52-3.夜襲
俺の日本から一緒に来たプラスチックの鎧は魔力を完全に遮断する。これは周知の通りだ。
魔力だけでなく、魔力から生み出されたものも遮断することができる。例えば。魔力でできた炎があるとしたら、当然それを防ぐことができる。それに伴った熱も魔力性のものであり防ぐことができる。
それに、魔力で起こした爆発もそれに伴う爆炎も防ぐことはできる。だが、それに伴って発生する音や衝撃波は自然現象であり防ぐことができない。
ロスの炸裂矢の衝撃波が俺の胸を揺らすのがその証拠だ。
爆発は巨大になるほど巨大な衝撃波が発生する。大きな爆発であれば、その衝撃波だけで内臓が破壊され、一見外傷がないのに亡くなってしまうということがあるらしい。
だが、今回は好条件が揃っている。まず、魔獣の能力で空気の振動が無効になっている。つまり、衝撃波も鼓膜を破壊する爆音も発生しない。
そして、俺にはあらかじめ集めた電池用の魔力を込めた石、シルヴィアに譲渡された魔力、ウィズバンの魔力を習った通り術式で直列に接続する。
「ウィズバンさん!爆発!」俺は心の中で呟く。
以心伝心だ。
そのまま俺を要として扇状の爆発が起こる。
渾身の自爆技だ。魔獣は爆炎をゼロ距離からまともに喰らった。
俺は地面に着地するとそのまま情けない悲鳴をあげながら走って逃げた。頑張ったんだからかっこ悪くてもいいだろう。
俺は建物の影に隠れシルヴィアと合流する。
「やるじゃん!」シルヴィアはニコッと笑う。
「あれ?音が?」俺はハッとする。
「本当だ!」シルヴィアも驚く。
もしかしてさっきの情けない悲鳴が聞かれていたかと思い耳が熱くなった。
だが。
再び魔獣の鳴き声が聞こえる。
「まだ生きてるのか!」シルヴィアは呆れる。
煙の中から出てきた魔獣は、頭部の一部が吹き飛んで皮下組織が露出しているが、まだ生きている。
そのまま魔獣はロスのいる櫓の方へ走り出した。
まずい。ロスの櫓は魔獣の体当たりで一瞬で破壊されてしまうだろう。しかも、魔獣は足が早く誰も追いつくことができない。クロスボウも装填していない。村人たちの防衛線もかなり後退しており援護は間に合わない。チャックもまだ来ていない。要するに、ロスの生命力次第だが、少なくとも後10秒もせずロスは死ぬ。
ロスは露出した皮下組織に強化された炸裂矢を射ち込むが、足を止めるには至らなかった。




