34-1.南部
南部首都ニューエルゼン
俺たちは南部の事実上の首都であるニューエルゼンに到着した。
王都は全体的に白かったが、ここは迷宮都市のような茶色い街だ。王都のような壮観さはないが俺にはこちらの方が落ち着く。要は地方都市だ。
「暑いね。」
シルヴィアは不快そうな顔をする。
「そうですか?」全然涼しいと思いますけど。」
盛浜市の最高気温は40℃だ。
「とりあえずここの総督に会うんだろう?」
チャックが言う。
街の中央にある総督府に入る。事前にアポを取っていたためスムーズに入ることができた。
・・・・・・・・・・・・
「ようこそ!お越しいただきましたか。ありがとうございます!」
腰の低い髭面の初老の男性が挨拶して来た。彼が南部総督のデイビット・オームらしい。なんとなくいい人そうだ。
「最近はこっちも色々と大変でね。反乱勢力は力をつけるのに、こっちに配属される兵士はやる気がなくてですね。本当困りますよ。」
「それで…」
シルヴィアは言いかける。
「ええ。わかっていますよ。詳しいことは大臣より伺っております。私も総督ですから一介の財務省職員を出迎えることはない。反乱勢力の内部崩壊、ですよね?」
急にオーム総督の眼光が鋭くなる。
「はい。それで相違ありません。」
シルヴィアは答える。
「まあ、まずはここの街を知る必要があるでしょう。総督として許可を出しますので、好きなところを見て回るとよろしいでしょう。」
オーム総督は笑顔で頷く。
「あと、みなさんここは初めてのようなので案内役をつけましょう。」
総督はそう言ってドアに向かって目配せする。
ドアが開く。
長い髪を後ろで縛って、タートルネックのようなインナーに革製の上着を着たスレンダーな女性が部屋に入ってくる。
入って来た女性は目を細めて俺たちを観察する。
「…」
挨拶でもあるのかと思ったが、彼女は俺たちを睨んだまま動かない。
「いや、すまない。彼女は人と喋るのが苦手なんだ。」
総督は苦笑いする。
案内役のコミュ力がこれというのはどうなのかと思った。
「彼女の名前は…えっと…自己紹介くらい自分でしろ!」
総督は頭を掻く。
「えぇ…」横にいた秘書風の女性が呆れる。
「喋らないもんこの子…」
「はぁ…」
秘書風の女性はため息をついて部屋から出て行った。
しばらくすると女性が戻ってくる。
案内役の女性の首に灰色のスカーフを巻く。そして手に弓を持たせる。そのままスカーフを持ち上げて口を隠す。
「あ、えっと、ロスです。」
「この子はロスって呼んであげて。この子、武器を持たせてスカーフで顔を半分隠してあげると気が大きくなって饒舌になるの。」
秘書風の女性はニコニコしながら言う。
言うほど饒舌か?と疑問に思う。
「そうです。こんなかんじですが腕は立ちます。案内役にも護衛にも使えますよ。」
総督は頷いた。




