70.勧誘合戦
「シェレンスクが落ちた!」報告に来た幹部の言葉にアレクサンドラとカーターは唖然とする。
「まじ?」カーターは尋ねる。
「はい。」幹部が頷く。
「早すぎないか?」アレクサンドラも眉を顰める。
「しかし、間違いないようです。シェレンスクは落ちたと。」
「え〜」カーターは困惑する。
「ともかく、どうせ大勢が奴隷として送られてくるだろう。一人でも多く人員を確保する。」アレクサンドラは堂々と言う。
「はぁ、忙しくなるな。」カーターは頭を掻く。
「さあ、マツモト。こちらも打って出ようじゃないか。」彼女はそう言って俺の背中を叩いた。
打って出る。つまり外に出られる。しかもある程度自由に動けるだろう。俺は小躍りしたい気分だった。
だが、問題がある。このアレクサンドラとかいう利き手と逆の手で魔獣を綺麗に一刀両断するような反乱軍のボスとシルヴィアたちを遭遇させるわけにはいかない。
チャックも相当強いので負けることはないと思うが、二人くらい持っていかれる可能性は高い。
俺が変にシルヴィアたちと合流しようと動いた結果、ご対面というのは一番避けたい事態である。
仲間に会いたいのか会いたくないのかはっきりしろと言いたいところだが、会いにいかない方がいい。これはわかる。ただ、彼らも俺の生存が望み薄となると皆帰ってしまうかもしれない。
そうだ。会わないようにしようなどと悠長なことを言っている暇はないのだ。
忘れられたら俺は終わりだ。早く合流しなければ!
「アレクサンドラさん!俺も手伝いますよ。」俺はできるだけ誠実そうな顔で宣言する。
「お、マツモトもやってくれるか。仲間を増やさないといけないからね。全力を尽くしてほしい。」彼女は嬉しそうに頷く。
「アレクサンドラさん?」俺は話しかける。
「何?」彼女は尋ねる。
「俺がこの前言ってた協力してくれそうな村、行ってみます?最近来たらしい北部からの奴隷も二人ほどいましたよ。」俺は提案する。
「そうだな。確かにそこにも進出する必要があるな。仲間を行かせよう。案内できるか?」彼女は喜ぶ。
「アレクサンドラさんは来ないんですか?」俺は尋ねる。
「まあ、行きたくないわけじゃないが、私はそうホイホイ動けないんだ。」彼女は悲しそうに言う。彼女は来ないつもりだ。だが、俺としては彼女に同行してもらわないと困るのだ。
「そうですよね。忙しいですもんね。」俺は引き下がる。
「最近は穏健派が手を出してましたからね。トップがホイホイ行くのは危険ですよね。出過ぎたことを言ってしまい申し訳ありませんでした。」俺は頭を下げて退出しようとうる。
しかし、俺の言葉をきいて彼女は眉をぴくりと動かす。
「待て、それならば私自ら出向くことも考えなければならない。私の方が顔も売れているしね。」アレクサンドラは頷く。
「そうですか。それは心強いです!」俺は彼女をおだてる。
ここまでは作戦通りだ。そもそも彼女は要塞に引きこもっていることに耐えられるタチではない。積極的に外に出て行きたいはずだ。それに、敵対している穏健派の進出が見られるとなれば、組織のトップとして現場に行くという明確な理由ができる。ここまでは上手く行っている。外に出たがる彼女に外出の正当な理由を与える。そうなれば彼女は出向いてくれるはずだ。あの場所へ。
申し訳ないが、ソルマンにはここで脱落してもらうととしよう。俺は心の中でほくそ笑んだ。




