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55-4.影

 「黒ずくめで人間を影に変える奴を知ってるかって?」マーカスは眉をひそめる。

「何か知ってる?」ロスは尋ねる。

「知らん。」マーカスは言い張る。

「はぁ…」シルヴィアがため息をつく。

「すまんな。それは聞いたことがないな。他に何かないのか?」マーカスは俺たちを見渡す。

「略奪の形跡などはなかった。ただ単に村人が消えただけ。」ロスが説明する。

「略奪じゃないなら反乱軍じゃないな。」マーカスは笑う。

「ということは帝国軍か?」マーカスの部下が身を乗り出す。

「でも理由がない。」シルヴィアが反論する。

「確かにな。軍もよく略奪をする。最近はずいぶん品行方正になったが手癖の悪さは治ってねえ。」

「確かに、食料とかもそのままでしたし、無理やり徴税されたわけでもなさそうでしたね。」俺も頷く。

「略奪が目的ではない?第三勢力か?」ロスが尋ねる。

「さあな、あの女の子が見た黒ずくめの男ってのがだれなのかがわからんと何とも言えんな。」

マーカスはそう言いながら後ろで仔豚と遊んでいる少女を見る。

「あの子は落ち着くまで時間が必要。もうちょっと待ってあげたい。」シルヴィアが言う。

「ああ、俺も鬼じゃない。無理やり言わせはしないが、原因がわからん以上この村が次の惨劇の場になるかもしれん。原因究明は早めにするべきだ。」マーカスは言う。それはそうだ。

魔獣による被害から解放されようやく平穏を取り戻したこの村が次に来たとき全員が影になっていたら。考えたくもない話だ。

「とにかく、警備を厳重にしつつ、人々が一箇所に集まることを当面控えるようにするしかありませんね。」シルヴィアが言う。

「そうだな、例の教会で大勢が集まっていたことと消失に関係があるのかはわからないが、教会に集まらなかったあの子だけが消失を免れたというなら、一箇所に集まらないようにするのは効果があるかもしれんな。」マーカスが言う。

「村の警備をお願いできますか?」シルヴィアが尋ねる。

「ああ、それは俺たちがどうにかする。穏健派に協力している村にも伝令を飛ばしておく。」マーカスが頷く。

「あと…」シルヴィアが村長を見る。

「わかっています。あの少女の面倒は我々が責任を持ってみますよ。」村長が優しい顔で頷く。

シルヴィアは安心したような顔をした。


「ひとまずあの子は保護できたな。」チャックが言う。

昨日は震えていてほとんど喋ってくれなかった少女もだんだん笑顔を取り戻している。

あれがアニマルセラピーの力なのかとロスと少女に撫で回されている仔豚を眺める。

ひとまず俺たちがすべきことは村人消失事件の原因究明とこれ以上被害が増えないようにすることだ。

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