18-2.妻
「ありがとうございます。本当に助かりました。」
俺はこの世界に来て初めて温かい食事を食べた。俺は頭を下げる。
「気にしないで。凍死しそうな人を見捨てて後々思い出したら嫌じゃない?だから助けただけよ。」
照れ隠しなのか、本気でそう思ってるのかは分からないが、いい人なのはよくわかる。
「だが困った。助けてもらったはいいが生憎今の俺には返せるものがない。」
「そのようね。別に見返りが欲しくて助けたわけじゃないから気にしないで。この街に来たからにはダンジョンで死ね。それがここの掟だから。」
「物騒な掟だ。」
「そう?私は潔くていいと思うけど。」
「でも温かいな。」
「気に入ったならいいんじゃない?」
エルフ耳は微笑む。
「それよりお姉さん、こんなところにいていいのか?」
「いいよ。明日は休みだし。」
エルフ耳はそのまま酒を注文する。
「あなた名前は?どこから来たの?」
「俺か。そうだな、タダヒロって読んでくれ。出身地は、西の国だ。」
「嘘つき。」
エルフ耳は妙に艶っぽい唇を尖らせる。
「なんでわかるんだ?」
「長生きすると嘘がわかるの。」
「それは本当?」
「ええ。」
エルフ耳が頷く。
「じゃあ言うから笑うなよ。俺は日本っていう別の世界から来た。地下室に門があって、そこを潜ったらこの世界にいたんだ。」
「嘘みたいな話。でも本当みたいね。」
エルフ耳は俺の瞳を見つめている。
「嘘かどうかは目を見ればわかるのか?」
「それはどうだろう。」
エルフ耳は首を傾げる。
「今のは当たってるな。君は瞳を見て嘘かどうか見抜いてる。目を見ればわかる。」
「ふふふ、面白い人。」
エルフ耳は肩を振るわす。
「私はクロエ。クロエって呼んで。」
彼女はそう名乗った。
「クロエか。そんな女優いたな。」
「ニホンにも私と同じ名前の人がいるの?」
「日本ではないけどな。でもこっちの世界にいるよ。」
「じゃあそっちの世界のこと教えてよ。あなたは嘘をついてない。本当に違う世界から来たんでしょ?酒の肴になる話を期待してるわ。」
クロエが微笑む。
「それは荷が重いな。」
タダヒロはそう言って日本の話を始めた。
「まず俺たちの祖先であるホモ・サピエンスが…」




