53-1.討伐
俺たちは魔獣の遺体に防腐魔術をかけると、一連の事件の犠牲者を丁重に弔ったあと、長期の立てこもりのため用意していた食料全てを使って宴会を開いた。
チャックは村の英雄として村人たちに祭り上げられていた。
「いやあ、ほんとよかったですね。」俺はシルヴィアに言う。
「ヒデオ。」シルヴィアが俺を睨む。
「なんですか?」
「なんですかじゃない。あんなこと二度とやらないでね。」
「すいません。必死だったんで。」俺は謝る。
「まあ、無事だったからよかったけど。」シルヴィアはため息をつく。
「心配してくれてありがとうございます。」
「異世界からの召喚に成功した証拠なんだから簡単に死なないでよ。」シルヴィアは干し肉を齧りながら言う。
「はい。気をつけます。」俺はうつむく。
「別に怒ったわけじゃないけど。」シルヴィアは少し焦ったような顔をする。
「それより。」ロスがいきなり後ろから話しかけてくる。
「この仔豚、どうする?」ロスが仔豚を抱き上げる。
「うーん。」俺は考え込んだ。
仔豚は巨大化して魔獣を押し返すという働きを見せた。戦いが終わるとまた仔豚のサイズに戻ってしまったのだ。
「うーん。でも、この子魔獣だよね。」シルヴィアは仔豚の鼻をつつく。
「魔獣なんですか?」「魔獣なの?」」俺とロスは声を揃えて驚く。
「うん。まあ、二人とも気に入ってたから変なこと言っちゃ悪いかなと思って。それに、全ての魔獣が人間と敵対していて恐ろしいわけじゃない。人語を理解して精霊みたいに人間と契約を結ぶ魔獣だっている。だからあえて水を差さなくていいかなと思ってたんだけど。」
「魔獣だったの?」ロスが仔豚に尋ねる。仔豚は不思議そうにロスを見つめる。
「この子は豚なんですか?魔獣なんですか?」俺は質問する。
「この子は豚であり魔獣なの。私が人間であり魔術師であるのと同じ。」
「なるほど。魔術師豚ってことなんですね。」
「まあ、そんなかんじね。いろいろな魔術を意識的に使う私たちとの大きな違いは、背伸びするとか息を止めるとかみたいに無意識に持って生まれた魔術を身体機能の延長として使うってところ。今回の場合、大好きなロスさんが危なかったから、それを守るため力一杯叩いてやった。みたいなかんじだったんだと思う。」シルヴィアが説明する。
「仔豚のくせにかっこいいな。」ロスは仔豚を撫で回す。
とりあえず手元にあった干し肉を食べさせた。




