23.悪い知らせ
「俺たちいつになったら出られるんですか?」
迷宮都市の牢獄で俺は不貞腐れていた。
「乱闘騒ぎを起こしたらお縄ってルールだからしょうがねえよ。」
チャックが寝そべりながら答える。
「でも巻き込まれたのは俺たちですよ。納得いかないです。」
「まあ、捕まった時は寝て待つのが一番だ。変に考えててもしんどくなるだけだぞ。」
「ひょっとして常習犯ですか?」
「ノーコメントだ。」
チャックは顔を背ける。
「でもまあ、暗殺者が彼らだけとは限らないんだし、警備の厳重なここに隠れてられると考えれば温情よ。」
クロエが向かいの牢から話に入ってくる。
「温情…ですか。」
納得いくようないかないようなかんじだ。
「やあ、乱闘騒ぎを起こした無法者たち!元気か?」
タダヒロの声だ。
「タダヒロ〜。」
クロエが歓声を上げる。
「クロエ、ケガは大丈夫か?」
タダヒロの表情は見えないが、きっと俺たちには見せないような顔をしているのだろう妻帯者め。
「お前らも無事か?生きてるってことは大丈夫か。」
タダヒロはこっちを向くが特に心配そうな顔はしていなかった。
「囚人たちのために飯を持ってきてやったぞ。」
そう言ってタダヒロは一人一皿づつ俺たちに配った。
「何ですか?これ? ってお前が言う前に説明すると、これはジャガイモとチーズと干し肉とキャベツの漬物だ。」
タダヒロは親切にも俺の声真似を交えて説明してくれた。それにうまそうじゃないか。
俺たちは腹が減っていたので皆食事にがっついた。
「生命力の強いエルフといえども栄養を摂らなきゃ傷の治りが遅くなるからな。しっかり食うんだぞ。タンパク質は多めにしておいた。」
「心配してくれてありがとうタダヒロ。」
奥で夫婦二人が仲良さそうにしていたので、チャックがわざとらしい咳払いをする。
「それで、お前たちにいい知らせと悪い知らせがある。」
「じゃあ悪い知らせから聞こう。」
チャックが言う。
「わかった。悪い知らせだが、お前らを襲って捕えられていた二人が逃げ出した。」
「え?」
思わず声を上げる。
「そうだ。弓兵は厳重に縛り上げていたし、大男の方は熱傷と骨折で動けないと思ってたんだが、何者かが警備員を気絶させて救出したらしい。結局何も情報は引き出せなかった。」
「ここの警備を掻い潜って救出?おそらくあの二人だ。まだそんな力が残ってたのか。」
クロエが呟く。
「あいつらほどの手練ならやりかねんな。」
チャックも唸る。
「じゃあ、また襲ってくるのでは?」
俺は大声を出す。
「いや、その可能性は低い。弓兵の弓はよく調整された一点物で地下倉庫に残されていた。あれがなきゃ上手い狙撃はできない。奴らも武器は持ち出せなかったようだ。それに大男はすぐに動ける状況ではないし、一人は死んでる。人数的には不利だ。立て直すのに時間がかかるだろうからすぐに再チャレンジってのはできないはずだ。」
「ああ、刺客の一人も肩を外してやったし無傷で万全ってわけでもない。」
チャックも同意する。
「双剣の男は目立った傷はなかったけど、戦力が不十分なまま再戦してくるバカではないはずよ。殺し合いの中で何となく人となりは見えるものだからそう言える。」
クロエもそう言う。
「みんながそう言うなら俺も信じます。」
俺は納得するようにつとめた。
「それで、いい知らせって?」
クロエがきく。
「うん、まあ、いい知らせって言い方には語弊があるかもしれない。ヒデオとシルヴィアにはいい知らせだ。」
「?」
皆が彼の次の発言を待つ。
「軍が動いた。戦争だ。」




