47-4.獣
「って言っちゃったんですけどどうしまよう!」俺は後悔のあまりシルヴィアに勢いで抱きつきそうになったがなんとか堪えて仔豚に抱きつく。
「まあ、そう言っちゃったからには一人で頑張るんだな。」シルヴィア冷たい。
「現場の意見を聞かずに仕事とってくる営業みたいなことしてすいません!」俺は仔豚に顔をうずめる。 仔豚はブッと鳴いた。
「だが、ここで恩を売っておくのは俺たちの目標達成に必要だろ?」チャックがシルヴィアに言う。
「わかってる。この事件を解決できれば穏健派の支持も広がる。でもさ。怖いよね!」シルヴィアの顔が青くなる。
「怖いですよね!」仲間を見つけた俺は仔豚を抱えたままシルヴィアに擦り寄る。
「うんうん!怖い!」シルヴィアは俺に同意する。そう言いながら二人で仔豚のお腹をタプタプと揺すった。
「でも、三メートルの魔獣って言うほど怖いか?」チャックが不思議そうに言う。
「あなたにはわからんでしょうね!」俺はどこかで聞いたことのあるセリフを使う。
仔豚がそれに合わせるようにプギイ!と鳴いた。
「確かに、魔獣討伐は確実に私たちの名声を高めることができる。ただ、ここは帝国の勢力圏側だから期待した効果は得られないかも。」ロスが言う。
「でも、やるって言っちゃったんで。」俺は俯く。仔豚はシルヴィアに取られてしまったもで心細い。
「ならやろう。それくらい俺一人でどうにかできる。」チャックが自信満々に言い張る。
「そうかもしれないけど、念には念を入れないと。マーカスたちも呼んで万全の体制を整えよう。…整うまでにそいつが来たらその時はチャックが頑張るという形で。」シルヴィアが歯切れ悪く計画を話す。
「おう!任せとけ!」チャックは自信満々だ。
俺たちはそのまま計画を村人たちに話した。村人は喜んでくれたが、途端に皆くらい顔をする。どうしたのか尋ねると、魔獣を討伐してもらったところで対価を払うことができないということだった。南部の村は貧しいそれ故に報酬を払うことができないのだ。
俺たちは悩んだ。シルヴィアたちもボランティアでそういうことをするのは結果的に良くないことが起こると言う。どうやらこの世界にはそういう故事があるようなのだ。
俺たちが悩んでいるとロスが仔豚を抱え上げた。
「この、この仔豚をいただけるならそれを報酬としましょう!」
無事取引は成立した。
「お前ら仔豚気に入りすぎだろ。」チャックは呆れていた。
早速村人数人がマーカスたちを呼びにいった。ロスさんは村で一番高い木に登って周囲を警戒した。チャックは男たちが最低限戦えるように訓練し、シルヴィアも村の女子供に目眩しや煙幕の魔術をレクチャーしていた。ちなみに俺はすでに目眩し魔術を使えるようになっている。
そして俺の役割は、仔豚ちゃんの世話である。
大事な役職だ。この仔豚ちゃんに何かあればロスさんが戦意を失ってしまう。シルヴィアもそこそこ悲しむだろうし、俺も悲しい。それに俺が失業する。
それから二日後、マーカスと部下計20人が物資と一緒に村に来た。これをもってアルゴン村における魔獣討伐作戦。”オペレーション・ジェヴォーダン”が始動した。




