26-2.出所
風呂に入った後俺は部屋に戻った。暗かったので明かりをつける。
とりあえずタダヒロがくれた本を見ながら文字の練習をする。現状文字が読めなくてもある程度なんとかなっているが、もし何かあって一人になった時困ることになる。俺自身小学校3年生の時一人で電車に乗って買い物に行こうとしたのだが寝過ごしてしまい知らない駅で降りて大変な思いをしたことがある。この世界ではそんなことにならないように文字を読み書きできるようにならなければならない。
「ちょっといいか?」
何処かから声がする。
「誰ですか?」
俺は辺りを見回す。
「俺だ。」
ランプの火が暴れ出す。
「ウィズバンさん!」
「久しぶりだな。」
「最近話してなかったですね。どうしたんですか?」
「いやあ、お礼を言っておこうと思ってな。」
「何かやりましたっけ?」
「あれだよ。なんだっけあの黄色くて甘いの。」
「プリンですか?」
「そうそれ。あれ作ってやってありがとうな。あいつ素直じゃないから黙って食ってたけど内心喜んでたぜ。」
「そうだったんですね。ほんと素直じゃないですね。」
俺とウィズバンは苦笑する。
「また食いたいって言ってたよ。」
「そうですか。まあ、甘いもの食べると落ち着きますからね。」
「人間はそういうもんなのか。俺にはよくわからん。」
「精霊に味覚はないんですか?」
「あるぞ。」
「あったんですね。」
「後一つ伝えたいことがある。いいか?」
「なんですか?」
「もしどうしても大きな力が必要になった時は俺のところに来い。俺の本体は北部の山の中にいる。どうしてもって時は俺のところに来い。」
「わかりました。けどなんで俺に言うんですか?」
俺は訝しんだ。
「保険だよ。」
そう言うとランプの火は普通の火に戻った。




