21-2.刺客
「二人とも遅いね。」
クロエがぼやく。
「俺もいつ終わるか知らねえぞ。」
チャックは首の後ろをボリボリと掻く。
「色々話すことがあるのかな。色々複雑な事情抱えてそうだし。」
「そうだろ。俺も帝国の権力闘争が関わってくるとさっぱりだ。クロエ、あんたはそういうの詳しいだろ?元親衛隊長なら。」
「元親衛隊長だからって政治に詳しいなんてことないわ。政治には関わらないもの。よく駄弁ってた文官がいたから彼が詳しいかもね。もう死んだだろうけど。」
「休暇中に国を滅ぼされて無職になる親衛隊長なんて最初に聞いた時は笑ったな。」
チャックが煽ったのでクロエは彼の肩をバシバシ叩く。
「笑うな!」
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「ここだ。このまま突入して素早く仕留める。」
「わかった。」
二人の男が二人の男が財務省の建物に入ろうとする。
物騒な会話が少し耳に入ったチャックとクロエはお互い目を見合わせて頷く。
言葉は不要だった。
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ドォン!と爆音がして土煙が上がる。シルヴィアと財務長官は窓の外を覗き込む。
「チャック!クロエさん!何があった?」
シルヴィアが窓の外に向かって叫ぶ。
「この人たちあなた達を狙った刺客よ。」
下を見ると、2本の取り回しのよさそな短めの剣を逆手に持った男と、腕と足に獣の爪のような武器をつけた男がチャックたちと睨み合っていた。
「今のうちに逃げろ!」
チャックが叫ぶ。
その声をきくと財務長官はこっちと手招きした。俺とシルヴィアは長官についていく。
「どうする?護衛に気付かれた。」
爪の男が小声で隣の男に言う。
「ああ、マズイな。だがまだ残りの三人には勘付いてないようだ。俺たちで時間を稼ぐぞ。」
「俺は女の方をやる。」
爪の男が言う。
「死ぬなよ。」
「おう。」
そう言って二人は同時に飛び出した。
双剣の男は取り回しの良い剣を使い素早く攻撃を繰り出してくる。
ハンマーという長物で応戦するには少々骨の折れる相手だ。連続攻撃で隙を見せない。
前に戦ったブラントと比べれば魔術による身体強化が弱く一撃の重さはさほどでもないが、今回の相手は慣れていた。ブラントにはなかった命を奪う事への抵抗のなさが迷いのない刃から感じ取れた。
やりにくい相手だ。気を抜けば命を奪われる。そんな気がした。
クロエの戦う爪の男も俊敏だった。主に魔術で遠距離からの攻撃を主体として叩くクロエにとって、手足につけた鉤爪で壁を走り回り三次元的な動きをするこの男とは戦い辛かった。
さらに要所要所で魔力を放出し空中で不規則な移動をすることで予測進路から外れた動きで翻弄してくる。魔術攻撃が当たらず接近されてしまったのでとっさに剣を抜いてガードする。
チャックもクロエもこの街でも上位の冒険者であり、その戦いに巻き込まれまいと他の冒険者は遠巻きにそれを眺める。
チャックとクロエは背中合わせになる。
「剣で戦うのは危ないからってタダヒロに止められてるんだけどね。」
クロエは少し苦笑しながら言う。
「惚気てんじゃねえぞ。」
チャックは肘でクロエを突く。
現在は道路にチャックとクロエ、屋根の上に刺客の二人がいる。
「避けて!」
何かに勘付いたクロエはチャックを掴んでその場から離脱する。
二人が離れた瞬間足元から火柱が上がる。
「くそ、勘付いたか。」
双剣の男が舌打ちして手元の魔法陣を消す。
「あいつら魔術使えるの?厄介ね。」
クロエが苦笑いする。




