53-2.討伐
目が覚めると宴会は終わっていた。あたりを見回すと大人たちは魔獣の恐怖がなくなったからか皆その場でグーグーと眠っていた。俺にはいつの間にか毛布がかけられていた。シルヴィアはいなかったが多分彼女がかけてくれたのだろう。隣を見るとロスさんが仔豚を抱いて寝ていた。
なんか可愛いな。と少しクスッと笑った。
シルヴィアは外にいた。声をかけると振り向いて俺が座る場所を開けてくれた。
「こんなところで何してるんですか?」
「暑苦しかったから外で涼んでた。」
「南部の夜はちょうどいい気温ですよね。」
「そうね。王都の夜は寒いからね。」シルヴィアは懐かしそうに言う。
「でも、これで南部の任務は一歩前進ですね!」
「ここまでして一歩か…先は長いね。」シルヴィアは笑う。
「俺は家に戻りますけど、シルヴィアさんどうします?」
「私も戻ろうかな。」
俺たちは談笑しながら家に戻った。
祭りのあとの静かな夜は日の出と共に終わった。
村人たちは早朝からまた酒を飲んで騒いでいた。気持ちはわかる。
ロスの周りには村の子供達が集まっていた。
「弓ってどうやったら上手くなる?」
「どうやって当ててるの?」と子供達から質問攻めに合っている。
確かに、彼女の矢は百発百中だった。俺は弓を使ったことはないがすごいのはよくわかる。
魔獣に矢を命中させ続ける姿が少年たちの心に刺さったのだろう。
「どうやって?普通に。」ロスが困ったように答える。
「普通ってどういうこと?」
「だから、狙って射つ。そしたら当たる。」ロスはぎこちなく説明する。
「え〜」と子供達は首を傾げる。
これはあれだ、すごい人は次元が違いすぎて一般人への説明が苦手というあれだ。すごい野球選手が監督になってもチームを勝利に導けるとは限らないというあれだ。
そんな中マーカスたちが30人と物資を持って帰ってきた。
「あれ?」マーカスは不思議そうな顔をする。気持ちはわかる。
「もう終わったの?」マーカスは驚く。
「なんとかな。」チャックが大変だったという顔をする。
「特に犠牲者が出なかったなら上出来だ。」マーカスは頷く。
「マーカス。勢力拡大のための交渉はあなたたちがやってね。」ロスはマーカスを見て言う。
「わかったよ。それくらいはやっておく。」マーカスは面倒くさそうにそ言うと村人たちの方に歩いて行った。
「じゃあ、私たちはここで帰りますね。」シルヴィアは村長に言う。
「この度は本当にありがとうございました。」村長はそう言って頭を下げる。
「じゃあ、この仔豚ちゃんはいただいても?」ロスが仔豚を抱える。
「ええ。どうぞどうぞ。お礼がそれで済むのでしたら。」と村長はヘコヘコしながら言う。
「では、私たちはこれで。」俺たちは馬車に乗って帰路に着く。
子供達が手を振ってくれた。
「またいらしてください。次こそは歓迎しますので!」村長が大きな声で呼びかけてきたので手を振った。
来た時と違い村人たちが農作業をしていた。村人たちは俺たちを見つけると遠くから手を振ってお礼してくれた。
仔豚はロスの膝の上で耳をピコピコと動かしていた。
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「帰ってきた!」シルヴィアが叫ぶ。仔豚がびっくりする。
やはりシルヴィアにとっては首都の方が居心地がいいのだろう。
「じゃあ、私は総督に報告してくる。」ロスはそう言って出て行った。
俺たちは部屋に戻った。次の任務のため英気を養わなければならない。できれば今度はあんな危険なことはしたくないものだ。




