺しておいて自分でもよく言うと今になったら思うけどね。

でも、ある日チャンスが訪れた。総督が私を呼んだの。渡したいものがあるって。二人きりになろうって。


私は毒を塗った短剣を二本隠し持って総督の執務室に入った。

すると、総督は私に紙包をくれた。包みを開けると、そこには鮮やかな赤色に染められた艶のある絹のスカーフが入っていた。


「ロス。お前が首元の傷跡をスカーフで隠しているのは知ってる。それはお前の決めたことだからそれでいい。だが、お前は総督の護衛だぞ?動きやすい服は構わんがせめてふさわしいものを一つくらい身につけろ。護衛の者がそんなボロボロの布切れを巻いていてはでは私の威厳に傷がついてしまう。それに、派手な色だとお前が気にしている傷跡に目がいきにくい。…あと…あれだ。お前くらいの年頃の女の服は派手すぎるくらいが丁度いいんだ。その、嗜みだぞ。」総督は目を泳がせながらそう言うとすぐに仕事に戻った。

私ははじめて人からもらった贈り物をまじまじと見つめた。鮮やかな赤色だ。

試しに首に巻いてみる。

初めての贈り物はとても肌触りがよかった。


「それで、結局その日は総督を殺せなかった。そして次の日も、そしてその次の日も。結局私は昔忌み嫌った帝国の犬になった。でもいいの。贈り物ももらえたし、村のみんなとも仲良くなったし。」ロスは赤いスカーフを撫でながら人生を語り終わった。


「そうだったのか。」チャックは下を向いたまま返事をする。

「ごめん。長かったよね。…どうしたの?」

ロスは目を合わせようとしないチャックを不思議そうに見つめる。

「あ、いや、あんまりその感情が昂って傷口が開かないかなって。」

内心では、あぶねえ!その大事なスカーフを止血に使おうとしてた!と思っていた。

「チャック?」ロスは不思議そうにチャックを見つめる。

「あ、いや。なんでもない。」チャックは目をそらす。

「まあいい。もう帰ろう。」ロスは呟く。

「そうだな、十分休めただろ。医者に見せないと。歩けるか」

チャックはロスに手を差し伸べる。

「どう思う?」ロスはあり得ない方向に捻じ曲がった自身の足首を指差した。


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