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61-1.脱獄


 目が醒めると見知らぬ天井があった。体を動かすが特に痛いということはない。俺はすんなり起き上がるとそこは牢屋のようだった。影にされるとこの世界に送り込まれるのか?などと考えていた。

迷宮都市1日目の安宿よりも居心地は悪い。試しに鉄格子を揺らしてみるがびくともしない。

もしかしたらウィズバンさんの熱で鉄格子を溶かして脱出できるかとも思ったが、確実に魔力源が足りないし、鉄が溶けるような高温を出すと俺も大火傷をしてしまう。

つまりどうしようもない。

ため息をついてベッド代わりの干し草に座り込む。南部らしいベッドだ。

ウィズバンをとりあえず出してみようとも思ったが持っていた魔力源の石がほとんどなくなっていた。これでは少し話をするくらいしかできない。もしもの時のためにそれは取っておくべきだ。

俺は再びため息をつく。どうすればいいのかわからなくなり途方に暮れる。

シルヴィアたちが助けに来るにしてもいつになるかもわからない。

ちょうど白骨化した頃に発見されるなんてこともありうる。

「帰りてえ〜。」俺は呟く。

そうだ。大声を出して誰かを呼べばいいのだ。牢番でも司祭でもいい。

白骨化するよりはマシだ。

「すいません!だれかいませんか?」俺は鉄格子をガシャガシャと揺らしながら大声を出す。

反応はない。牢屋の警備をしないのはいかがなものかと思ったがそんなこと考えている場合ではない。このまま誰にも気づかれず白骨化という未来が現実味を帯びてくる。

「誰か!誰か!」俺は大声をだす。

こうなったら俺がやるべきことは脱獄だ。

俺だって中学生の頃はスマホを脱獄させたものだ。どうしようもないクソガキだった中学時代の俺でもできたのだ。異世界に来て心身ともに成長し簡単な魔術も使えるようになった俺に脱獄ができないわけは

できなかった。知ってた。できなかった理由なんていちいち説明する必要もないだろう。鍵穴があったのは確認できたがピッキングなどできない。

しかし、これで万策尽きたわけではない。必ずしも俺がこの扉を開ける必要はないのだ。

そう。牢番がこの扉を開ければ良いのだ。

作戦はこうだ。もし牢屋に囚人がいなければ牢番は焦って扉を開ける。そこで俺は干し草の中に隠れる。焦って入ってきた牢番がよそ見をした瞬間に俺が干し草から飛び出してテイクダウン。無事脱出。完璧な作戦だ。

あとは誰かが入ってくるのを待つだけだ。


しばらく待っているとドアが空いたような気がした。俺は急いで干し草の中に隠れる。

男が目の前でキョロキョロしている。

「あれ?ここじゃなかったか。」そう言って牢番の男は向こうに行ってしまった。

ダメだ。あの牢番はここに俺がいることをそもそも認識していない。そうなれば俺がいようがいまいが驚かない。なにより、牢番は痩せているが身長が180後半くらいはある。テイクダウンなんてできない。

俺は大人しく干し草から出る。そこに牢番が戻ってくる。

「なんだ。寝てたのか。」牢番はそう言って俺の牢の前に飯を置く。

男はそのまま出て行ってしまった。

やはり即脱獄は厳しかったか。俺はパンを齧りながら考える。薄味のスープには鶏肉のかけらが浮かんでいる。

まずい。牢に入れられて腹ペコというどんなものでも美味しく感じる状況でもまずいので、まあ、なんと言うか萎える。

だが、俺は折れていない。次なる作戦のためパンをひとかけら千切って干し草の中に隠した。

次の一手を打とうじゃないか。


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