71-2.誘導
俺は部屋に戻り今日の出来事の整理を行う。今日分かったことはこの消失事件は反乱軍の方針ではなくソルマンが独断で行っている。急進派ぐるみでこれをやっているならば大問題だが、そうでないならまだ救いはある。
それに急進派も今回の事件の捜査に乗り出した。穏健派と急進派両方から追われる身となったソルマンの立場はさらに悪くなる。だが、それは同時にソルマンから俺への攻撃が始まることを意味している。
考えるだけで胃が痛くなるが仕方ない。最終的な決着は急進派の自浄作用にかかっている。だが、不思議とそこに対する心配はなかった。少なくともアレクサンドラはソルマンの行為をよしとするような人間ではないという確信があったからだ。
知ったふうな口をきくのもどうかと思ったがきっとそうだ。俺はそう考えると眠りについた。
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「なんだ?影が消えてる?」村に来たチャックが驚く。
シルヴィアとロスも綺麗になった床をみて絶句する。
「あの影が消えるとは思えない。ということは張り替えたのか?」シルヴィアは困ったように言う。
「いつの間に?」ロスは床を撫でる。
「証拠隠滅を図られたのか。」チャックは呟く。
「くそ…これじゃあ調査もできない。」シルヴィアが頭を抱える。
「でも、ヒデオくんが消えた村ならまだ証拠が残っているかも。」ロスがシルヴィアの肩を叩く。
そんな話をしていると仔豚も教会に入ってくる。そのまま仔豚は床の匂いを嗅ぎ回ったあと、何かを見つけたようにじっくり床の一部の匂いを嗅ぐとその場に寝そべり気持ちよさそうに寝始めた。
「おい、ロース。証拠が隠滅される前に村に向かわないと、寝てる場合じゃないぞ。」チャックが気持ちよさそに眼を細める仔豚の額をつつく。
「待って!」ロスがチャックを制止する。
「どうした?」チャックが尋ねる。
「いや、何か変なの。この子は普段床で寝たりしない。」ロスが大真面目に言う。
「お、おう。そうなんだ。」チャックは気圧される。
「それにこの寝方。ヒデオくんの鎧の中で寝てた時の体勢に似てない?」ロスが言う。
「いや、悪いがわからん。」チャックはキッパリ言う。
「私は猟師だからね。こういう細かい変化を見るのは得意なの。」
「つまりここに彼がいた。それも最近ね。」
「ここに来たと?なんで?」
「わからない。この辺に新しい足跡がいくつかあった。もしかしたらそれが彼のものかも知れない。それに、ここに来たのは彼だけじゃないってこと。」
「つまり、ヒデオがここに誰かと来たってことか?」
「私はそう考える。」ロスは頷きながら言う。
「近くにいるってこと?」シルヴィアが尋ねる。
「わからない。でも、彼はまだ生きていてここに来ている可能性があるってこと。」
「仔豚の動きだけでそこまでわかるのか。」チャックは気持ちよさそうに寝る仔豚を見ながら言う。
「だからシルヴィア。」ロスはシルヴィアの目を見る。
「この子は役に立った。だから食べないで。」
「食べないってば!」シルヴィアは首を横に振った。




