57-1.潜入
「俺がですか?」俺は顔を引き攣らせて尋ねる。
「そう。お前が。」マーカスは表情を変えずに言う。
「え、でもそれは。」俺は目をそらす。
「お前の鎧は魔力を通さない。なら、魔力による村人消失に巻き込まれても大丈夫。だろ?」マーカスは当然と言う顔で言う。
「だからって潜入捜査なんて。」俺は言う。
「まあ、恐ろしいとは思うが他に方法はない。俺たちが本格的に嗅ぎ回ればそいつは隠れるかもしれない。」
「でも一人で潜入っていうのは心細いですよ。」俺は言う。
「だが、他の人間を巻き込むのか?」
「まあ、そうですけど。でも、俺字とか読めないですし怪しまれますよ。」
「南部の農民は字が読めない。問題解決だな。」
「わかりましたよ。行けばいいんでしょ行けば!」俺はマーカスに論破される前に引き受けることにした。
俺自身この世界に来て何も大きなことを成し遂げていないことを気にしている。これで役に立てるならそれはそれで良いことなのだが、いかんせん事件の内容が内容なのでこわい。
「大丈夫なの?」シルヴィアが尋ねる。
「さあな。ただ、その鎧さえ着ていれば影にされることはないんじゃないか?」マーカスは言う。
「その根拠は?」シルヴィアが尋ねる。
「さあ、魔術で人が消えてるんだろ?なら大丈夫だ。」マーカスが謎理論をゴリ押してくる。
「どうやって村に潜り込むんだ?」チャックが尋ねる。
「俺たち反乱軍の駐在として送り込む。そうすれば鎧をつけていても怪しまれない。」
「どこの村にだ?」
「ああ、今回ヒデオ君に行ってもらうのは、例の村に近くて尚且つ教会があるエント村だ。」マーカスは地図を見せる。
「確かに遠くはないね。」シルヴィアが言う。
「マーカス。あなたは今回の失踪事件には教会が関係していると?」ロスが尋ねる。
「ああ。実際教会の外にいた少女だけは助かった。教会に関係があると言えるんじゃないか?」マーカスは答える。
「だが、それだとサンプルが少なすぎる。」シルヴィアが反論する。
「じゃあ、また別の村が消えるまで待つのか?」マーカスが目を細める。
「それは…」シルヴィアが言い淀む。
「決まりだな。」マーカスは愉快そうに言う。




