36-2.報復
彼女を押さえつける大男の頭がザクロのように飛び散る。
抑えられていた口が開放される。大男は倒れ込む。
ハンマーを振り抜いた体制で見たことのある男が立っていた。確か財務省職員に同伴していた男だ。
「なんだお前!」反乱軍三人が盾を構えて飛びかかる。
ハンマーの男は無言でハンマーを横凪に振る。盾が砕けて三人は吹き飛んで動かなくなる。
「退くぞ!退くぞ!」反乱軍兵士たちは情けない声をあげながら散り散りになって逃げ去る。
男は敵が見えなくなるのを確認するとこちらに向き直る。
「無事か?」大真面目な顔で尋ねてくる。
返事をしようとしたが上手く声を出せなかった。
「痛っ!」ロスは叫ぶ。深呼吸をする。
「もっと優しくやってよ。」涙目になりながら肩に止血のため巻かれた布を撫でる。
「おぉ、すまん。」男は水をかけられた猫のように縮こまる。
「謝らなくていい。その…ありがとう。」ロスは目をそらす。
「ああ。」男は目をそらす。
「なんで来たの?」男に尋ねる。
「いや、なんとなくついて行ったんだ。」男は曖昧な返答をする。
「名前は?」
「チャールズだ。チャックって呼んでくれ。」男は答える。
「そう…ねえ、チャック。」
「何だ?」
「あの赤いスカーフ。取って来てくれない?大切なものなの。」
チャックがスカーフを拾うと土を払ってからロスの首に巻く。
「これでいいか?」チャックは尋ねる。
ロスはすぐスカーフで口元を隠す。
「これでいい。ありがとう。」ホッとする。
「別に言いたくなかったならいいんだが、何でそんなに顔を隠したがるんだ?」チャックは尋ねる。
「はぁ…言いたくけど、命の恩人だから教える。」
ロスはそう言ってスカーフを緩めて、インナーのタートルネックをずらして首元を見せる。
そこには深い火傷の跡があった。
「見られたくないから。」ロスは呟く。
「かなり深い火傷だな。」
「そう。昔反乱軍にやられた。」そう言うとロスは逃げるように首元を隠しスカーフで口元を覆う。
「あいつらか。」
「今は街まで帰る気分じゃ無いから昔話に付き合ってくれる?」
「ああ。聴くぜ。」チャックはあぐらをかく。




