30-1.王都ショッピング
王都最大のショッピングモールを知っているだろうか。
ショッピングモールといっても日本にあるような大型商業施設とは少し違う。
街の中心部にはかつてコロッセオのような巨大な闘技場があった。建設当時の帝国は魔術全盛期であったこともあり、ローマのコロッセオとは比較にならない大きさの闘技場がある。
しかし60年前、時の皇帝が殺し合いは野蛮であるとして禁止してしまった。しかし、帝国の象徴である大闘技場は残したいということで、市民の手によって劇場や大規模な食堂などを備えた大型商業施設として生まれ変わったのである。
「へえ、そんな過去があったんですね。」
俺は感心する。
「話にはきいていたが間近で見ると凄いな。感動する。」
タダヒロは涙ぐんでいる。
「泣くほどか?」
チャックは困惑する。
「さっさと入ろう。今の私たちは軍に追われる立場じゃない。束の間の王都を楽しもうじゃないか。」
シルヴィアが俺とタダヒロの背中をバンバンと叩く。
「そうだな!中がどうなってるか楽しみだ!」
タダヒロはクロエと一緒にモールに飛び込んで行った。
「俺たちも行こう。昼飯は公務員さんに奢ってもらおう。」
チャックも言うので俺たちも中に入った。
「おお!すごい!」
俺は思わず大きい声を出す。
巨大な闘技場をベースにまるで年輪のように店が何重にも並んでいる。それに地図を見る限りそれが四層ある。
さらに、二階と三階は劇場となっておりさまざまな演目が行われている。今日の演目は前回の北部侵攻の話のようだ。
一階には多数の料理店が並んでおりなんとも言えない匂いがする。
見慣れたような料理から見たことのない色とりどりの料理が売られている。
「すごい…」
俺は言葉を失う。
「王都は金持ってんだな。」
チャックは周囲を見渡しながら呟く。
「豊かさの象徴よ。」
財務省職員のシルヴィアは得意げに呟く。
「帝国は金もないし潰れかけってきいてたから、王都はもうちょっと陰気で卑屈なところだと思ってたがそうでもないんだな。」
「王都だけは豊かなのよ。だけはね。」
いつの間にか後ろにいたクロエさんが言う。
「一極集中ってやつだな。」
タダヒロが後ろで頷く。
「とりあえず上の階で買い物をしよう。」
シルヴィアは俺とクロエさんの背中を押して階段まで連れて行く。この巨大なショッピングモールがあるのが日常であったシルヴィアにとってはこの建物すごい談義は退屈なのだろう。
結局俺たちは二階に上がる。
二階には衣類や装飾品などを売る店がずらりと並んでいる。
「百貨店みたい。」
俺は呟く。
「あの帽子みてくる。」
「私も行く〜」
女性陣は楽しそうに帽子を見に行った。




