29-1.増税
俺たちは王都にいた。
なぜ?と思うかもしれないが、とにかく王都まで戻ってきたのだ。
大丈夫なのかと思うかもしれないが、今回の俺たちは前のように無力ではない。
まずチャックがいる。用心棒としてはこの上なく頼りになる。さらにタダヒロとクロエもいる。なぜ彼らがいるのか説明すると、タダヒロが王都に行きたがったからだ。そういえばまだ彼は王都に入ったことがなかった。彼としては、軍が出払っている間に異世界の首都を見ておきたいのだろう。その付き添いでクロエも付いてきた。
シャルロッテの手助けで上手く王都に入ることができた。
「シャルロッテさんになにかお礼しないとですね。」
「そうだね。ギルドの製品詰め合わせセットとか送ろうかな。」
「俺の書いた本も入れといてやってくれ。」
「だめ。」
「酷い!」
王都を囲む城壁を無事抜けて市街地に入る。
「うおおおお!!!すげええええ!!!!」
タダヒロが絶叫する。
「うるせえな!」
チャックがキレる。
「すげえ!白磁のような街並みだ!ここの石積みとかすごいな。まるでクスコの石垣みたいだ!」
タダヒロが古い建物のものと思われる石垣をつぶさに観察する。
「クスコってなに?」
と無邪気に言いかけたシルヴィアの口をクロエさんが塞ぐ。
「待って。二時間インカ帝国の話を聞きたくないなら質問するのはやめなさい。」
シルヴィアは青ざめる。
「クロエさんは俺よりこっちの世界の歴史に詳しそうですね。」
俺が苦笑いする。
「そうかもね。でも、彼と結婚した時に覚悟は決めてるわ。」
遠い目をする。
「そう潤沢に時間があるわけじゃない。急ごう。」
シルヴィアが呼びかける。
俺とクロエさんは頷く。
「ほら、急いでんだ。行くぞ!」
チャックが暴れるタダヒロを引きずりながらついてくる。
街の外れにある古い建物。今は財務省の末端機関が事務所として使っている。
中に入ると大柄の男性が挨拶をしてきた。
「納税最高。」
シルヴィアは男に向かって言う。
「徴税最高。」
そう言って男は頷くと手招きしてきた。階段を上がり三階の角部屋の前に案内される。
「来られました。」
大柄の男はドアに向かって言う。
「通せ。」
奥から男の声がする。
男がドアを開けどうぞと手で合図を送る。部屋に入るとそこには40代くらいの男が座っていた。
「増税は?」
男は真顔でシルヴィアに問いかける。
「歓迎。」
シルヴィアも真顔で答える。
「よく来てくれた!」
男は一瞬で笑顔になる。
「なんだあの合言葉は。」
シルヴィアが突っ込む。
「合言葉としては上出来だろう。他にあんなこと言うやつなんていないからな。」
座れと言うように椅子を指差す。俺たちは椅子に座る。
「さて。自己紹介から始めようか。私はこの帝国の財務大臣のニコロ・ガルアノス。よろしく。」




