9-2.経営再建
「ここですか?」
目の前には年季の入った建物がある。大きさは小学校への通学路にあった商工会議所の建物くらいの大きさだ。タダヒロに連れられ俺たちは中に入る。
「こんにちは!ローマンさんいます?」
受付の中年女性にタダヒロが尋ねる。
「上にいます。」
と女性は機嫌が悪そうに答える。そのまま階段を登るタダヒロに俺たちはついて行く。
「ここはお前が所属してるギルドか?タダヒロ。」
チャックが質問する。
「違う。ローマンとは仲がいいが、俺はどこにも属してない。戦えないからな。」
「ギルドってなんですか?オンラインゲームでよくあるあのギルドですか?」
「うん、俺はあんまりオンゲやってなかったからそうだとも言い切れないんだがまあそんな感じだ。
基本的にこの世界のギルドはダンジョンから取ってきた資源に付加価値をつけて売り捌く組織のことだ。
そして、ギルドごとに専門の階層が決まっていて、浅い階層で薄利多売の商売をしたり、チャックのとこみたいに深いところで高級品を持ってきて高い利益率で売ったり色々なところがある。」
ギルドについてタダヒロが説明する。
「まあ、遠征費含めたらガポガポってわけでもないけどな。」
チャックが悲しそうな顔で言う。
「ここはどんなギルドなの?」
シルヴィアがきく。
「ここは中堅ギルドだ。30層とか40層を中心に活動してる。俺の友達のローマンが経営してて、その名もローマンズ・ギルドだ。」
そのままである。
そうこう話している内に階段を登って重厚な扉の前に着く。
「ご開帳といこう。」
そう言ってタダヒロは扉を開ける。
扉の先には本が大量に詰まった本棚に囲まれた大きなデスクと応接室のような部屋があった。
校長室みたいだ。デスクの奥にはスキンヘッドで貫禄のある中年男性が座っていた。
「また変なやつ連れてきたんか。」
スキンヘッドの男は呆れ顔でそう言った。
「類は友を呼ぶ。だよローマン。」
タダヒロは笑顔であしらう。
「で、そいつらは?」
ローマンと呼ばれた男は俺たちを見ながら言う。
「彼らは今からこのギルドの経営再建を担うコンサルさ。」
ローマンとタダヒロが何やら喋っているとシルヴィアが俺の肩を叩いた。
振り向くと、コンサルトはなんだときいてくる。チャックも気になっているようだ。
「えっと、コンサルはあれです。経営をなんとかする仕事です。」
適当に言ったが実際そんなこと知らない。
「三人とも座れ。」
そう言われたので俺たちは長椅子に座る。
「よろしくお願いします。私がこのギルドの長。ローマン・ラングレーです。以後お見知り置きを。」
握手を求めてきた。シルヴィアがお前が握手しろという目で見てきたので握手をする。
「よかったです。ここの経営を再建してくれるって言うてくれはったんで。私もここで働いてる奴ら食わさんないけませんからね。なんとかせんとあかんなと思とったんですわ。
タダヒロさんの紹介やから安心して任せられますわ。なにか聞きたいこととか見たい資料とかあれば何なりと言ってくださいね。」
タダヒロは改めてこちらを向く。
「ここの経営を立て直せば、ギルドの重役として手取り早く財務省の偉い奴とのコネができる。いい提案だろ?」
「でも、俺別にそんな経営の知識とかないですし。世間知らずの高校生ですから。」
たしかに手っ取り早い方法であるのは確かだが、できるかどうかは別問題だ。経営などというものは高校生の浅知恵でなんとかなるものでもない。
「そうか。泊まるところがないならここの部屋を使ってもいいってローマンが言ってたんだけどな。じゃあ俺から断っておくよ。ちゃんとした個室はいら」
タダヒロが言いかけたところでシルヴィアが立ち上がった。
「やるよ。私たちに任せろ。な、ヒデオ。」
確かに住処が手に入るなら悪くはない条件だ。
お互い銀貨一枚の安宿生活は辛かったので仕方なく今回の仕事を了承した。
「すぐにじゃなくていい。ゆっくり考える時間はある。気楽にいけ。」
タダヒロはそう言って不安で押しつぶされそうな俺の肩を叩いた。




