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48-4.オペレーション・ジェヴォーダン

 「ロスさん?」

「何?」

「魔獣と獣の違いってなんですか?」

「獣は獣。魔獣は突然変異とかの影響で魔力を持った獣とかその子孫のこと。」

「魔獣はやっぱり強いんですか?」

「まあ、人間と一緒。魔力を持って生まれた人間もピンキリでしょ?魔獣も一緒。普通の獣と同じくらいのもいるし、魔力による身体強化で厄介なのもいる。魔術を使えるやつもいる。」

「魔獣も魔術使うんですか?!」俺は驚く。仔豚がぴくりとする。

「別に、獣だからって私たちより劣っている道理はないからね。」ロスは平然と言う。

急に怖くなってきた。

プギイィィィィ!!!といきなり仔豚が騒ぎ出す。バタバタと腕の中で暴れ逃げ出そうとする。

俺とロスさんはハッとする。この仔豚は普段おとなしい。そもそも豚自体が比較的温厚な生物だ。それがいきなり今までにないような騒ぎ方をする。

そういえば、この仔豚は例の魔獣と実際に遭遇している。そして匂いも覚えているはずだ。恐怖の匂いとして。

ブタは犬に匹敵する嗅覚があるようだ。つまり…


ロスさんはすぐに森の方を凝視する。俺はシルヴィアに眩い光を放つ目眩し魔術を使ってシルヴィアに合図を送る。バリケードの奥からも反応があった。

俺は仔豚を背負ってロスのいる屋根に登りウィズバンを出す、マーカスたちが持ち込んだ望遠鏡で周囲を見回す。仔豚はバタバタと暴れる。

「私の魔術を使う!」ロスはそう言って目を瞑る。ロスを中心に風が吹いたような気がした。

ロスはしばらく沈黙する。

「十時の方向!」そう言ってロスは長弓形態で上空に赤い煙を出す矢を射ちあげる。現代でいうフレアのようなものだろう。

「距離教えて!」ロスが叫ぶ。

俺は望遠鏡で言われた方向を覗き込む。いた。奴で間違いないだろう。

予め打っておいた杭を元に距離を測る。

「300メートル、来ます!」

ピュウッっという風切り音がする。

本来300メートルは長弓の最大射程である。風の影響もあり簡単に命中させられるものではない。だが、当然それは考えてある。

矢は命中こそしなかったものの、魔獣の真横で大きな音を立てて破裂した。




 「反乱軍からの救援物資だ。受け取れ。」マーカスはロスに矢筒を渡す。

途端にロスの表情が曇る。

「おい、マーカス。これを私に使えと言うのか?」ロスは静かに怒っている。

「そうだ。使えるだろ?」マーカスは何を言っているんだという顔をする。

「だから、これは炸裂矢だろ!これを使わないと私が仕留められないと言いたいのか?」ロスはマーカスを睨む。

「それは被害妄想ってやつだ。あるに越したことはない。」

「でも、こんなの下手くそ用の矢だし、重いから射程も短くなるし精度も下がる…」ロスは矢を眺めながらぶつくさと呟く。

「だがこいつは強力だ。だろ?」マーカスはロスの顔を覗き込んだ。

ロスは頷くと渋々矢筒を受け取った。



魔獣はいきなりの炸裂に面食らったのか動きが止まる。

続けざまにロスが2本目を発射する。これも当たらず目の前で破裂し魔獣は狼狽える。

「あっ、外れた。」俺は悲痛に呟く。

「外してるのよ。」ロスは失礼なという顔をする。

「なんでですか?」

「この程度なら命中しても傷つけられない。恐るるに足らないと思われたら終わり。音で怯えさせる。」

三本目の矢が発射され魔獣は少し後ろに退がる。

その間にシルヴィアが召喚獣の配置を完了させたという合図が来た。

森からは討伐部隊が急いで引き返しているという合図が来た。彼らが戻るまでここで足止めできれば勝ちだ。

「できた!炸裂を強化した。こいつをぶち込んでやれ!」ウィズバンが細工した炸裂矢をロスに渡す。

「本当?」ロスは疑いの目を向ける。

「本当だ!」ウィズバンが叫ぶ。

四射目が放たれる。今度こそ魔獣に直撃した矢はウィズバンの言う通り先ほどとは比較にならないほどの大爆発を起こす。

これには流石の魔獣も悲鳴をあげる。仔豚も目を丸くして固まっていた。

「いいね、効いてる。精霊、もう一本。」ロスが言う。

「そんなにホイホイ作れるわけないだろ!」ウィズバンが暴れる。

「なら早くして!」ロスはウィズバンを睨む。

「こいつ怖い!」そう言いながらウィズバンは次弾の準備に取り掛かる。

ダメ押しでもう一発が魔獣の目の前で炸裂する。とうとう魔獣はたまらず逃げ出した。


魔獣が森に逃げ込んだのを見るとロスは予測進路に青い発煙矢を放つ。青い煙を吐きながら矢は森の中に消えていく。

この合図で包囲部隊全員が固まって魔獣を撃破する。勝利は間近かに思えた。


しかし、期待とは裏腹に森からは不思議そうな顔をした包囲部隊たちが出て来た。

「何もいなかった。」マーカスは大声で報告する。

「そんなはずは…」ロスは動揺する。

「あんな巨体が走って来たら音でわかるはずだろ?何もなかったよ。」チャックもそう言う。

他の包囲部隊の男たちも首を傾げた。


逃げられた。皆がそう感じ落胆した。魔獣に傷を負わせたため追うかどうかの議論もあったが、日が暮れそうな中魔獣のホームグラウンドに入るのは自殺行為ということで作戦は終了した。


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