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25-1.銀嶺作戦始動

「いよいよお出ましだ。」


北方連合軍国境守備隊司令官のフョードル・アレクセイビチ・プリニツキーは川の対岸から現れた帝国軍の軍旗を望遠鏡で眺めると目を細めた。

北部と帝国領を隔てるウスナス川を挟んで北部連合軍と帝国軍が対峙していた。


帝国軍の渡河作戦を指揮するのは、前回の北部侵攻でも功績を上げ、南部の反乱に対しても連戦連勝の猛将アーウィン・アームストロング中将。帝国最強と言われる第三軍と第五軍を率いて渡河後橋頭堡を築き北部へのルートをこじ開ける重要な役割だ。


対する北方連合のプリニツキーは実戦を指揮したという記録こそないが、前回の帝国による北部侵攻でも防衛軍に加わっており実戦経験がある。彼はあらかじめ川の北方側に塹壕や柵、土塁などを張り巡らせ要塞化していた。一見帝国軍側の無謀な作戦に思えるが帝国軍側にも当然策がある。


「中将、川の流れが緩やかになりました。」


兵士が報告する。


「うむ。」


アームストロング中将は立ち上がる。


「銀嶺作戦、開始。!」



帝国軍の陣地の中をラッパの音が伝播する。帝国軍兵士たちは沸き立つ。


「士気だけは高いようだな。だが川は渡らせない。」


プリニツキーは呟く。


「進め、自走バリスタ部隊!」


号令がかかると帝国軍兵の壁の奥から20台ほどの動物に引かれた車が現れる。積んでいるのは攻城兵器であるバリスタだ。


「榴弾装填!」


指揮官の言葉に先の赤い矢を装填する。


「バリスタを使う気だ!何をしている射て射て!」


北方側の指揮官が捲し立て移動式バリスタに弓兵達が矢を射かけるが防楯に防がれる。そのままバリスタ兵達は弦を引く。


「バリスタ、放て!」


指揮官の声と共にバリスタから一斉に矢が放たれる。作戦に投入されたバリスタは大きな矢一本を射出するものと、小さな矢を10本同時発射する連弩のようなものがある。無数の矢が敵陣に向かって飛翔する。

「退避しろ!」北方側の指揮官の声が爆音によってかき消される。

バリスタから射出された矢は空中で炸裂した。弓兵を指揮していた指揮官は近くで炸裂を喰らったのか力無く崩れ落ちる。


このバリスタの鏃には炸裂術式が仕込まれており魔力を感知して炸裂して鏃についた金属片を撒き散らす。この世界では魔力を有する者が一般的であり、魔力感知式の罠などは効果的なのだ。

この対人に特化した兵器は以前から開発されていたのだが、前回の北部侵攻の際は車が雪に埋まり前線にたどり着くことができなかった。だが今回は雪道対策をした台車でこの兵器を前線に送り届けたのだ。

前回の侵攻では使用されなかった兵器の登場に北部の新兵はもちろん、前回の防衛に従事していたベテラン兵士たちも激しく動揺した。


「渡河部隊進め!バリスタ、第二射発射!」


アームストロング中将が叫ぶ。

防楯付きの筏を抱えた複数の部隊が川に迫る。

北方軍は矢で足止めを試みるが全て頭上の筏に阻まれる。同時にバリスタの二射目が射出されたことで北方軍は一斉に伏せたり塹壕に飛び込む。


北方軍の陣地で無数の矢が炸裂し煙に包まれる。帝国軍側の弓兵の制圧射撃も相まって北方軍が頭を出すことができない間に渡河部隊は次々に筏を川に投げ込み乗船する。渡河部隊第一陣の無防備なタイミングをバリスタと弓兵部隊が完璧にカバーした形だ。


帝国軍の射撃が止み、北方軍の兵士たちが反撃を開始しようとした時には既に渡河部隊は川を渡り始めていた。弓兵達は弓矢で迎撃を試みるが、防楯に阻まれ期待通りの損害を与えることはできずにいた。



「放て!」


北部訛りの指示と共に筏が一艘砕け散る。何が起こったかわからない帝国軍兵士は極寒の川に投げ出される。


「第二射用意。」


白い髭を蓄えた男が兵士たちに指示を飛ばす。もちろん北方軍も陣地にバリスタを装備していた。先に潰されることを警戒して隠蔽していたがついに北方側のバリスタも動き出した。



「直射で沈めたのか?」


帝国軍のバリスタ兵は戦慄する。大型のバリスタはそもそも精度が良いものではなく、少なくとも水上で動く筏を正確に狙撃できるものではない。


「バリスタを優先的に潰せ!」


バリスタ兵の指揮官が叫ぶと同時に別の筏が砕け散る。


「二つ目。」


北方軍の老兵は呟いた。


帝国軍は三度目の制圧射撃と共に渡河部隊第二陣を送り出す。一度同じ手を喰らっている北方軍が果敢に反撃したためある程度の被害を受けたがなんとか半数以上が筏に乗り込むことができた。


「橋を作る気か!」


プリニツキーは髭を触る。


「バリスタ兵は筏を破壊しろ!」


そのまま指示を飛ばす。そのままプリニツキーは一人の兵士を呼ぶ。


「お前の分隊は西の砦を見て来い。渡河部隊は囮の可能性がある。」


「了解!」


そう言って兵士は走って行った。


「この戦い方、匂うな。」


プリニツキーは呟いた。

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