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48-3.オペレーション・ジェヴォーダン


 「では行ってくる。」そういってマーカスやチャックたちは森へ向かった。

西からはチャックの班。東からマーカスの班が森を進む。これで終わってくれればいいのだが。


「ロスさーん!」俺の担当はロスの足元の警戒なので暇つぶしのために上にいるロスさんに話しかける。

「何?」

「マーカスさんって強いんですか?」

「まあ、帝国軍の勢力圏内の村に手勢だけで居座る胆力はあるから強いんじゃない?詳しくはわからない。」

「一緒に戦ったこととかないんですか?」

「私はいつもこういう役回りだから。」

「なるほど。」そんな話をしていたら、村人と共に籠城していたはずの仔豚がてちてちと走って来た。

「どこから抜け出した?」ロスが首を傾げる。

ブッブッと仔豚が足元にすりついてくる。

俺は仔豚を抱き上げて撫でる。ロスは避難区域を観察する。シルヴィアと目が合ったのか手を振っていた。

「何かあったかと思ってたけど大丈夫だった。」

「本当いたずら仔豚ですね。」俺はそう言って仔豚の鼻をつっつく。仔豚はつぶらな瞳をくりくりさせていた。



 二人は森を歩いていた。片方はベテラン反乱軍兵士。もう一人は村人だ。村人は反乱軍兵士とペアを組んで行動していた。全員がお互いの声が届く範囲にいる。また、包囲チームは、片方が襲われた時はペアを見捨てて逃げいち早く情報を伝達する。だからこそお互いに思い入れのない反乱軍と村人がペアになるのだ。

「もし襲われたら勝てますかね。」村人は不安そうに言う。

「勝たなくていいんだ。俺らは報告だけすればいい。」ベテランの反乱軍兵士は冷静に言う。

「でも逃げ切れるかどうか…」村人は言う。

「先に襲われた方が囮になるんだ。どっちかが襲われてる間に報告に行くんだよ…ん?今何か!」反乱軍兵士は武器を構える。

兵士は何やら喚き散らし俺を指さして何か言っているように見える。聞こえない。

「聞こえない!」叫ぶ。聞こえないというジェスチャーをする。

反乱軍兵士はそれを見てまた何やら口を大きく動かす。全く音が聞こえない。兵士は何やら武器をしきりに指差すので俺も察して武器を鞘から出して構える。おかしい。全く音がしない。金属音も刃ががたつく音も。病気でいきなり耳を聾したか。

「聞こえない!何も聞こえない!」と叫ぶ。

兵士も聞こえないというジェスチャーをしながらあっちこっちを指さしている。

もしかして彼も聞こえないのか?そう思って彼に近づこうとした瞬間、木々の隙間から巨大な黒い塊が飛び出して来た。奴だ。紛れもなく奴だ。黒い毛皮にクマとオオカミを足して二で割ったような外見。三メートル近い巨体。

俺は彼に後ろにいると指を指しながら仕切りに叫ぶ。

こんな時に限ってボディーランゲージは上手く通じない。兵士は自分を不思議そうに指差す。

違う違うとジェスチャーを送る。後ろを向けと自分の後ろを必死で指差す。

ようやく察した兵士が後ろを振り向きかけた時、さっきまで頼もしかったベテラン兵士は物言わぬ肉片に変えられてしまった。

状況からして音が聞こえなくなったのも奴の仕業で間違いないだろう。見張りや妻、豚が襲われたときは全く音がしなかった。いまのを見て理解した。奴は何らかの方法で音を外部に漏らさない結界を作っている。早く逃げて味方に伝えなくては。男は一目散に味方がいる方へ走る。ちょうどこっちの方向にはハンマーの男がいるはずだ。魔獣が追って来ているかは足音も聞こえないし振り向く余裕もない。武器も鞘も投げ捨て少しでも身軽になって走った。早くこの情報を伝えなければという一心で。

結果から言うと彼は何も伝えることができなかった。

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