101.援軍突入
帝国軍のピリマ護衛部隊は突如大量に湧いた反乱軍兵士に壊滅させられた。しかし、全滅したわけではなく、一部の生き残りが東門に集まって反乱軍の波状攻撃を退けていた。現在帝国軍側の勢力圏にある門は東門だけである。
「ふう、凌いだな。」兵士の一人が門の前に散らばる反乱軍の死体をみながらため息をつく。
「これ以上来られるとまずいな。」もう一人の兵士が武器をじっと眺めながら言う。
「総督は今どこにいるんだ?」
「知らん。途中で総督たちとはぐれた。」
「何やってんだ…」
「生き残るだけでも精一杯だったんだ。しょうがないだろ。」
「おい!あれ見ろよ!」弓兵が北東の方向を指差す。
皆なんだなんだとそちらを見る。
帝国軍の旗印。援軍だ。
兵士たちは歓声を上げる。
「よかったな。生きて帰れる。」
「まだだ。気を抜くな。」
「助かるのか?」
「ああ。助かるだろ。」兵士たちは口々に言う。
「合図を送れ!援軍にここを通らせる!無駄な血を流させるな!」守備隊のリーダーが大声で指示する。
兵士たちは急いで家屋の木材や衣類などを燃やし狼煙で合図を送る。
「気づいてくれ気づいてくれ。」兵士が祈るように言う。
そうしていると、地響きが聞こえる。
「おいおいおい!違う奴らが来た!」兵士が迫り来る反乱軍を指さして絶叫する。
「お前らはお呼びじゃねえんだよ!戦闘体制!」リーダーが叫ぶ。
ガーランド上級大将の救援部隊は戦いの音がかすかに聞こえた。
「あそこは何門だ?」横にいる兵士に尋ねる。
「はい。あそこは東門であります。」兵士が答える。
「ふむ。まだこちらの残存勢力が抵抗を続けている可能性があるな。」
「いかがいたしますか。」兵士が尋ねる。
ガーランドは兵士を一瞥すると大きく息を吸う。
「我々は東門を突破する!ピリマの同志を見殺しにするな!」ガーランドはそう叫ぶと一番に馬を走らせる。
兵士たちもそれに付き従う。
「救援部隊がこちらに接近しています!」兵士が報告する。
「援軍がここに向かっている!それまでここを守り抜け!」リーダーが檄を飛ばす。同時にリーダーは矢で射抜かれ崩れ落ちる。
だが、すでにリーダーを失ったくらいでは守備隊の心を折ることはできなかった。
出し惜しみを捨てた守備隊の激しい抵抗に遭い反乱軍は前進できずにいた。
「門を開けろ!」城壁の上の兵士が叫ぶ。
数人の兵士が反乱軍からの矢の雨を掻い潜り門の閂を抜き取る。
門がゆっくりと開く。門の向こうには完全武装の兵士たちが控えていた。
反乱軍兵士たちの顔色が変わる。
帝国軍兵士たちは叫びながらピリマ市街へ雪崩れ込んだ。
東門を攻撃していた反乱軍はなすすべなく轢き潰された。