11-2.憲兵密着
二人は王都の中心地からすこし外れた商店や高級住宅の並ぶ場所まで来た。
「今日の俺たちの管轄はこのへんだ。なんだ?中心市街じゃないのが不満か?」
へスラーはピーターの顔を覗き込む。
「いえ、そういうわけではありません。」
ピーターは少し焦って訂正する。だが、正直なところ少しがっかりした。
「ならよかった。前に来たやつはそれで辞めたからな。全く最近の若者はプライドが高くて困る。」
そう言ったあと少し元気のないピーターの顔を見て何かを察したへスラーは
「まあ、異動とかもあるから一生このままってわけじゃない。ここで実績を積めば上に行ける。」
と言って慰める。そう言うヘスラー自身も昔はそうだった。中心市街担当になれず不満に思ったこともあったが、慣れてくれば忙しすぎないここの仕事も悪くないと思えるようになった。
「では一軒一軒回ってなにか困ったことがないかきいてきます!」
そう言って走り出したピーターの襟首を掴んで止める。
「待て待て、焦るんじゃない。第一、家にいきなり憲兵が来たら怖くて小便ちびるだろ?」
「それもそうですね、申し訳ありません。」
ピーターは頭を下げる。
「あんまり功を焦るな。焦ったって無駄な努力になるぞ。俺たちはウロウロして抑止力になればいい。憲兵の前で犯罪をやらかす間抜けを捕まえてればいいんだ。」
「ですがそれでは足りないのではないですか?」
ピーターが反論する。
「そうだ。だがな、巨悪ってのは俺たちの前に現れないもんだぜ。まあ、どうしてもって言うなら怪しそうなやつの身元を確認したりしてもいい。俺はあんまりやらないけどな。」
ちょっと名言のようなことを言ってしまったとドヤ顔になるヘスラーを無視してピーターはあたりを見渡し、
「じゃあ私はあの黒ずくめの怪しいやつと話してきます!」
と駆け出したので再びへスラーは彼を止める。
「待つんだ。焦るな。もう一回言うぞ。焦るな。この辺には貴族様の家が多いんだ。公爵家だってある。下手に絡んで貴族様にクレームを入れられたら俺たち木端役人は首が飛ぶんだ。魔術師の貴族はわりとああいう実験用の怪しい格好で出歩いたりする。これも覚えとけ。」
「む、むずかしいですね。」
ピーターはうなだれる。
「難しいぞ。実績を出すことを考えるよりまず仕事を覚えろ。そもそも俺たちは魔術犯罪が担当だから巡回任務は本業じゃない。人手不足だからやらされてるけどな。それに…」
へスラーは耳元で小声で囁いた。
「本業じゃないからサボっててもあんまり文句言われない。」
「ということで飯にしよう!」
ヘスラーの提案にピーターは呆れ返った。




