72-2.エニグマ
早速私たちは暗号の作成に取り掛かる。ヒデオが持っていた日本語の本は詰め所の火事で全焼したので新しくタダヒロから本を取り寄せた。
『お買い上げありがとう。』と書いたタダヒロ直筆のサイン入り領収書は仔豚が食べた。
クロエさんに要件を伝えタダヒロに例文をもらい二日半かけてなんとか暗号を書き上げた。
クロエさんは迷宮都市と南部を簡単に行き来できるので大きく貢献してもらった。
私たちは望みをかけてその暗号を生き残りの少女が隠れていたタルに隠した。
あとは彼がこれを受け取ってくれるかどうかだ。
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俺は反乱軍の兵士たちと村で調査をしていた。今回はアレクサンドラさんもいない。今ソルマンに何かされたら俺は終わる。
反乱軍の魔術師たちが教会の方でわーわーと言い合っている。
俺はある程度状況を伝え終わって暇になったので村のを散歩していた。ふと隠れていた女の子のことを思い出した。彼女はあの惨劇を目撃して立ち直れたのか、ピーチマンの男の子は上手く逃げ切れたのだろうか。俺は全然時間を稼げなかったので逃げ切れなかったかもしれない。
上手くウィズバンで小屋に火をつけて大ごとにしてやろうと最後のすかしっぺをしたが、役に立ったかもわからない。そう考えるとだんだん焦燥が募る。
深呼吸をして気を落ち着かせながら家々を見て回る。ふと女の子が隠れていた家はどうなったか確認したくなった。
家に入る。あの時のまま時間が止まったようだ。投げ捨てられた手斧や車輪もそのままだ。
ため息をついてあたりを見回す。
「ん?」俺は一瞬何か見慣れたものを見たような気がした。なんとなく懐かしい何かを。
俺は必死にあたりを見回す。
あった。樽だ。女の子が隠れていた樽だ。そこに何かデカデカと書かれている。
『ひでおえ』
ひでおえ?俺のことか俺へってことか?と思ったが、拙く書かれた文字は間違いなく日本語だった。
俺はおそるおそる樽の中を覗き込む。紙切れが貼り付けてある。そっと物音を立てないように紙を剥がして広げる。俺は驚いた。そこには意外なことが書いてあった。
『ひでおえ。ツルビアです。わたレたさは あなたおさがレてります。りまど こにおるのかれんら<<ださ。たるにいれてく ださい。』
怪レい日本語???
ツッコミどころは多いが、これがシルヴィアたちからの暗号であることは間違いない。すごく嬉しいのだが、ツルビアの破壊力が強すぎて全部持っていかれた。
ともかく俺はその場でできるだけ詳細にかつ簡潔に今の状態をできるだけ綺麗な字で書いて元の場所に戻しておいた。これで気づいてくれればいいのだが。
待っててください、ツルビアさん。




