21-5.刺客
鉤爪とチャックのハマーがぶつかり不快な音を立てる。
チャックがハンマーをぶん回すのを爪がすんでのところでかわす。
「?!」
爪の男は自分の方が力無く垂れ下がったのがわかり混乱する。
「掠っただろ?脱臼したんだよ。」
「バカな…」
爪の男は顔を隠しているが明らかにその目は動揺していた。
対するチャックも切り傷だらけだ。
クロエも目立った傷はないが苦しい状況だった。双剣の男は素早い剣捌きはもちろん隙あらばすぐ魔術攻撃を挟んでくる。遠近両方の対応を咄嗟に切り替えるのはいくら彼女でも限界はある。
「参ったね。」
クロエは額から垂れてきた血を拭った。
「シルヴィアさん!大丈夫ですか?」
俺は応答のないシルヴィアを揺する。このままではまずい。相手が何人いるのかもわからない中で彼女が戦闘不能になるのは致命的だ。
なんとか安全な場所に行かなければならない。とりあえず狙撃手からの射線が通らず、なおかつ階段から登ってきた相手に直接見られない場所。俺はシルヴィアを引きずって近くの部屋に入る。さっき狙撃手がいた側に窓はない。ここでバリケードを作って持ち堪える。俺は部屋の隅にシルヴィアを寝かすと椅子や机を動かし始める。
その背中を狙撃手は捉えていた。狙撃手は射線が通らなくなれば狙撃ポイントを変更する。当たり前のことだ。ゆっくり狙いを定め弓を引き絞る。
「動くな。」
首に冷たいものが触れた。
双剣の男が爪の男の肩を叩く。
「作戦は失敗だ。退くぞ。」
「わかった。」
短く言葉を交わすと双剣の男は煙幕を焚いた。
「逃すか!」
そう言って追おうとしたチャックをクロエが制止する。
「だめ、あんたも怪我してるでしょ。」
「チッ。」
チャックはハンマーの先を地面に置いた。
煙幕が晴れると刺客の二人は姿を消していた。
「終わった…のか?」
チャックが呟く。
「そうみたいね。」
クロエはため息をついた。




