25-2.銀嶺作戦始動
「渡河部隊の損害も無視できなくなってきたな。あいつらはまだか…」
アームストロングは西の山を見やった。
ウスナス川は二つの山から流れる水が合流してできた川である。
そのうちの一つである上流のあるウスネア山は標高が高いことや、上位の氷の精霊がかつて存在したことから、この時期になると川が凍りつく。
それによりウスナス川を流れる水の量が減少し下流の村は困ることになる。
ウスネア山の川は深く大きな川であるが、この時期になると凍結してしまうのだ。凍結してしまえば深い川であっても歩いて渡ることができる。それが大規模な軍隊であってもだ。
ヴィルヘルム・マウザー大将率いる第一軍、第二軍は凍結した川を渡った後、裏どりを警戒して山道を塞ぐように建てられていた要塞めがけて一斉に突撃した。地を這うような大群が山を駆け下り要塞に殺到する。
要塞の警備を担当していた中隊規模の部隊は瞬く間に粉砕された。
その勢いのままマウザーの軍は西からアームストロング隊と交戦中の要塞の横っ腹を突くため動き出した。
ウスナス川攻防戦は一進一退の攻防を繰り広げていた。
一部の部隊は川の対岸に渡ることができたが直接高精度のバリスタなどで狙い撃ちされたため筏の防楯を被って防戦に徹していた。
「申し上げます!」
偵察に出した兵士の一人がプリニツキーの前に出る。
「ウスネア山の砦が突破されました!」
斥候の一言にプリニツキーは青くなる。
「まいったな。もう少し向こうに戦力を置いておくべきだった。それほどの大群で山を越えてくるとは…。」
プリニツキーは最も避けたかった事態に直面し頭を抱える。
このまま戦い続けても側面を攻撃されて壊滅は必至であった。北方連合は先の侵攻でのダメージから完全に立ち直れたわけではない。ここで全滅すれば北方連合の大きな戦力低下に繋がる。また後方には巨大な渓谷が存在する。そこで味方と合流して防衛体制を建て直す方が結果的に勝利につながるだろう。
幸い守りに徹していた国境守備隊の損害は大きくない。そのことからプリニツキーが出した答えは、挟撃される前に撤退することであった。
帝国軍は撤退する北方軍を追撃しようとしたが、少数のバリスタ兵や殿に阻まれ失敗した。
結果的に帝国軍は悠々と上陸し元々あった要塞を占領、マウザーの軍と合流して無事拠点を確保した。
帝国軍による北部侵攻作戦、作戦名「銀嶺作戦」の初戦は帝国軍の勝利となった。




