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8-2.遭遇

 「タダヒロの家はここか?」


街の中心を抜けて建造物がまばらになってきた。


「ここかって言うより、そもそも家らしい建物はないですね。」


周りを見渡すがやはりそれらしいものはない。


「あの男、地図書くの下手すぎ。記憶力が良いって言ってたのに伝えるのは苦手なのかな。」


穏やかな口調だが、結構歩かされたのでシルヴィアも心なしかイラついているように見える。


「まあまあ、ああいうタイプの人ってなんか辺境に住んでるイメージがあるので探せばあるんじゃないですか。地下室とか。」


「地下室ねえ。この広い空き地のどこに地下室なんてあるんだ。」


地図に書いてある通りに森を抜けると何もないただの空き地が広がっていた。目印になりそうなものもない。


「もしかして街の正反対の場所だったりするんじゃないですか?地図見せてください。」


シルヴィアから地図を貰ってよく見る。


「正門からこう行ってここって書いてあるだろ?」


「あの、シルヴィアさん。これ多分日本語です。前はそっちの文字なのかと思ってたんですが、これよく見たら日本語です。字が汚くて分からなかった。」


「つまり?」


「これ正門じゃなくて商会じゃないですか?あのレンガの大きい建物。屋根が丸いところ。」


シルヴィアの顔がみるみる引き攣る。


「あいつが悪いんだ!紛らわしい字書きやがって!じゃあこっちじゃないだろ!」


すごく怒っている。とりあえず戻るしかない。もと来た方へと歩き出した瞬間後ろから呼びかけられた。


「待て。」



俺とシルヴィアは同時に振り向く。

長身で白いマント金髪に赤い目。この男は、忘れもしない。この世界に来て次の日に襲撃してきた憲兵と一緒にいた男。なんとかさんだ。


「ブラント…」


シルヴィアが震える声でそう漏らす。そう、ブラントだ。まだカタカナの名前には慣れていないのでしょうがない。だが困った。目の前にいる男は十中八九俺たちを捕まえに来たのだろう。

この前は夜の市街地だったこともあり上手く逃げ切れたが、ここは開けた空き地だ。前のように上手くはいかないだろう。


「私の名はブラント・ホルメニア!ホルメニア家次男にして歴代最強と言われる騎士だ!」


前に聞いた名乗りだ。


「私の名乗りを2回も聞いたものはお前達が初めてだ!」


お手本のようなキメ顔だ。だが初めてと言うとこいつは今まで平和な自己紹介をしたことがないのかとも思ったが今は揚げ足を取っている場合ではない。


「母上とカールはどうした?」


シルヴィアが問いただす。

「罪人の質問には答えん。」


ブラントはそう言うと拳を前に突き出す。光の棘が飛んでくる。

咄嗟にシルヴィアの前に立ち無防備な顔を撃たれないように半身になる。肩と頭に当たった感触がある。

「ふむ。やはり見間違いではないな。貴様の鎧は、私の攻撃を容易く防ぐ。面白い。ならこれはどうだ!」そう言いながら彼は手から光の剣のようなものを作り出す。接近戦を仕掛けてくるつもりらしい。俺はシルヴィアに目配せする。シルヴィアは頷く。


「ウィズバン。やって。」


火の精霊が出現し、火炎攻撃の予備動作に入る。


「そんな遅い攻撃が当たるとでも?」ブラントは怪訝な顔をする。ナメられたものだといった顔だ。


「いや、当たるの。」


シルヴィアが呟く。ブラントは何かを察して下を見る。ダンジョンで蜘蛛を引き裂いていた光る腕が彼の脚を掴んでいた。


火焔が波止場に打ち付ける波のように噴き出される。脚を掴んだ手を斬って逃げたとしてもまともにくらったはずだ。


「やったか。」


シルヴィアが呟いたので嫌な予感がして彼女の前に立ち塞がった瞬間光の棘が俺の腹に当たった。黒煙の奥からブラントが出てくる。見事に無傷だ。


「魔物ごときがが私に触れることはできない。」


そう言いながら光の剣を顔の前で構える。次の瞬間、まるでワープでもしてきたかのようにブラントが俺の目の前に来る。咄嗟に籠手の部分で攻撃を受ける。

魔力の剣のようで上手く防ぐことができた。しかし、依然ピンチなのは変わらない。

だが、俺たちとて無策ではない。

いくら迷宮都市では帝国軍が活動できないとはいえ、軍も知恵を絞って俺たちを捕まえに来るだろう。それに対して勝てそうな相手であれば俺がヘイトを買いつつシルヴィアの召喚術で戦う。そして、どうしても勝てそうににない相手が来た場合。


「逃げて!」


俺がそう叫ぶとシルヴィアは煙幕を張って森の方に全力疾走する。相手が魔力を使って戦う場合、魔力に耐性のある鎧を着てる俺が攻撃を一手に引き受け彼女を逃す。

十分距離を稼いだら召喚術式で俺をそこまで転送して逃げる。相手が魔力を使ってくることと、俺が致命傷をさけつつ攻撃をいなし切れるかが鍵となる欠陥だらけの作戦だが、二人揃って全滅するよりはマシだ。

俺がシルヴィアのために命を張る義理はないといえばそうなのだが、彼女が死ねば俺は二度と帰ることの出来ない異世界で読み書きも出来ない、知識もないというほぼ0からのスタートを強いられる。軍から命を狙われているためマイナススタートだとも言える。だからこそなんとしても時間を稼いで二人とも生き残る必要がある。


ブラントからの猛攻をひたすら凌ぐ。プラスチックの部分で攻撃を受ければいいため、常に半身を意識して、相手に常に肩を向け続ければ鎧のおかげで攻撃をまともに喰らわずに済む。

さらに、鎧ではない布製の部分も化繊でできているので鎧部分ほどではないにしろ魔力の遮断効果が見込まれる。それに、ダンジョンで蜘蛛と戦ったからか、想像より上手く立ち回れている。もう10秒以上は時間を稼いだだろう。ブラントも俺の防御力を前に攻めあぐねているはず。

攻撃の手が止んだ。


「お前の鎧はどうあっても魔力を通さないようだな。あとで色々ききたいことがある。できればそこを動かないでほしい。」


ブラントはシルヴィアが逃げた方を見る。 しまった。と思った。俺たちは上手くこの男を足止めできていると思っていた。本当は違う。

足止めされていたのは俺の方だった。俺がいる以上シルヴィアに魔力の攻撃を当てるのは難しい。さっきまでずっと俺が壁になっていたからだ。全てを理解した。俺は彼女から引き離されていた。のろまな俺はもう彼女を守ることができない。

精神的な不可能ではない。物理的な不可能だ。ブラントはさっきのワープのような移動法で瞬きする間にシルヴィアの正面に立ち塞がる。


迂闊だった。ブラントにとって興味があるのは俺の鎧だ。横にいる邪魔な魔術師はどうでもいい邪魔な存在なのだ。

ブラントが剣を横に振りかぶる。一撃で首を落とすつもりだろう。

彼女はもう回避が間に合う状態ではない。

間に合わない。俺はただ叫ぶしかできなかった。

すんでのところでウィズバンのものだろう、火で出来た手が出現し剣を防ごうとするが、無力にも剣でかき消される。

横凪に振られた剣はそのままシルヴィアの首を両断した。

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