68.猟犬(豚)
「おそらくだが、ヒデオは生きている。」シルヴィアの言葉に二人は驚く。
「まじか。」チャックが目を丸くする。
「ブッ」赤いスカーフを巻いたロースさんも驚く。
「そっちじゃない!」ロスが突っ込む。
「どうしてそう言えるの?」本物のロスが尋ねる。
「私はヒデオにウィズバンの使用権を仮譲渡した。その間に使用者が死ねば、使用権は私に返ってくるはず。でも、返ってきていないってことは彼はまだ生きている。」シルヴィアはまっすぐな眼差しをロスに向ける。
「昨日はそれを調べてたのか。」チャックが頷く。
「総督が図書館を作ったお陰ね。」ロスが呟く。
「ともかく、アテができた。私はヒデオを探す。二人は…二人のやりたいようにしてほしい。」シルヴィアは俯きながら言う。
「俺も一緒に探す。命の恩人だからな。」チャックは頷く。
「どうやって探すの?」ロスが冷静に尋ねる。
「本当に生きてるのか?」チャックが尋ねる。
「生きてるはず。彼は剛運の持ち主だから。」
「間違いないな。」チャックが笑う。
「魔術とか色々と使う。ロスさんは狩人なら追跡は得意だったりする?」
「多少は。」ロスが短く答える。
「だが、ヒデオが消されたのは魔術なんだろ?相手も追跡対策はしてるんじゃないか?」チャックが首を傾げる。
「それならこっちの方法でやる。」そう言うとロスは赤いスカーフを巻いた仔豚を抱き上げる。
「猟犬、いや、猟豚を使う。」ロスはドヤ顔をする。
「いい考えだな。頼むぞロース。」チャックが子豚を撫でる。
「その名前で行くのね。」ロスは苦笑する。
「ともかく、みんなが協力してくれるなら嬉しい。頑張りましょう。」シルヴィアはそう言って皆を見回す。
三人と一匹は頷き合った。
手始めに仔豚にヒデオの匂いを覚えさせる。手近にある彼の持ち物はプラ製の鎧だ。鎧の胴部分の匂いを仔豚に嗅がせる。
仔豚はしばらく鎧を嗅ぐと周囲をキョロキョロする。そのまま鎧の中に潜り込むと気持ちよさそうに目を細める。
「これダメなんじゃ?」チャックが苦笑しながら言う。
「ダメかも。」シルヴィアは頭を抱えた。
「この子はやる時はやる子だから食べないで!」ロスが仔豚に覆い被さる。
「食べないよ!私は鬼か!」シルヴィアは突っ込む。
「ならよかった。」ロスは心底安心したような顔をする。
「よかったね。食べられないって。」ロスは仔豚を撫でながら言う。
「とはいえ、この体たらくでどうするんだ?」チャックが呆れる。
「これは仕方ない。私が魔術的アプローチでどうにかするしかないね。」シルヴィアはそう言って目を閉じた。




