29-4.増税
「おお、すごい。今年の合格最低点だね。」
大臣は愉快そうに言う。
「聞いたか?合格だぞ?これで私が教養溢れる優秀な魔術師であることがわかっただろう?」
シルヴィアは得意げに俺の肩を突く。
「まあ、俺の方が点数高いんですけどね?」
俺はなぜかシルヴィアより二点だけ高得点の答案用紙を彼女に見せる。
「なんで?!」
シルヴィアは頭を抱える。
「写し間違えたところが正解だったんですかね。」
「間違ってたらどうする気だったんの?ちゃんと写せ。」
「ごめんなさい…」
「ミス・リズバーチは古語が得意なのかい?ほとんど満点だが。」
大臣は驚いたような顔をする。
「誰かさんのせいで古語の文献を大量に読みましたからね。」
シルヴィアは眼を細めて大臣を見る。
「感謝してくれていいぞ。ともあれ君たちは合格。財務省の一員として迎えよう。」
大臣は立ち上がると懐から2枚の封筒を出した。
「そして、君達に辞令を出す。」
大臣はかしこまって俺たちに封筒を渡した。
・・・・・・・・・・・・・・・
ギルドのエントランスにて。
「ここの答えってカルロスの灰だよな?」
タダヒロが試験の問題を見ながらクロエに聞く。
「ああ、そんな故事あったわね。」
クロエが思い出したような顔をする。
大人たちは気楽なものだ。大学入試テストの翌日に新聞に載った問題を「あ〜、もうこんなの忘れたわ〜。」などと言いながら解いてすぐ飽きてやめるあれだ。
「南部への異動。実質左遷よね。」
シルヴィアは辞令をみながら不機嫌そうに呟く。
「まあ、王都育ちにとっては、東京在住だった学生が新社会人として宮崎に配属されたようなもんだからな。」
試験問題に飽きたタダヒロが心底同情してるような顔で言う。
「宮崎になんか恨みでもあるんですか?」
「大学の学部が一緒だった東京出身の奴が大手に内定出た!って自慢してたけど宮崎に配属されてすげえ悲しそうな顔してたから。」
「南部って宮城みたいなかんじなんですか?」
「宮城も南部も行ったことないからわからん。」
「南部はね。見渡す限り畑よ。収穫期なんてもう絶景だから。」
クロエがうっとりした表情で言う。
「やっぱり地方勤務なんですね。」
俺は再確認した。




