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29-3.増税

「以上がこちらができる支援だ。」


大臣は言い終わる。


「かなり手厚いな。」


俺はよくわからなかったがシルヴィアとタダヒロは理解したのだろう。


「後一つ。いいかな?」


大臣はこちらに質問する。

俺とシルヴィアは頷く。


「君たちには財務省に入ってもらう。」


大臣は言った。


「「え?」」


俺たちは困惑する。


「俺は昔ペトロバツから警察権を引き剥がそうとした時、目標は達成できなかったが、奴にある条件を飲ませることができた。それは、軍が役人を拘束する場合、所属する省のトップからの許可が必要というものだ。つまり、私が首を縦に振らない限りは軍は君達に手出しすることはできない。どうだ?軍の暴走を未然に防ぐ私の先見の明を称賛してもかまわないぞ?」


大臣はドヤ顔で言う。


「そういう前例でもあったのか?」


タダヒロが口を挟む。


「さて。やるか?やらないか?」


大臣は話を逸らした。


「やろう。私たちは財務省に入る。」


シルヴィアは力強く言い放つ。


「いいね。度胸があるね。」


そう言って大臣は俺とシルヴィアに紙束を渡す。

「これはなんですか?」分厚い紙束を持ちながら俺は質問する。


「なにって。官吏登用試験だけど?」


大臣の言葉に俺たちは青ざめた。




ある古いアニメの歌詞には、おばけには試験がないといった内容の歌詞がある。

だが、異世界にはある。

異世界では試験から逃げられると思っていたが大きな間違いであった。正直、大学入試の勉強が嫌でこのまま異世界に骨を埋めようとも考えはじめていた俺にとって、異世界にまで試験が追いかけてくるというのは想定外であった。

普段死にかけたいしない限り平静を装っているシルヴィアも明らかに動揺している。


「これは、とりあえず何か書けば合格できますよね?」


俺は恐る恐る尋ねる。


「そんなわけないだろ。ちゃんと合格しろ。何百年も積み上げてきた官僚機構をなんだと思ってるんだ。」


と真面目に説教された。


「まあ、二人とも合格すればいい。試験中私は離席する。多少不正されてもわからないだろうな。ちゃんと二人で合格点取れよ。じゃあ。」


そう言って大臣は部屋を出た。


「ととととりあえず落ち着いて問題を解こう!」


シルヴィアが言う。お前が落ち着け。


「まあ、いきなり国家公務員試験を受けろっていわれてるようなもんだもんな。」


タダヒロは哀れみの目を向ける。


「歴史ならいけるだろ?タダヒロ?」


シルヴィアは目が泳いでいる。

「いやあ、この国の歴史の問題て神話とかそっちであって、俺が詳しいのは一次資料とか考古学的発見とかを繋ぎ合わせた歴史であってこういう系の歴史は俺あんまりわからないんだわ。教養とかもネイティブには劣るし。っていうか、俺試験問題解くと帯状疱疹が出るんだよね。」


「使えねえ!」


「シルヴィアさん!俺最近勉強してるんでできそうなところだけやりますよ!」


俺はそう意気込んで解けそうな問題を探す。


「頼んだぞ!」


シルヴィアは親指を立てる。


「すいません。何もわかりません!」


「なんでだ!」


「クロエさん?」


シルヴィアはすがるような目でクロエを見る。


「200年勉強してないわ。ごめんね。」


申し訳なさそうに頭を下げる。


「どうすれば…」


シルヴィアは頭を抱え込む。


「おい、なんで俺に頼らねえんだ?」


チャックが真顔で言う。


「できるのか?」


シルヴィア藁をも掴むといった様子でシルヴィアはききかえす。


「できない。」


チャックは断言する。


「わかった。じゃあ私が解く…ヒデオ、写せ。」


弱々しく呟くとシルヴィアは無言で問題を解き始めた。

人の宿題を写すのは得意だ。

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