34-3.南部
お茶がおいしい。
南部は比較的温暖な地域だ。日本ほど暑くはないとはいえ、いままでは冷涼な気候の王都にいたこともあり想像以上に身体は水分を欲していた。こういうかんじで熱中症とかになるのかと思った。麦茶のようなお茶で、どうやったのかは知らないがキンキンに冷えていた。おそらく魔術でどうにかしたのだろう。ここはそういう世界だ。
ロスさんも後から来てお茶を一気に飲み干していた。
「いやいや、今回は徴収に来られたのかと思いましたよ全く。」
村長は苦笑する。
「徴収は彼らの仕事ではありません。彼らは王都と南部の落とし所を探しに来ています。」
ロスさんが後ろから村長に伝える。
「私たちは南部との関係改善のため財務省に派遣されました。」
シルヴィアも答える。
「それはよかった。ついに王都も我々の声に耳を傾けてくれるようになったのですね。」
村長は頷く。
「はい。王都に住んでいると南部のことはあまり知る機会がありませんから。」
シルヴィアが言う。
「そうですね。訊きたいことがあれば何なりと。」
村長は微笑む。
「では一つ質問があります。村長殿は違いますが、北部訛りの方が半分くらいいらっしゃいますね。どうしてですか?」
「あぁ…」
村長は顔を伏せる。
「どうかされましたか?」
シルヴィアは尋ねる。
「なるほど。知られていないのですね。王都では…。いいでしょう。彼らは北部から農業のため連れて来られた奴隷ですよ。」
「ど…」
シルヴィアは絶句する。
「奴隷?!」
チャックも顔をしかめる。
後ろで腕を組んで扉にもたれかかっているロスさんは俯く。
「帝国は奴隷制を廃止したってきいたが?」
チャックは質問する。
「そうですね。王都の奴隷は皆解放されました。特にお二方は奴隷の存在など知らなかったでしょう。ですが、奴隷解放と共に王都から追い出された奴隷や、反乱勢力に加担したとされた者たちは根こそぎ南部に送られました。それが彼らなのです。」
「なるほどね。王都の食い物が安いのはそういうカラクリだったか。」
チャックがため息をつく。
話の要点はこうだった。南部にいるのは南部に元々住んでいた人々だけではなく、北部から連れて来られた奴隷や、奴隷解放により王都から追い出された元奴隷たちも大勢おり、さらに彼らは成果物の六割近くを税として帝国に納めている。また、北部での戦争も相まって税率も上がる見込みであるということだった。




