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8-4.遭遇

 間に合わない。俺はただ叫ぶしかできなかった。

すんでのところでウィズバンのものだろう、火で出来た手が出現し剣を防ごうとするが、無力にも剣でかき消される。

横凪に振られた剣はそのままシルヴィアの首を両断した。シルヴィアはそのまま力無く膝をついて崩れ落ちる。


「」


声が出ない。

目の前で彼女は死んだ。なんの役にも立たなかった。呆然とする。



違う。彼女はまだ動いている。彼女は這いずりながら後ろへ下がる。首はまだついている。

ウィズバンがせめてもの抵抗として右側に少し出したのであろう薄い煙幕が晴れてくると中に人影がいるのが見えた。


「誰だ?お前は?」


ブラントは憤りを隠せない声でその人影に問う。


「名乗ってもわかんねえだろ?」


完全に煙が晴れる。ブラントの剣は謎の男が持った棒のようなものに受け止められていた。

状況が上手く飲み込めないが、あの男がすんでのところでブラントの剣を止めたのだろう。


「俺はチャールズ。チャックって呼んでいいぜ。」


謎の男はそう名乗った。


 「邪魔をする気か?」


ブラントが剣を構える。


「邪魔してんのはそっちだろ。さっさと失せろこのガキ!」


ハンマーだ。男はハンマーを使っている。チャックと名乗る男は大ぶりにハンマーを振る。流石のブラントも一撃の威力を警戒して後退する。


「なんの真似だ?」


ブラントも怒り心頭といった様子だ。その隙に俺はシルヴィアと合流する。


俺の近くに来たシルヴィアはそのまま俺の胸に倒れ込む。


「ご、ごめん。腰抜けちゃって。」


それは仕方ない。あんな目にあったら俺は確実に漏らす。


「なぜそいつらを庇う!」


ブラントがチャックにむけて怒鳴る。


「なんでって、そっちの嬢ちゃんには助けられた時の礼がまだだったからだ。」


だれか助けたっけ?と二人で顔を見合わせる。蜘蛛に襲われていた男だと仮定しても、あんな短期間であの傷が治るはずもない。そうなると本当に誰かわからない。


「覚えてないのか?金貨三枚あげただろ?」


男は俺を指差して言う。そうだ、蜘蛛の人だ。


「金貨三枚?なにそれ、聞いてないんですけど???」


シルヴィアの目が怖い。隠しててすいません…と謝って金貨を差し出す。


「許そう。」


許してくれた。よかった。


「まあいい。まとめて切り捨てる!」


そう言ってブラントは光の剣を構えて俺たちめがけて飛びかかってくる。


「まとめてやれるほど楽じゃあないぜ!」


チャックも先端に布を巻いたハンマーを構えて応戦の構えを見せる。先ほどからの動きを見る限りどちらもとんでもなく強いのは分かる。肉壁にしかなれない俺は見守るしかできない。



一撃目のブラントの攻撃をチャックがハンマーの柄で滑らせいなす。

突進をいなされたブラントも簡単には体勢を崩さず、物理法則に反したような動きで体勢を戻し切り掛かる。

そのまま二人は激しく打ち合う。どちらも速い。速すぎて俺の目では上手く追えない。

ただ、強いて言うならチャックの方が防戦を強いられているように見える。素人の分析ではあるが、取り回しの良い剣と違い、ハンマーは一撃の威力は高いが、その一撃を入れる前後に大きな隙が生ずる。

それ故に確実に一撃を叩き込むチャンスが巡ってくるまで相手の攻撃をいなし続け体力を奪おうとしているのだろう。

相手も体力の消耗に気がついたのか再び距離を取り剣を大きく前に突き出す。剣はさっきよりも大きく膨張する。この一撃で決めるつもりだろう。

魔力を使ったり感知したりできない俺でも周囲の何かがざわめくような感覚がある。

これがさっき俺たちに向けられていたかもしれない刃かと考えると背筋が凍る。剣がさっきの二倍くらいの大きさになった時、ブラントが消えた。

消えたのではない、目には見えない速度での突撃だ。あれを人間が躱せるのか、そう思ってチャックの方を見る。チャックはハンマーの頭を90度回転させたと思うと金属が引き裂かれるような恐ろしい音がすると同時に直進していたブラントが少し上に逸れるのが見えた。

人間には躱せないと考えていたが、あの二人はそもそも人間のレベルを超えている。おそらくハンマーの頭を横向きにし、剣を受け止めることのできる面積を増やしたあと向かってくる剣を下から力一杯押し上げ進路を上に逸らしたのだ。

