28-2.タダヒロズキッチン
「ラーメンになるはずだったんですが…おかしいですね。」
「どう考えてもうどんになるだろ!」
タダヒロは盛大にツッコむ。
「まあ、俺関西出身なんで、しょうがないですね。」
「なにがしょうがないんだ!っていうか、和風異世界出汁ってなんだよ!」
「でもクロエさんは日本料理を食べたいんでしょ?じゃあうどんでよくないですか?」
「うーん。言われてみればそんな気もする。よし、決めた!うどん作ってくれ!」
「自分で作らなきゃ意味ないでしょ。」
「まあ、そうだが。」
タダヒロは頷く。
「ちゃんとアドバイスするんで自分で作りましょう。ね?」
そう言うとタダヒロは無言で頷いた。
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「これが日本の食べ物なのね?」
クロエは椀の中を覗き込む。
「お、おう。うどんって言うんだ。」
タダヒロは目を逸らす。
「へえ、食べてもいい?」
クロエは目を輝かせる。
「お、おう。早く食べないとのびるからな。」
タダヒロは気まずそうだ。
「じゃあいただきます。」そう言ってクロエはベチョっとした麺を食べる。
数分前
「プッ。」
チャックが吹き出す。
「はいチャック、笑わない。」
俺が注意する。
「わかった。すまん。」
そう言いながらチャックは後ろを向いてピクピクしている。
タダヒロが作ったのはうどんとは言い難い何かであった。強いて言うならすいとんに近いものだ。英雄自身しっかり監修してサポートしたのだがどういうわけかこうなった。何故だ?と思ったが真相は不明だ。圧倒的経験不足とかセンスとかそのあたりの問題なのだろう。
「ははは、なんか変なことになったな。やっぱり俺料理下手なんだ。」
タダヒロは笑いながら言っていたが目は笑っていなかった。
「まあでも、味さえ良ければこんなのどんな形状でもいいんじゃないか。」
そう言って味見したシルヴィアからみるみる表情が消えていく。
「使った材料は同じのはずなのにどうしてここまでの差異が出るんだ?興味深いな。」
研究者魂をくすぐる味だったようだ。それ以上コメントするのはやめろとシルヴィアを遠くに追いやる。
「ははっ、これ捨てて作り直すか…俺を。」
とタダヒロがどん底まで落ち込んだので俺は懸命にフォローした。
「味より誰が作るかが問題だと思いますよ?タダヒロさんの作った料理を食べたいってクロエさんが言ってたんでしょ?じゃあこれでいいんじゃないですか?」
必死の説得でなんとかテーブルで待機しているクロエにうどんを出すことになった。
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一口食べたクロエは無言でもう一口食べる。途端に目から涙が溢れる。
「えっ、あっ、いや、その、不味かったら残してもいいんだよ。」
タダヒロは聞いたこともない猫撫で声でクロエと俺たちを交互にみながらあたふたする。
クロエはしばらくして涙を拭った後優しい口調で話し始めた。
「違うの。不味いとかじゃないの。嬉しいの。実は私、みんながうどん作ってるところこっそり見てたの。それが本当に微笑ましくて。私のために、普段全部自分でなんとかしようとするタダヒロが仲間を頼って慣れない手つきで料理してるのが嬉しくて…」
こう言いながらクロエはタダヒロに抱きつく。
「クロエ…」
タダヒロの不安そうな表情が消えていく。
「ありがとう。優しいんだな。」
そう言ってクロエの頭をポンポンと軽く触る。
「タダヒロ、ありがとう。」
「次はもっと美味しいの作れるように頑張るよ。」
二人は抱き合っていた。
先程まで彼の調理スキルを嗤っていた俺たち三人は敗北感から白い灰になった。
最強の赤い鎧で異世界生活(完)
「まだ終わらないぞ!」
ウィズバンが叫んだ。




