55-1.影
俺たちはしばらく首都で休んだ後魔獣の村に戻った。反乱軍穏健派の勢力圏となった村には活気があった。その村でしばらく休んだ後俺たちはさらに南に向かう。
村が見えてきた。木造の大きな教会のような建物が見える。
俺たちは村の入る。まずはフレンドリーに接する。そこからなんとなく問題を聞き出し鮮やかに解決する。
俺たちは馬車を降りて人を探す。
だが、この村には何も問題はなかった。人間とは生きている限り問題を抱え続ける生き物である。大勢集まったところで問題が増えるだけだ。だが、本当にこの村に問題などなかった。
いや、問題がなかったというと語弊がある。厳密に言うと誰もいなかったのだ。
誰もいないなんてそんなはずはない。ロスもウィズバンも何も発見できなかった。
そして俺たちは妙なものを見てしまった。
この世界の宗教に無頓着な俺は特に何も考えず教会のような建物の戸を開け、そして絶句した。
建物の床には大量の人の影が残っていたのだ。
人がいるところが突然高温に晒されると、人間が影になりそれ以外の部分が高熱に晒され変色する。その結果人がいた部分だけが影のように残る。昔そういう展示物を見たことがある。だが、木造の教会でそんな高温が発生したとは思えない。村ごと吹き飛ぶだろう。それに、昔見た展示物よりも影はくっきりと残っている。いや、どちらかと言うと孤独死現場の布団の方が近いかもしれない。
「何?これ?」ロスはそう言って影を木の枝で触る。
「ロスさん。あまり触らない方がいいかも。」シルヴィアが止める。
「ここで何があったんだ?」チャックが周囲を見渡す。
「かすかに魔力の痕跡がある。調べてみる。」そう言ってシルヴィアはポーチから薬品などを取り出してナイフで影の部分を削り始めた。
「触って大丈夫なんですか?」俺は恐る恐る尋ねる。
「それは触ってみないとわからないね。」シルヴィアは削り取った影の部分を試験官に入れると薬品と混ぜてウィズバンに加熱させる。
「うーん。これは。」シルヴィアが眉間に皺を寄せる。
「なにかわかったか?」チャックが食い気味に尋ねる。
「しばらく時間が経たないとわからないね。」原因の究明は先送りになった。
「あれ?仔豚ちゃんは?」ロスが俺に尋ねる。クールなロスがちゃん付けしているのが少し面白い。そんなことは良いとして、言われてみればさっきまで俺の足元にいた仔豚がいない。
「いないですね。探さないと!」俺が言うとロスは頷く。
「チャック。私たちは仔豚ちゃんを探してくるからここは頼んだよ!」ロスはチャックの背中を叩くと教会から駆け出していった。俺も急いで着いていく。
しばらく村の中を探し回っているとロスが発見した。仔豚は器用に扉を開けて民家の中に入っていくところだった。
「追いましょう!」俺が言うとロスも頷く。
ドアのそばに俺たちは張り付く。ロスが俺の肩を叩く。振り向くとナイフを渡してきた。
俺はナイフを受け取ると、家の土台に立てかけてあった古い車輪を盾がわりに持つとそっと扉を開けて家に入る。
家に入ると仔豚は樽の前に立って尻尾を振っていた。しきりに樽を鼻でつついている。
「この中に何か?」俺はロスに尋ねる。
ロスは首を傾げる。
「開けます?」
「開けたら?」
「俺が開けるんですか?」
「いざとなったら援護するから。」ロスは絶対開けるつもりはないようだ。
俺は観念して、ナイフを取り出しやすいところに入れると車輪を盾にしつつ樽の蓋をそっと開ける。