剣を上に打ち上げられたブラントの身体は完全に無防備である。対するチャックはハンマーを高く振りかぶっている状態だ。横向きのハンマーをまた90度戻して振り下ろした。


もうもうと土煙が上がる。あの一撃を喰らえば俺だったら即死するし、ブラントだって無事では済まないだろう。だが、土煙の中にブラントはいない。違う、真横だ。

ハンマーで打たれたはずのブラントはチャックの真横にいる。ブラントは剣を振りかぶる。ハンマーを地面に打ち付けたままのチャックは対応が間に合わないだろう。しかし、チャックはハンマーを地面めり込ませたまま跳躍して、ハンマーを軸にしポールダンサーのような動きでブラントに強烈な回し蹴りをくらわせる。

油断していたのか、蹴りをまともに受けたブラントは吹き飛ばされる。

ブラントは吹っ飛びながらも上手く体勢を立て直し着地した。しかし、その顔は怒りに震えていた。


「卑怯な戦い方をする。よくも私をコケにしたな!」


「卑怯?実戦的と言ってほしいな。こっちは毎日魔物と戦ってる。お前みたいに藁人形と模擬試合やってりゃいいわけじゃないんだからな。」


「これ以上我々を侮辱するな!」


「お前沸点低いな。」


シルヴィアがすかさず煽る。こっちに来たらどうするんだ。


ブラントはこちらの挑発には反応せず魔力の剣を消したと思うとすぐに腰にかけた剣に手をかけた。スラリと剣を抜く。鏡のような美しい刀身だ。


「できれば使いたくなかったのだが。」そ


う言ってブラントは剣を構えた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 「ぐあぁ!」


吹き飛ばされたチャックが岩山にめり込み力無く項垂れる。

剣を抜いたブラントの力は圧倒的だった。まず剣を持って入るが剣の戦い方ではなかった。よくわからないが剣が光ったと思うとビームのようなものが出てきたのだ。

ハンマーを持った相手を永遠にマシンガンで撃ち続けるような、そんな一方的な戦いだった。


「チャールズと言ったか。私をここまで苦戦させるとはな。この剣を使ってしまった時点でこの戦いは私の敗北だ。最大限の敬意を払うよ。」


ブラントはそう呟いた後こちらを向く。

非常にまずい。危機は脱したつもりでいたが、どうやら思い違いであったようだ。

状況は振り出しに戻った。ブラントは剣を納める。どうやら俺たちにあの剣を使うつもりはないらしい。


「私には君たち謀反人を罰するという責務がある。」


そう言って再びこちらに拳を突き出す。とっさに俺はシルヴィアに覆い被さる。鎧に光の棘が当たっては砕ける。ダメージはないが、ずっと連射しながら近づいてくるため身動きが取れない。

変に動けば防御の薄いところを狙われるかもしれないし、シルヴィアも少しでも頭を出せば撃ち抜かれる。完全に制圧されてしまった。

ブラントは光の棘を撃ち続けながらゆっくりと歩み寄ってくる。シルヴィアも光る手やウィズバンを召喚して時間を稼ごうとするが全く効果はないように見える。

それでもシルヴィアは攻撃し続けている。そのまま彼女は俺の後ろで何やら詠唱すると、ブラントの周りから軽く100本以上の大きな光る腕が生えてきてつかみかかり、完全に大量の腕に覆われた状態になった。ちょっとモンブランみたいだ。2秒ほど腕は蠢いていたが、中から少し光が漏れたと思うとその腕たちは消し飛んでしまった。


「見苦しいぞ!そんなもので私を止められるとでも思っているのか!」


剣を横凪に振ったブラントが叫ぶ。するとシルヴィアがやおら立ち上がり余裕たっぷりと言ったふうに


「止められるとは思ってないよ。私はね。」


と呟いた。


「なに?」


ブラントの動きが止まる。


その瞬間鈍い音がしたと思うと彼は森の方へ吹っ飛んでいった。


何が起こったかわからないでいると、土煙の中からハンマーを振り抜いた後の姿勢のチャックが立っていた。


「お前が気を引いてくれてたおかげで吹っ飛ばせた。今のうちにずらかるぞ。」


チャックは中心市街の方を指差しながら俺たちにそう言った。


「トドメはさせない?」


シルヴィアが質問する。


「だめだ。あいつ、俺が一撃打ち込んだ時反射的に上手く衝撃を逃しやがった。あいつはただよろけただけでまたすぐ戻ってくる。逃げるんなら今のうちだ。」


「逃げましょう!」


俺は率先して街の方に走り出した。こんなところに1秒もいたくない。

二人も後から走ってついてきている。そのまま二人は俺を抜き去っていった。

鎧が邪魔で走りにくかった。

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