67-1.スパイ大作戦
「ウィズバンさん久しぶりです!」俺はやっと魔力源の石を手に入れたので久しぶりにウィズバンと会話する。
「おお、生きてたか。あれ?ここどこ?」ウィズバンが不思議そうに言う。
「反乱軍急進派の拠点です。」
「捕まってんじゃねえか。」ウィズバンは困惑する。
「捕まりました。悲しいです。」
「でもまあ、生きてるならまだチャンスはあるよ。」精霊は俺を励ます。
「それにしてもいい部屋だな?」
「なんか厚遇されてるんですよね。」
「なんで?」
「ボスの意向。ですかね?」
「なんかよくわからないけどよかったな。」
「で、ここからどうするんだ?」ウィズバンが尋ねる。
「今の立場を利用してなんとか平和的に解決したいです。」
「いいね。お前らしい。」ウィズバンは愉快そうに言う。
「とりあえずウィズバンさんは力を温存していざという時は力を貸してください。」俺は頼む。
「いいぞ。いつでも頼れ。だが、お前は俺を好きに使えるわけじゃない。チャンスは有限だ。いいな?」念を押された。
「はい。」俺は返事をした。
「おはようございます。」俺は運悪くすれ違ったソルマンに挨拶する。
「おはよう。」ソルマンも目を合わせず挨拶をする。
お互い知らないふりをするのが生存戦略なのだ。
「カーターさん。持ってきましたよ。重かったです。」俺は書類の束を置く。
「ありがとう。そこ置いといて。」お礼が言えるようになったカーターが長椅子を指差す。
「ここ置いときますね。」俺は書類を長椅子に置く。申し訳ないが、椅子に物を置く人間はだらしない。絶対部屋が汚くなるし実際部屋も汚い。
「さっきソルマンさんに会ったんですけど、あの人何歳なんですか?」俺は質問する。俺はスパイなのだ。ここで急進派の一員として働いてできるだけ情報を持って帰る。それが今俺ができることだ。みたかんじカーターが一番優しそうなので彼に訊く。小柄にメガネで禿頭で声が高いのでなんとなく話しやすい。ゆるキャラみたいな感じだ。多分内面はゆるくないだろうが。
「あー、ソルマンさん?何歳なんだろうね。俺がここに来た時からあの人爺さんだったからな。何歳なんだろうな。訊いてもはぐらかしてくるし。」カーターは不満そうに禿頭を撫でる。
「カーターさんはいつからここにいるんですか?」
「30年前くらいだったかな。幹部の中じゃ新参なんだよね。」
「スピード出世じゃないですか。すごいですね。」
「別にすごいことはしてないよ。」
「僕は医者だったから重宝されたんだよ。」
「医者なら十分すごいですよ。」
「褒めても何も出ないよ。」カーターは嬉しそうだ。
「じゃあ俺はこれで。失礼します。」そう言って部屋の外に出る。こういうのは一気に聞き出すとダメなのだ。こうやって質問は二つか三つにとどめて基本は世間話に徹する。こうして警戒を解いてちょっとずつ情報を聞き出していくのだ。
一度に多く聞き出すと怪しまれてしまう。特にカーターは医者なので頭はいいはずであり、こちらの目論見を察するかもしれない。元の世界の医者と違って名乗った者勝ちなのかもしれないが、医学部とのレスバは部が悪い。つまりそういうことだ。石橋を叩いて渡ることが重要だ。
少なくともいくつか情報を手に入れることができた。まず重要なのはソルマンの情報だ。彼の情報を優先的に集めたい。だが、あまり熱心にやりすぎると彼が俺の顔を思い出すかもしれない。そうなれば俺は終わりだ。慎重に。慎重にだ。薄氷の上で四股を踏むように。
「全く。心臓が止まりそうだ。なんとかどこかに追い出せないものか。」ソルマンも自室で考え込んでいた。




